あの娘の長めのスカートが
あの子の窮屈そうな詰襟が
馴染んだ頃に きっと次の春吹雪。
「まぁまぁ、ネロの部屋はとっ散らかりがちだし」
しゃーないしゃーない、と師郎は咄嗟にフォローする。
「いや、それはそうだけど…」
まさかこんな時に…と耀平はうなだれる。
「1週間ずっと探したけど、結局見つからなかった」
だから皆と連絡できなかった…とネロは呟く。
「…」
耀平は呆れたように黙り込む。
「ごめん、耀平」
何か…色々と、とネロは申し訳なさそうに言う。
「だから、スマホ探すの手伝って」
ネロにそう言われても耀平は暫く黙っていたが、やがて諦めたようにため息をついた。
「…分かったよ」
そう言って耀平は顔を上げる。
「でも1つだけ約束な」
耀平がそう言うと、ネロは目をぱちくりさせる。
「先週の日曜日、何があったのか教えろ」
あの女と何があったか、全部と耀平は続ける。
「…分かった」
全部話す、とネロは答えた。
「それなら良いや」
とりあえず上がるぞ、と耀平はネロの家の扉を開け中に入った。
わたし達3人も、それに続いた。
「逆に魔術師であっても精霊の類が見えない人なんて結構いるし」
ピスケスがそう言うと、露夏はふーんと頷いた。
「で、“学会”はどうするって言うんだ」
ナツィがそう聞くと、ピスケスはそうねぇと答える。
「来週、“学会”の魔術師が結界の修繕作業を行うらしいわよ」
表向きは学校の設備点検と言う形で、とピスケスは付け足す。
「そして私達は、深夜にあの学校に忍び込んで中にいる精霊を退治するの」
「え、は⁇」
ピスケスがしれっと言った所で、ナツィはポカンとする。
「お前なんで俺達が精霊退治する前提で話してんだ?」
俺まだやるって言ってないんだけど、とナツィは不満気な顔をする。
ピスケスはうふふと笑う。
「もう既に“学会”から依頼が出てるの」
あの小学校にいる精霊がどれくらい強力なものか分からないからね、とピスケスは続ける。
とある学校に伝わる七不思議。
放課後、昼休み、授業中、その時間がなんであるかに関わらず、いずれかの教室にたった一人でいると『それ』は現れる。
現れた『それ』は異様に長い身体を器用に折り曲げて教室内を覗き込み、室内にいる人間を脅かす。『それ』は時折、首から先や手を室内に伸ばすことがあるが、その足だけは絶対に室内に入ってこず、また気付いた時には跡形も無くどこかに消えてしまっている。
また、『それ』の身体的特徴は目撃者の報告によって様々だが、異様に長い胴体と首、そして手足という特徴だけは全ての事例において一致している。