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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 連載再開1周年記念! 作者からのごあいさつ

どうも、「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」の作者です。
この度、「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」は連載再開から1周年を迎えました‼︎
めでたいですね!
ここまで続けてこれたのも、スタンプやレスを下さる皆さんのお陰です。
いつもありがとうございます。

さて、1周年記念にこの物語の裏話をしようと思います。
元々この物語は、2019年のバレンタインデー辺りに学校の英語の授業中に思いついたお話でした。
その直前にポエム掲示板で「死神」が出てくるある人のポエムを読んだことを授業中に思い出し、「死神と死のうとする少女の読み切りマンガ」的なお話を思いついたのが「ハブ ア ウィル」のルーツになります。
ただ読み切りにするのがもったいないと思って続きを考え、「少女と死神がばったりショッピングモールのゲームセンターで再会する」みたいな話を思いついた所で、「異能力ものにした方が面白いかもしれない!」と考え、「死神」を異能力者の少女(ネロ)にして、彼女の愉快な仲間達を考え…と現在の「ハブ ア ウィル」の形が出来上がっていきました。
そこから2週間ちょっとで初投稿になるので、相当なスピードで話を考えたことが分かりますね(笑)
ま、空想のスピードは速いので。

さて裏話はこれくらいにして。
最後に作者への質問コーナーです。
ストーリーについての質問、作者自身への質問、その他諸々…何でもOKです。
とりあえずレスからお願いします。

では今回はこの辺で。
次は「連載開始4周年記念! 作者からのごあいさつ」でお会いしましょう!

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理外の理に触れる者:蝶と鴉と猫 伍

黒羽は不思議な子どもだった。
地元では有名な地主の子どもだったが、妾の子だったがために父方の家からは疎まれた。
それに黒羽の周りではいつも不思議なことが起こった。
小動物が次々と死ぬのだ。
あの子は死神だ、周りの人々は皆こう言った。
やがて実母が亡くなり、身寄りもなかった黒羽は父方の家に引き取られた。
黒羽についてあまりいい噂を聞いてこなかった父方の家は、黒羽を屋敷の離れに押し込めた。
それから10年くらい経って、黒羽は屋敷を追い出されるような形で街外れの古民家に引っ越した。
理由は簡単、黒羽が不気味だからだ。
黒羽が触れたハトが死んだ。
黒羽の傍でネズミが死んでいた。
黒羽の部屋にあった植木鉢の植物が枯れた。
もしかしたらあの子は本当に死神かもしれない。
このままでは自分達も殺されるかもしれない。
そう思って、屋敷の人々は黒羽を追い出した。
でも黒羽にとって、それでよかったのだ。
ずっと屋敷の離れに閉じ込められてているより、外へ出られた方がマシなのだから。
しかし平穏は長く続かなかった。
黒羽が、街外れで”獣“に襲われたのだ。
何の動物だったかは分からない。
ただ明らかに、街中にいるような生き物じゃないことは確かだった。
「…」
その時、“獣”に襲われて血だらけの状態で黒羽は道端に仰向けになっていた。
このまま死ぬんだろうな、と人気のない道端で黒羽が思っていると、声が聞こえた。
「よぉ」
見ると建物の垣根にカラスが留まっていた。
「お前そんな所でどうしたんだ」
カラスが話しかけてくるのは不思議だったが、それを気にする体力はその時の黒羽になかった。
「…さっきお前が襲われる様子を見たんだが、アレは“異能者”の仕業だな」
“異能者”、聞き慣れない単語に黒羽は身じろぎする。

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理外の理に触れる者:海殺し その⑪

後見。そんなものがあるらしいってことは人伝に聞いたことがある。たしかあれは、支配者級の異能者の特権じゃ無かったのか。
「指揮者の中でも、お前ほど異能を制御し切れている奴は見たことが無いぞ。純粋な力で言えば支配者級にも匹敵するあの“総大将”でさえ、既に半分ほど人間を辞めているというのに。『能力を制御する』という観点において、指揮者以下の位階の異能者じゃお前は間違いなく最高の実力者だよ。……ああ、評判を気にかけているなら心配は無用だ。お前の実力は私が保証するし、異を唱える阿呆は『説得』してやる」
「そもそもお前が後見してやれば済む話じゃねえのか」
「嫌だよ。私は可愛い女の子だけに囲まれて生きてたい」
「こいつ……」
とりあえず駿竜を消し、砂漠の異能者の胸倉を捕まえて立ち上がらせる。
「おいお前。名前は」
「え⁉ あ、ああ、えっと、あー、あの、俺は黒崎。黒崎孝太郎」
「長えな。略してクロコって呼ぶぞ」
「あっはい」
「異能『怪獣の指揮者』、二つ名“モンスター”、八街亮晟。クロコ、お前を『後見』する。お前は今から俺の弟子な。俺のことは師匠とでも何とでも好きに呼べ。1時間以内にこの砂漠、消すぞ」
「えっあっ了解」
了承を取ったところで、あの女王さまがけらけらと笑い出した。
「何なんだよお前はァ!」
「いやぁーはっはっはっはっ、悪いね、楽しくて楽しくて。おいクロコ」
女王さまがクロコの方に向き直る。
「お前に二つ名をくれてやろう」
「え、あ、はいどうも」
クロコの方も素直に応じる。
「”海殺し”。あらゆる環境条件に干渉し、土壌の養分と水分を完全に奪い取る、げに恐ろしき世界の破壊者。『砂漠の干渉者』として、これからはその名を使って良いぞ? お前と怪獣のことは、私の異能に乗せてここらの異能者たちに広めてやる」
「う、ウス」
盛り上がっているところ悪いが、今は砂漠を元通りにするのが先だ。女王さまからクロコを引き離し、騒がしいだけのこいつらから離れてクロコに指導する場所を探すために歩き出す。
「行くぞクロコ。お前に異能の使い方を教える。まあ、身に付くかどうかはお前次第だけどな」
「あ、ウス、よろしくお願いします」
何故か無言で俺たちのあとをついて来るその他大勢を何度も追い返すことになったのは、大変腹立たしかった。

