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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 15.オーベロン ⑰

「お前が知る必要はない」
「耀平」
耀平の突き放したような発言に対し、師郎は思わずそう言う。
「…コイツにも言った方が良いと思うぞ」
俺達とここまで深く関わっちまったんだ、言っても損はないと師郎は耀平を諫める。
「…」
耀平は暫く嫌そうな顔をしていたが、やがて諦めたようにため息をついた。
「…仕方ない」
あんまり他人に言うなよ、と前置きした上で、耀平はぽつぽつと語りだした。
「アイツは…ネロはな、小3の時にヒドいいじめを受けてるんだよ」
クラスがのほぼ全員から、なと耀平は続ける。
「え…」
どうして?とわたしは尋ねる。
耀平はこう答えた。
「どうしてなのか、詳しい理由はネロでもわからないらしい」
まぁ小学生はしょうもない事で機嫌を損ねたりするからな、きっと些細な事なんだろ、と耀平は言う。

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餌を飲み込んでは嚥下する
繰り返すだけ
繰り返すだけで生き永らえるのに
足りない
足りない

与えられた餌を
飲み込んでは嚥下する
繰り返すだけ
繰り返すだけで生き永らえるのに
足りない
経験が足りない

足りない
足りないのは
今日を満たす食事じゃなくて
明日の食事への飢え

足りない
足りないのは
それはもう
狩人になるための時間で

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雨が降っていて
差し出された傘を受け取って
開いてみたら穴が空いてて
大爆笑して見上げてみたら世界が晴れてたっていう
わけのわからない夢を見ました。

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はじまり

使い慣れた電車で終点まで
そのあと乗り換えて3分後
駅の2番出口から見える空は
どんな色をしているだろうか

遅刻なんてしないよう
だいぶ余裕を持って家を出るけれど
高ぶった心に引っ張られて
気づけば駆け出してしまいそうね

学校に着いて
窓の外を眺めて
8時半のチャイムが響いたら
きっと僕らの春が始まる

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輝ける新しい時代の君へ Ⅺ

 遂に男は来なかった。
 この時は何か用事があったのだろうという持ち前の楽観的観測によって、男には会わないまま帰っていった。
 しかしこの日から、男はいつまで待っても来ることはなかった。降り続く好きな筈の雨も段々と重く圧し掛かるようになった。態度にも顔にも表れることはなかったが、少年は自分が思うより残念に思っていた。
 雨が嫌いだから来ないのかと一瞬思ったが、何も言わずに来なくなるなんて、そんなことを彼がするはずがないと確信していたので、仮説はアッサリ頭の中から排除された。それとも彼の身に何か不幸があったのではないか。
 不安は日に日に増していた。


 雨は一週間と三日、降ったりやんだりを繰り返した。運が良いのか悪いのか少年が出掛けていく時はいつも雨が降っていた。しかしそれも昨日で終わり、蒸し暑いことには変わりないが、雲の切れ間から日の光がクリーム色の無数の線となって地上を照らす。どんよりとした灰色の雨雲も、その時は後光が差しているようで、やけに神々しく見えた。
 今日も居ないだろうとは思ったが、あの公園に行くことは、以前から数少ない一日のルーティーンに含まれる大切なイベントの一つだったし、何より男にまた会いたかった。
 いつものベンチに向かうと、
「よっ。久し振り」
 男がニコニコして座っていた。 
 あまりに変わらない態度に、昨日も一昨日も会って話していたのではないかという錯覚に陥って「よ」と、簡易的な挨拶をした。
「いやーごめんなー何も言わずに出てこなくなって」
「いや、えっと、うん……あの、なんで……」
 少年は男の軽さに、今まで感じていた喪失感や焦燥感を持て余し、言葉も出なかった。訊きたいことも話したいことも三十分では足りない程にあったのに、全て頭から抜け出てしまって、かろうじてそれだけ言葉にできた。
 そんな戸惑う少年に反して、男はいつもの調子で微笑んだ。大人の余裕を見せつけられたような気分になって、少しだけ悔しくなった。
「はは、俺丁度この時期の雨って苦手なんだ」
「なんでだ」
「エエ、難しいこと訊くね」
 男は純粋で大きな瞳から目をそらして余裕の見えた笑顔を苦笑に変えた。
「俺が……いや、この頃の雨ってジトジトして嫌な感じするだろ。暑くってね」