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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 15.オーベロン ㉜

それから1週間後。
わたし達はショッピングモールの裏手に向かっていた。
「ねぇ、これ…上手くいくのかな?」
わたしが何気なく耀平に尋ねると、彼は大丈夫大丈夫と返す。
「おれ達ならできるから」
な、と耀平は隣を歩く小柄な少女に目を向ける。
彼女はもちろん、と笑う。
そうして歩いている内に、ショッピングモールの裏に辿り着いた。
人気のないそこには、背の高い1人の少女が立っていた。
「あら、皆お揃いなのね」
私をこんな所に呼び出して何の用なの?と少女…論手 乙女は尋ねる。
「まぁ、警告と言った所だよ」
耀平の隣にいる少女…ネロはそう答える。
「警告?」
論手 乙女はそう聞き返す。
「そうさ、これ以上ボクに手を出させないようにするための警告」
ネロはそう言って笑う。
「…警告って、私は滋賀さんにこれ以上何もしないわよ」
ただちょっとあの時はやり過ぎただけで…と彼女は言う。

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怪學造物茶会 Act 9

「…」
何か気配を感じたのか、ナツィはくるりと振り向く。
「%|^|^<+“*^|{{」
そこには、ヒトにヒレが生えたような奇怪な”何か“が5体も浮いていた。
「!」
ナツィはすかさず蝶が象られた大鎌を出す。
そして”それ“に飛び込んでいった。
「‼︎」
物音に気付いて、残りの4人は振り向く。
その時にはナツィが精霊を1体倒していた。
「キヲン‼︎かすみ‼︎」
お前ら逃げろ!とナツィは振り向きざまに怒鳴る。
「逃げろ、ですって」
ピスケスはどこからともなく短弓を出しつつ言う。
「という訳で2人共、ここはおれ達に任せて逃げな」
露夏は懐から包丁を出しつつ後ろを見た。
「あ、うん」
「分かった!」
かすみとキヲンはそう頷いて駆け出す。
2人が逃げたのを確認すると、残りの3人は武器片手に精霊達に飛びかかった。

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うちの七不思議

「学校の七不思議」というものがある。
やれ『トイレの花子さん』だとか、やれ『動く人体模型』だとか、うちの学校にも勿論、そういった噂話はいくつか伝わっている。しかし、そんな『七不思議』の中でも、他所では聞かないような奇妙な話が一つある。こんな話だ。

『放課後、完全下校時刻も過ぎた頃に校庭に行くと、隅の方に設置してある一番高い鉄棒の上に腰掛ける幽霊を見ることができる』

この幽霊ってのがどんな姿をしているのか、というところについてはよく分かっていない。大体の話は「遠巻きに幽霊の姿を見て、慌てて逃げるように帰った」という実体験形式の話ばかりで、肝心の部分の作りが甘いんだ。
そして今日、俺はこの七不思議の幽霊を見に行くことになった。
理由は極めて馬鹿らしいもので、仲間内でのちょっとした罰ゲームみたいなものだ。この幽霊に出会うためには、単純に完全下校時刻を過ぎるまで学校に残っていなくっちゃならない。主な『罰』はこっちなんだよな。先生にでも見つかれば面倒だし。
しかし俺は今回、ちょっとした秘策を思いついたのだ。簡単な話、見つかるのが嫌なら、見つからないような場所に身を隠していれば良い。
そんなわけで昼休みのうち見当をつけておいたのが、体育倉庫と体育館の間にある狭い隙間。手入れの全くされていなさそうな植木と建物二つが上手い目隠しになって、よほど注意して見ない限りはそうそう見つからないようになっている。おまけに件の鉄棒もすぐ近くにある。