もし過去か未来に行けるなら、私は迷わず過去を選ぶ。
4年前に戻って、まだ小学生の自分に言ってやるんだ。
こんなに楽しい時はもうやって来ないから、今を精一杯楽しむんだよって、ちゃんと目を見据えて。
未来を生きた私にはそれが分かるから。
天国からの泣き声
地国からの笑い声
幸せなのはどっちだろう
見え見えの優しさ
隠す優しさ
優しいのはどっちだろう
心からの優しさ
自分を犠牲にする優しさ
優しいのはどっちだろう
平凡で暇な毎日
やりたいことで忙しい毎日
幸せなのはどっちだろう
やまいだれで雨宿り
作った笑顔の副作用
背中がかゆくて目眩がする
瓶詰めのピクルスと一緒に
後悔のバンズに挟まれたい
空は見たことのない青あざ色
やがて雨はやみ仄かに香る瓜の花
13th.詩集
『現像を忘れたネガ』
1. 坂の街の教会
ーOde of Nagasaki
2. 2人の扉
ーOpen Your Door
3. 深夜急行
ーMidnight Exp.
4. スノウ・ドーム
ーPresent for You
5. CHRISTMAS CARD
6. タイフーン
ーTyphoon in My Heart
7. 現像を忘れたネガ
ーFlash Back Memories
8. NAVIGATION
9. 湖畔のヴィラ
ーLove ls Like the Wind
10. 9月の花火
ーEmbers of Summer Flying
「今、3時過ぎ。夜明けまであと……3時間半ってところか。マズいな………」
「ええ……?あれ、追い付かれたらどうなるんでしょう」
「さあ?けど、『んー、んー』って声が聞こえてきたら、それが奴だ」
聞こえたら手遅れなやつでは?
「今の奴の状況は!」
蓮華戸さん(仮)が、さっき奪った双眼鏡を私に返して後ろを指差す。それを取って、これまでに辿ってきた道を探す。
居た。これまでよりもかなり距離が縮まっている。どうやら私達の通った道をそのまま辿っているようだ。
『奴』と目が合う。これまではニタッと笑っていたのが、口を一文字に結んで、目だけギョロッと開いてこちらを睨んでいる。
「こ、こっちを睨んでますけど!」
「そうか、困ったな……。『奴』が変質した。捕まったら何されるかは分からないけど、十中八九逃げ切らなきゃ詰みだよ」
ええ……。とはいえ、なってしまったものはもうどうしようも無いので、ひたすら走る。
「どこか、良い場所あったりしません?」
「良い場所?隠れるのに?逃げるのに?」
「どっちでも!」
蓮華戸さん(仮)は少し考え込んで、何かを思い付いたように手を打った。
「………これから3時間、休まずに走り続ける元気、あるかい?」
「やるだけはやってみます」
少し話は変わるがそれとは反対に自分と全く同じ人間が存在すると考えよう。姿、細胞、思考、記憶、分子レベルまで同じの人間。少しの違いはあろうとも人間は瞬間ごとに細胞が変わるのだから1時間後の自分よりかは確実に近い自分がもう一人存在するとしよう。だがこの世に同じ人間が二人いることになるからキミ、つまりオリジナルは殺されるとする。だが、キミ(オリジナル)が死んでもキミ(コピー)は生きてる。つまり客観的に見たらキミは生きているということになる。じゃあそのキミは“同じ人”なのだろうか?姿カタチはもちろん、細胞、思考、記憶、性格まで全て同じだ。周りからは確実に“同じ人”としか見ないし、見えないだろう。だが“キミ”からしたらそれは全くの別人で“キミ”は“キミ”しかいないと思うだろう。だが人は6年で全ての細胞が変わり、人は6年で別人となるという話を聞いたことがある。6年経たなくたって細胞は変わるがもし、キミ(オリジナル)がキミ(コピー)を「それはボクではない!」というならその次の瞬間もキミはキミじゃないということになる。つまり人の唯一性なんかあてにならないということだ。だが人は唯一性がなければその人ではないのか?確かなものがなければその人ではないのか?「自分は自分しかいない」ということはないとは思う。だがそれが「代わりはいくらでもいるんだからいなくてもいい」ということにはならないとボクは思う。人は唯一性に惑わされるべきではないとわたしは信じて生きたいです。
きっと誰もが一度は考えたことがあるのではないだろうか?「自分が本当に自分ではなくてはいけないのか」と。よく恋愛ドラマとかで「どんなあなたでも愛してる」と聞くがそれはどこまでの“ボク”のことを指すのだろうか。姿カタチが変わっても愛してるのだろうか?記憶を無くしても愛してるのだろうか?性格が変わっても愛してるのだろうか?そこでふと気づく。それのどこに“ボク”という証拠があるだろう。それはもう“ボク”ではないのではないだろうか。だったらその“愛してる”はボクじゃなくても良くな
って来ないか?
「お~い、何勝手に…。はぁ。…まぁいっか」
「えっ。えっっ!いいの⁉やったあ!!」
う~ん。そういう意味じゃなかったんだけどな~。
私はもう8割諦めている。どうしよ。
でも、私はふと思った。なんでここまで彼女は東京へ行くのか。ここまで喜ぶのか。嫌気が差した。
「ねぇ。なんでそんなに行きたいの?何かあった?」
「え?だからただ学校が面倒くさいだけだよ~」
「そっか」
「それより早く行かない⁉色々大変そうだから早く行っちゃえばこっちの勝ちだ!」
突然襲ってきた不安はどこかへ逃げていった。
「分かった。行こう!」
「うん!フフッ。嬉しいな」
こうやって私たちは歩き始めた。と、さっきとは違う不安が襲ってきた。お金とか、私たちだけで大丈夫なのか…。お金は持ってきたって言ってたけど。まぁその時はその時か。
私たちはスマホと修学旅行の記憶を頼りに駅に着いた。人が多くいる中、完全に浮いている。スマホで色々調べた通りに進んでいき、ついにホームまで来た。はぐれないように。はぐれないように。
途中大人に声をかけられたらどうしようかと思ったが大丈夫だった。
何分か待って、やっと新幹線が来た。この何分かは今まで以上に長く感じた。
大勢の大人に紛れて乗り込む時、遥がぼそりと呟いた。
「さよなら、大阪」
いや、今日帰ってくるんだけどね。心の中でツッコミ、心の中でクスリと笑った。