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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 12.ユニコーン ①

夏休みがやって来た。
約1か月半の長い時間を皆はどのように使うだろうか。
わたしは、宿題以外の時間を何に使うか悩んでいた。
今年は家族で遠出する予定は立っていないし、毎日遊ぶような友達もあまりいない。
部活はそもそも夏休み中活動しないし。
ずっと家の中にいるワケにもいかないから、わたしはとりあえず外に出るようにしていた。
その結果、いつもの”彼ら”と出会う事も多くなった。
”彼ら”も”彼ら”で、夏休み中は毎日のように会っているそうだ。
そのためか、わたしも”彼ら”と会う回数が普段よりも増えていた。
…今日もわたしは、駅前で”彼ら”に遭遇していた。
「あ、皆」
「よ」
「何だよ」
「暑いな」

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歌と微炭酸

気の抜けた
炭酸みたいな日々の中で
君の歌がはじける
ヘッドフォンの内側に
僕の世界が広がる

今日だけは
この炭酸に溶けてしまおう
身を任せて、ひたすらに
はじける涙もそのままに

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ぎりぎり手遅れ

もう動かないタマムシ。
すり潰されたカナブン。
羽根だけになったアブラゼミ。

あとちょっとだけ、出会うのが早かったらなぁ……

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復讐代行〜第15話 不止〜

橘を先頭に4人でゾロゾロと廊下を歩く。
この違和感まみれの様子が周囲に生み出す余波は私たち2人にとっては不快であり、恐怖であった。
「あれ誰?」「なんか釣り合わない」「ブスが際立つ」
「いや、イケメンの引き立て役か」「…」
こんなもの何日も喰らえばノイローゼになるだろう。
味わったことも無い気持ち悪さにこれまでのことを後悔しそうになる。それでも後悔の0コンマ1秒後にはその全てを彼らへの復讐心に変えた。
“私はもう…戻れない…”
「ねぇ、」
気づけば橘に声をかけていた。
「なんだ?青路」
“私”の少し驚いた反応を確認した上で
「さっきなんて言ったの?まさかほんとにあの子を…」
そこまで言いかけたところで小橋が割り込んできた。
「お前な、そんなわけないだろ?それともお前にそういう気があるのか?」
正直、そう返されるとは想像していなかった。
「は、はぁ?お、俺はただ!」
「そう動揺するなよ、蓮にも考えがあるんだろうからさわざわざちゃちゃ入れんなよ」
「青路、俺らは友達だが別に何もかも話さなきゃいけないわけじゃない、お前も俺らに話してないことあるだろ?例えば…」
さすがだ、体のことに気づいているとは思わないがそれをこぼしてしまいそうになる脅迫の目をしている。
“こいつを…私の手で…”
「こういうのはギブアンドテイクってもんだろ?話すならお前も話すことだ」
これで迂闊に踏み込めなくなってしまった。
“どうする…これじゃ…二の舞…”
何事もなかったかのように再び歩を進める橘と小橋について行くことしかできない自分に腹が立つ。
その気持ちをグッと堪え“私”の差し出す手を振り払った。

to be continued…

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黄昏時の怪異 その④

家の近くまで千葉さん達に送ってもらい、二人と別れた。家までは50mも無いとはいえ、さっきまで3人だったということもあって少し寂しい感じがする。
ふと、背筋に寒気が走って背後を振り返った。別れてから数秒しか経ってないはずなのに、あの二人の姿はもう見えない。どこかの角を曲がって建物の陰に隠れてしまったのか?
何となく嫌な感じがする。昨夜、宮城モドキを見つけた時に似た感じだ。あの時はオバケの存在を認識していなかったからほとんど自覚も無かったけれど、多分この感覚は、オバケに出会った時の感覚なんだろう。
こういう時って、家に逃げ込んで良いものなんだろうか。オバケを家に連れ込むことになったりしたらマズいかもしれない。けれど、他に良い逃げ場が思いつかない。幸いにも、家まではすぐだ。走れば5秒かそこらで着くはずだ。
覚悟を決めて、自宅に向けて駆け出す。それと同時に、周りの空気が変わった。確かに何かが背後にいて、追いかけてきているというのが分かる。それだけじゃない、今いる位置と家までの短い距離にも、何かが潜んでいるのが分かる。何か嫌なものが隠れているっていうのが『見える』んだ。これが霊感なのか。
自分より前にある嫌なものは回避して、とにかく走る。背後の気配は少しずつ近付いてきている。私より足が速いみたいだ。
(けど……この距離なら、私の方がぎりぎり速い!)
家の敷地に飛び込もうとして、咄嗟に足を止め、通りを再び走り出す。
「ひ、卑怯だ……! 待ち伏せなんて……!」
家の扉の前に、真っ黒な人影が立って待ち構えているのが見えたんだ。けど、現状何よりの問題は、ここから先は2本の道に分かれていて、その両方が割とすぐ行き止まりになっているってことだ。
(どっちの方が長かったっけ……、いや、どちらにしろ追い詰められるのは目に見えてるし、それを考えても仕方ない。どうしよう……)
とりあえず、それぞれの道の奥にあるものを思い出してみる。右の道はたしか、一軒家が4軒か5軒。左の道は、たしか古いアパートが1棟あったはず。
(……もしかして、あっちなら)

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昔々...

ちょいと、そこのアンタ!
話を聞いちゃくれないかい?
なぁーに、ちょっとした昔話さぁ...。
『昔々、色んな旅人が訪れる村がありました。
ある日、複数人の旅人がやって来た。
村の長も村人もそいつらを気味悪がって村へ入れなかったそうな。
結局、彼らが何処から来て何処へ帰るのかも知らなかった...。』
話はここまで、おしまい。
......え?「続きは無いのか」だって?
フフフ...!話の続きが気になるなら、アンタが作れば良いのさぁ...。