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musician

私は知っている、あの人のsoloには2種類あって、それを毎回直前になって、どちらを使うかを決めているということを。そしてどちらも練習しては、その仕上がりに満足出来ずに、首を傾げながら再び奏で始めることを。脳内で他のパートを奏でているから、常にノリノリで、あの怖そうな顔も、独りの目も和らいでいるということを。

常に見てきた。聴いていた。いちばん近くとは言えなくても、その音全てを聴き逃すまいと自分の手を止めて。楽しそうなあの人が好きだった。私だけがあの人の裏面を知っているのだと思いたかった。この想いが恋だと思いたくはない、ただ一人のミュージシャンとして、対等な立場でずっと見ていたかった。恋だと思った途端に、私はただの卑怯者になってしまうと恐れた。

それなのにsoloと会話が入った録音は編集出来なくて、心のどこかに嬉しく思っている自分もいた。あの音が好きなだけではなくて、奏でているあの人のことも好きなのだと、そんな恐ろしい考えは捨てたかった。

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似て非なる

好きと楽しいは違う
楽しくても好きじゃないこと
好きでも達成するまで辛いこと
そんなものたくさんある。

好きと欲しいも違う
好きなものは手に入れても愛せる
欲しいものは手に入れたら終わり

違いと間違い
違いは個性として尊重される
間違いは悪として否定される

そうやって
違うのにみんな勘違いしてる
今の自分の気持ちを確かめてみて?
本当にそれは好きなの?
本当にそれは間違いなの?

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Trans Far-East Travelogue㉝

世界三大記念艦の一つ、三笠の観覧を終え、公園に戻ると港を見ていた嫁が泣きそうな顔で「男同士で話してる時は生き生きとしてるのに、私と一緒にいると作り笑いしなきゃいけないほどしんどいの?2人きりの時は心から笑ってくれないから」と言う
その嫁の表情で現状を悟り、俺も正直に話す
「俺さ、ある漫画を見てショック受けたんだよ。君を見てると特に鮮明に思い出してしまってね」と返して「俺さ、本当はタメで話せるような親しい相手にはお前って呼びたいんだよ。親しい相手に対してお前って呼ぶことは相手が俺にとって特別な存在だっていうことは男同士なら難なく通じるんだけど、その漫画の主人公の女性は夫からお前呼びされるのか不満だし、恋愛系の記事読んでもパートナーから『お前』って呼ばれるのが嫌な女性は多いそうなんだよ…それ知って、大好きな君が相手でも親しみと敬意を込めるのはダメって言われて、俺のやり方を否定された気がしてショックだった。誇張じゃなくて、本当にイジメとか差別で自分を否定されたあの頃と似たダメージを受けて、君の顔を見る度にそれを溜め込んだ。君に嫌われたくなくて気を遣ってたけど、顔に出てたようだな」と続けると「『お前』って呼ばれるのは私も嫌かなぁ」という嫁の一言に「そうか」と返して黙ってしまう
「でも、もっと嫌なのは、大好きな貴方が傷付いてるのを見ることなの。だから原因を知りたかったけど、実は私が貴方にプレッシャーかけてたなんて知らなかった…気付けなくて、そして傷付けてしまってごめんなさい…」と言って俺を抱きしめながら泣いている
「バカ言え。お前に涙は似合わねえよ」
咄嗟に口から出たその一言のおかげで今まであった憑き物が取れた気がして、自然と笑みが溢れた
それを見た嫁が「やっと笑ってくれた…私、大好きな貴方の笑顔はもう2度と見れないと思ってた…」と言うので「気ぃ遣わなくて普通に笑ってられんの、久しぶりだな」と呟くと「私、『お前』って呼ばれるのはあまり好きじゃないけど貴方に呼ばれる分には悪い気持ちしないよ」と返って来たので「ありがたいな。お前みたいな一生モノの相棒にそんな風に言ってもらえるとこっちも気楽だよ。さぁ、次の場所行こうか。行きたい所あるなら俺、調べっから」と返すと「一生モノの相棒って、そりゃ夫婦ならそうなるでしょ」と言って嫁も笑ってる