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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 15.オーベロン ㉛

その様子を見て、耀平は黙り込んだ。
「…」
暫くの沈黙の後、耀平は口を開いた。
「じゃあ、こうする?」
耀平が急にそう言ったので、ネロはふと顔を上げる。
「…どうするの?」
ネロがそう聞くと、耀平は得意気に語りだした。
最初の内、ネロはその内容に驚いたような顔をしていたが、やがて笑みを浮かべるようになった。
「いいじゃん、それ」
ネロはうなずきつつそう言う。
他の皆もなるほどとか言ったりしてうなずいた。
「じゃ、来週の日曜日、決行するか!」
耀平がそう言うと、ネロはうん!と大きくうなずいた。

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怪學造物茶会 Act 8

「そんなことないだろ」
いくらここが“学会”に関係する施設だからと言って、そういう魔術的なことが起きる訳がないとナツィは2人に近寄りながら言う。
「ははっ、ただのジョークだよ」
ジョークジョークと露夏はナツィの方を見つつ笑う。
なんだよそれとナツィはジト目を向けた。
「これが音楽室?」
かすみも窓を覗き込みながら呟く。
「なんかゴチャゴチャしてるね」
「そりゃそうだ」
楽器とか多いからな、とナツィはこぼす。
「…ナツィは物知りだね」
「なっ」
かすみにそう言われて、ナツィはビクッとする。
「べ、別に、“あの人”に教えてもらっただけだから…」
ナツィは恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「ほらほら、そっちばかり見てないで」
校舎内に入り込んだ精霊を探しましょ、とピスケスが手を叩く。
そうだなとかそうだねと言って、彼らは音楽室から離れようとした。
…と、ナツィはぴたと足を止める。

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はじめまして。

ふらか、と申します。
ポエムというよりリリック、というか歌詞のようなものを書いてみようと思います。
よろしくお願いします

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輝ける新しい時代の君へ ⅩⅦ

「どうしても会いたくなったときは、九段下の神社に来るといい。そこできっと、待ってるからね」
 そういうと少年は少し落ち着いて「くだん……?」としゃくり上げながら反復した。
「そうだよ、九段下。来るなら四月の始めが良い。あそこはね、桜が大変綺麗に咲くんだ。お花見にピッタリだね」
 変に明るくおどけた。
 別れ際まで道楽的な男の発言に、涙を流すのも変に思えてきた。最後に、少しだけ笑えた。
「わかった。じゃあまってて。ぼくぜったい、行くからな」
「うん、待っているよ」
「うん、今まで、ありがと。……じゃあ……」
 じゃあね、と言おうとしたが、これで終わりだと思うとまた涙が込み上げてきて、泣き出してしまった。

 ひとしきり泣くと、心が決まったようで、早口で「じゃあな」と言ってサッサと踵を返した。
 公園を出る直前、振り返って赤くなった顔で、涙をこらえて、なるべく通常通りになるように発声した。
「まだ訊いてなかったけど」
「何かな」
「……名前!」
「名前?」一瞬何のことか分からず、怪訝そうな顔をしたが、すぐに思い出した。
「そういえば。俺は……邦明、幸田邦明だ」
「ぐうぜんだ。ぼくも同じみょうじ。幸田睦葵っていう」
「むつき……うん、良い名前だ!」
「おじさんも」
 最後にそれだけ言うと、少年は来た道を戻っていった。

 それ以来、少年が男に会うことはなかった。
 会えなかった。