それから暫く。
わたし達2人はショッピングモールの休憩スペースにいた。
「不見崎さんて妹が2人いるんだ」
「うん、一方の性格はアレだけど…」
坂辺さんと他愛ない会話をしながらも、わたしはさっきの事を気にしていた。
”彼ら”に遭遇した時の事だ。
ほんの少し目を離した隙に”彼ら”がいなくなり、”壁”が現れた。
”彼ら”は割と神出鬼没な所があるから、突然姿を消してもおかしくない。
しかし突然壁が現れたのは不可解だ。
一体どういう事だろうか。
「…不見崎さん?」
色々と考え事をしている内にぼーっとしているように見えたのだろう。
坂辺さんは不思議そうにこちらを見ている。
「あ、ごめん」
ちょっと考え事してた、とわたしは笑う。
私の大切な方々は世界の事を誰よりも気にかけて下さる優しい方々なのです。そして人々を守って下さる暖かい方々。私はそんな方々に御礼を申し上げたいのです。本当に有り難う御座います。
「我が音楽を嫌うようになったのは、父が音楽に殺されたからだ。父はあるバンドに所属し、ドラムを担当していた。だが、その腕は世間に嫌われた。下手だと評されメンバーからは避けられるように扱われていた。そんな中、父はそのバンドを脱退した。それでもまだ、父への誹謗中傷は終わりを忘れ、父の最期まで続いた。それから我は、父の死の原因である、音楽を嫌いに、憎むようになった。そして同じ考えを持った仲間を集い、今に至る」
こんな言葉を聞いても、私の家族は何も動じず、音楽を続けた。
でも、そんなことは簡単に崩れてしまった。
近隣住民から通報され、父は警察署へと連れていかれた。
翌日父は帰ってきたものの、もう音楽を奏でられなくなった。
退屈な日々の始まりだ。
定刻通り、バロー・イン・ファーネスに着く
「想像以上の長旅だったね。まぁこれまでの寝台列車の旅ほどじゃないけど」そう彼女が言うと、「俺の地元から君の地元行くならこれと同じくらいの時間がかかるんだ。これくらいの時間で音を上げてたら君と一緒にはなれないよ」そう言って笑う
そして、俺は彼女と町を一望できる場所に向かう
「懐かしさを感じるな」そう呟くと「えっ?この街、初めてなんだよね?」「ここ自体は初めてさ。でも、陸地のすぐそばまで深い海が来ている港町は行ったことがあるんだ。まさに横浜さ。って、関東の話なんかしても分からないよね」そう言って笑うと、「横浜って行ったことないんだ。教えてくれる?」と言って上目遣いをしてくる
「まさかイギリスまで来て横浜の話するとは思ってなかった」と言って苦笑いを浮かべながら頭を掻くと「お二人さん、邪魔しちゃったかな?」と幼馴染達が声をかける
「「そんなことないさ(よ)。やっぱり、2人ともお似合いだな(ね)」」そう返すと「君達もね。そうだ!そろそろ市街地に戻らないとマンチェスター行きの列車に乗るハメになるよ」と返ってくる
彼女が「グラスゴーから飛行機はどう?」と訊くので「財布が京急だから無理」と言って笑顔で返す「「関東の鉄道ファンにしか通じない言い回ししてどうすんだ(の)よ。まあ、君らしいけどね」」と幼馴染達が呆れた様に笑う
「俺らしい、か…確か、君にアプローチした時管制用語ゴリゴリに使ったことあったよね」「ダイバートは許可しないけどね」と思い出した様に笑い出す
水平線の向こうに金色の太陽が沈み、それを見届けてすぐに中心街へ戻る
磨り減ってきた
錆び付いてきた
そこかしこにがたがきた
それでも回り続ける。
回り続けさせられる。
代わりはいくらでもあるのに
代えさせて貰えない
もうすぐこの装置は止まるであろう。
代えて貰えないから
滞るのさ。
これでやっと新調され………