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籠蝶造物茶会 Act 11

「?」
何かしら?と女は立ち上がり、扉の方へ近付く。
ガチャ、と戸を開けるとそこには金髪のコドモとエプロン姿のコドモが立っていた。
「でへへへ」
来ちゃったと金髪のコドモは笑う。
「…何」
女がそう呟いた時、視界の外から女の身体に衝撃が走った。
「⁈」
気付くと女は蹴飛ばされていた。
「…油断していたとは、まだまだだな」
お前それでも魔術師か?と赤髪に帽子のコドモが扉の中を覗き込む。
「…あなた」
女は悔しそうに起き上がる。
「後ろに気を付けたら?」
「え?」
赤髪のコドモが振り向くと、そこには獣型の精霊がいた。

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私が出来ること

迷惑お掛けしてすみません

このような私が罪滅ぼしをしてもよろしいでしょうか

迷惑お掛けした分、罪を償います

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Trans Far-East Travelogue⑳〜野球大会前編〜

丹那の方から朝日が登り、いよいよ大会が始まる
今日の大会は参加者が多く、8チームが総当たりのリーグ戦を行い、その後上位3チームとシードの1チームで3位以上のトーナメントを行うとのことだ
ルールは四死球及び敬遠、バント、エンドラン、バスター、盗塁は認められて3アウト交代の9イニング制という所までは通常の野球と同じだが、5回終了時点で15点、7回終了時点で10点以上の点差が付いた場合はコールドになるそうだ
いきなり第1試合から俺達のチームが担当することになった
まず、打順が発表される
俺達助っ人組はクリーンナップと6番だそうだ
兄貴の彼女さんは3番一塁、兄貴は四番中堅、俺は5番遊撃、彼女は6番二塁だ
そして、プレイボールのコールがかかる
上位打線が繋いでくれたおかげで一死満塁のチャンスで第一打席が回ってきた
0-3からの4球目、直球を見逃さず振り抜くと誰もが認める特大アーチのグランドスラムの場外ホームランで海に打球落下
続く彼女は2-3から粘って15球目を打って2塁打
その後も打ちまくり、3回終了時点でスタメン全員にヒットが出て、しかも足が遅い俺がサイクルヒットを記録し、皆5回まで打ちまくり女性陣のアベックも相まって30-2でいきなりコールド勝ちだ
試合終了後、運営の人と審判団が話し合っている
そして、本来は試合中の市営球場がキャンセルで空いたとのことで残りの試合をより広い市営球場で行うことになり、第一試合だけやって移動となる
俺達の2試合目となる第5試合で打順と守備位置が変わる
兄貴が3番ショート、俺が4番投手、俺の彼女が5番捕手、彼女さんが6番セカンドを担当する
二遊間とバッテリーがそれぞれカップルであるためか阿吽の呼吸で表の守備はノーノーだ
裏の攻撃に入り、1点リードでノーアウト2、3塁の場面で俺の打席だ
バスターで外野の真上に打球が上がり、犠牲フライかと思われたその瞬間、レフトとセンターがお見合いしてまさかのヒットになる
続く彼女はセンター返しのタイムリーを放ち、早くも4点目を挙げ、彼女さんがツーラン、更に繋がってツーアウト満塁で兄貴の第二打席、決勝点のグラスラが飛び出し、俺も続けてソロを放ち2試合連続で俺と兄貴、兄貴と彼女さん、俺と彼女、女性陣2人のアベック弾4コンボが記録されてまたも圧勝
いよいよ後半戦となる

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Trans Far-East Travelogue⑲

山を越えて静岡県に入り、夕焼けに染まる柿田川公園で休憩と思いきや、兄貴はおもむろに携帯を取って電話に出る
電話を切ったらすぐ、側にいた副長に耳打ちし皆を集めて車に戻り、兄貴から「突然で申し訳ないが、大切な話があるので聴いてくれ。明日、親友が経営するスポーツ関連企業主催で初心者向けの男女混合野球大会が沼津の我入道公園野球場であるのだが、先程の電話で『とある1チームが練習中に負傷者が続出した人数が足りなくなり助っ人を探しているとの連絡があった。経験や性別を問わず、参加してくれる人が見つかったら全員で今日中に直接沼津に来てそのチームの元に行ってくれ』と言われたのでこれからすぐに沼津へ向かう」と言われ、皆納得した雰囲気の中で車は動き出す
俺や兄貴は勿論、兄貴の彼女さんも俺の彼女も出場すると言ったのでカップル2組はスタメン確実、ベンチには残りの男を入れて出場することになった
「本番の球とバットの素材、分かるか?」と訊くと「バットはウレタンかカーボンを選手がネクストに立つタイミング選ぶ形式でJ球、つまり昔のC球の改訂版だそうだ。元々この旅の途中に立ち寄る街に住んでる親戚の子供達と野球で遊ぶ予定があったから、幸い道具は全て積んである」と返ってくる
気付いたら車は目的地に停まったので、外に出て「明日は無双しようや」と言って兄貴に笑顔で声をかけると「彼女には曲がり幅の大きな変化球と火の玉ストレートで緩急付けて甘い言葉囁く癖に、実際の球種は直球しかない人が何か言ってる」と言って兄貴は笑い、俺は恥ずかしさのあまり黙っていると彼女が「私だから受け止められるけど、他の女性には普段貴方が私に言ってるような甘いことは言わないでね」と笑っているが、目だけは笑っていない
「それなら、君も俺以外の男を虜にしないでくれよ?」と返すと「カップルで冷戦始めてどうすんだ」と言って兄貴が笑い、釣られてその場の皆も笑い出す
東京湾とはまた違った輝きを放つ駿河湾の港湾地帯の夜景が輝いている