雨は、しとしとと。
桜は、終わりを迎えようと。
その足元で、枝だけの低木は、輝きを増していた。
なぜならば、桜が光を、みんなに分けたから。
花びらという光を枝につけて、低木は、
しゃんでりあになれた。
「え、えーと、稲荷さん?」
わたしはビックリし過ぎてそれ位しか言えなかった。
「まぁ稲荷 鏡子だけど…今のわたしは”ヨウコ”」
面倒臭いだろうけどその辺よろしく、とマゼンタ色の目の稲荷さんことヨウコは笑った。
「それはそうとして」
そう言ってヨウコは目を光らせるのをやめた。
「常人だから大丈夫だと思ってたけど…全然だったわね」
正直見くびってた、と稲荷さんは呟く。
「えーと、これはどういう…」
わたしはどういう事なのか聞こうとしたが、すぐに背後に気配を感じて振り向いた。
「!」
真後ろにいる誰かに肘が当たった。
するとその誰かはおっと、と後ろに下がった。
そしてその姿はすぐに見覚えのあるものに変わった。
「え、師郎⁈」
わたしは思わず声を上げた。
いないはずの廊下、廊下、廊下
あなたを探してしまうよ
こんなに探してるんだから
そろそろ出てきてよ
まだ新品の匂いがする制服。
新しく買った肩掛けカバン。
靴ヒモが結ばされていない内ズック。
いっぱいの教科書。
ふわふわするココロ。
明日から私は高校生。
澄まして歩いてみたって
腕を広げたとびらが
みえるから
蜃気楼だなんて言わせないよ
「愛はとびらを開ける。」
全ベットして陽canに踊り明かして
蜃気楼靄ごと捕まえて
さああなたは私
だからおっけー
「愛してる=信じてる。」
人生のどん底なんて
まるでロマンスじゃない?
さあ熟れた果実をあてがって
最期は羨むハッピーエンディング
「僕のハッピーエンドは君の幸せじゃない」
ついに裏返る過去と愛情
なんてどんでん返しのストーリー?
わかったならもう遅い
せめて護りたい愛があった
「あたし間違ってた、」
思考が止まるまでに気づけて良かった
夢も希望も未来もない君に
紙とペンをやるから
思った通りに書き乱せよ
制限時間は一世紀
コンクリートの地面にダイブする
愛されてるのか試したんだ
回答は○でも×でもなく△になりました
あー今日がまた死んだみたいだ
350mlの幸せよりも
500mlの惨めさを選んだの
苦いほうが実は甘いって気付いたの
Dive? Dive? Dive?
愛も野望も奇跡もない君に
神とハサミをやるから
思った通りに掻き乱せよ
制限時間は一世紀
アスファルトの地面にダイブする
本当の事を知りたかったんだ
けど少し哀しくなっただけでした
あー君も世界を信じるの?
36.4℃の永遠よりも
35.8℃の一瞬に賭けたんだ
痛いのが嫌いなのはみんな一緒でしょ
Dive? Dive? Dive?
こんな世界でも、君が飛び込むなら
僕は止めないよ
こんな世界を、君が美しいと言っても
僕は認めないよ
朝、満員電車の中で1日の予定を確認しその場の立ち居振る舞いを考える。
いつからだろう、これが習慣になってる。
世間は新生活と賑わい、新入生、新入社員が連日インタビューに登場する。その映像が繰り返し電車の中で流れる。同じ周期で1日の予定を繰り返し精査して、いや、させられてるって言った方が正しいような気がする
映像に流れる同い年に急かされるようなそんな感じ
「お前もこの人達に劣るなよ」
必要もない責任感を感じるのは昔からの悪い癖だ
と言っても直す気なんてさらさら無い
なにせ、今の自分とその友人の輪を作ったのもまたこの癖のおかげだから、どんなにデメリットがあっても無くしてしまうにはあまりにも惜しい、
そんな出来の悪い情がもう芽生えてしまったのだ
大事なものを無くしてしまうくらいなら
新しさなんて諦めるくらいでちょうどいい
あ、今日って誕生日だったんだ
忙しくて、すっかり忘れてた
ケーキでも買おうかしらと思ったけど
お腹の調子も良くないし…
一人で食べるケーキなんて
美味しいと、思えない気がする…
伸ばしかけた手を引いて
また、ため息
家にいた時は、
おっきなホールのいちごのケーキを
みんなでわけて食べたっけ
甘くて、ふわふわで、しあわせな味
私はいちごが好きだから
たくさんいちごが乗ったところをもらってた
ろうそくについたクリームを
ぺろって舐めるのも好きだった
あぁ、やっぱり買おう。
あの味じゃないけれど
食べたいなって思ったから
お部屋に戻って、一人で食べるケーキ。
やっぱりちゃんと甘くて、ふわふわで、
しあわせな味がした