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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ③

教室がある建物の隣の体育館にて。
体育館では今まさに朝礼が始まろうとしていた。
…と、わたしの学年の生徒が座っている場所の前に学年主任の先生が立った。
「はいちゅうもーく」
学年主任の大きな声で、ざわついていた2年生全体が静まり返る。
「えー、実はこの学年に新しい仲間が増えます」
ほら、おいで、と学年主任は体育館の脇から三つ編みお下げの少女を呼んだ。
「転入生の坂辺 里加古(さかべ りかこ)さんだ」
学年主任がそう言うと、少女はさ、坂辺 里加古です、と頭を下げた。
「…何か、思ってたのと違う」
「地味だね」
「美少女じゃない…」
「そういう事言わない」
学年全体が、思ってたのと違う、とざわめく。
それは教室に戻ってからも続いた。
「彼女…坂辺さんて何か地味だよねー」
「パッとしないねー」
「ま、仕方ないんじゃない」
クラスメイト達は口々にそう言う。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ②

「おっはよーサヤカ!」
「あ、おはよう亜理那」
そんな中、亜理那はいつものようにわたしに話しかけてきた。
「ねぇ、うちのクラスに転入生が来るって聞いた?」
「あー聞いた聞いた」
亜理那もこの話をするのか、とわたしは呆れ気味に答える。
「どんな子が来るんだろうね?」
亜理那はニコニコしながら言った。
「…そんなに楽しみ?」
わたしが何気なく聞くと、亜理那はうん!と大きくうなずく。
「だってこんな街に引っ越してくる子なんてそうそういないもん!」
しれっと自虐の入った発言に、わたしはそ、そうだねと返す。
でも確かに、この街に引っ越して来る人は中々いないかもしれない。
寿々谷は周辺地域に比べれば都会だけど、ベッドタウンとか新興都市ってワケでもないから、外からやって来る人はそんなにいない。
故に、転入生がやって来るという事はちょっとした騒ぎなのだ。
「楽しみだな~」
転入生に会えるの、と亜理那は楽しそうに笑う。
と、ここでチャイムが鳴った。
すぐに教室に先生が入って来る。
「はーい、この後朝礼だから廊下に並んでー」
先生がそう言うと、皆はバタバタと教室の外へ向かった。

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ユーラシア大陸縦横断旅39

ケルンを出てからおよそ40分、ライン以西の平野を駆け抜けて最初の停車駅にしてドイツ最後の停車駅、アーヘン中央駅に着いた
「もうアーヘンか…次はリュッティヒ、そしてノルトだな…ノルトの次が目的地のセントラール…」と呟く俺と違って彼女は楽しそうだ
「ベルギー、楽しみだなぁ。ワッフルとか、色々甘いお菓子で有名なんだろうなぁ。アントワープとかブルージュの旧市街も良い。イープルでは猫祭りの時期だから猫耳付けて愛しの彼氏を惚れさせちゃおっかなぁ」と独り言を言っている
「全部聞こえてるぞ〜」と言うと2人揃って顔が赤くなる
そして、リエージュに着くまで沈黙が続く
「もうリュッティヒか」と言うと「リーゲじゃないの?」と訊かれた
「それを言うならリエージュだね。リュッティヒはドイツ語の名前さ。フランス語ではEの字の上に点があればその文字はエ段の音で発音する。逆に、点が無ければ発音しないよ。あと、リエージュと言えばワッフルだね。あのサクサクした感じのベルギーワッフルはリュッティヒのスタイルだね。反対に、丸くて焼き目が付いた柔らかいヤツはブリュッセルのスタイルさ」と返すと、「もっと知識がないと貴方は楽しくないのかなぁ」と言って俯く彼女に「君と一緒だと楽しいし幸せだよ。むしろ、君ほど意気投合できる女性とお付き合いしたことないから。大好きだよ」と返して彼女にキスをする
「これ、一塁だからな」と言ったらどちらともなく笑い出す
そうして2人だけの時間が過ぎると、Bruxelles Nord と書かれた駅に着いた
「そろそろ降りる支度しないとな。もうブリュッセル北だから次の駅で降りるよ」と告げる
そして、列車を降りて今夜の宿に向かう
「何か、色々あったな。」と言うと「そうだね。でも、明日はパリで過ごすの、楽しみだなぁ」と返ってきた
「俺、イギリス英語は話せるけどフランス語は話せないぜ?」と言い、彼女も笑い出す