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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 15.オーベロン ㉟

「そんな根拠どこにあるんだよ」
アンタの異能力ならいくらでもボクに手を出すことができるだろ、とネロは言う。
論手 乙女はため息をつく。
「…もう、人をいじめても何も楽しくないからよ」
虚しくなっちゃったの、と彼女は呟く。
「あと」
論手 乙女は静かに続ける。
「異能力を使っても、本物の友達はできないからよ」
そう言って、彼女は宙を見上げた。
「あなたは良いわね」
どこまでも付き合ってくれる友達がいて、と論手 乙女はネロに目を向ける。
ネロは少し驚いたような顔をした。
「…そろそろ良いかしら?」
いつまでもこんな所にいるワケにもいかないし、と彼女はネロに言う。

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怪學造物茶会 Act 12

「最初におれ達の前に奴らが出てきた時、5体いたじゃん」
それでお前らが4体倒したから、あと1体と露夏は言う。
「え、じゃあソイツはどこに…」
ナツィがそう言い時、途中でハッとしたような顔をした。
「まさか」
ナツィはバッと後ろを向く。
そこにはさっきかすみとキヲンが駆けていった廊下があった。
「マズいっ‼︎」
ナツィは背中の羽を消して走り出す。
「あ、おい待て‼︎」
露夏はそう言って追いかける。
ピスケスもそれに続いた。

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うちの七不思議Novel Edition:鉄棒の上の幽霊 その④

こいつが何者かなんてこの際どうでも良い。現状一番の問題は、下の化け物をどう躱して逃げるかってことだ。
最悪のパターンは、この状況が誰かしら先生に見つかって、説教しに来た先生がこっちに近付いてくること。そうなったら、その先生がサメに襲われるかもしれない。関係無い人間が巻き込まれることだけは避けなきゃならない。
「……おい幽霊野郎」
現状、こいつしか頼れる奴がいない。まずは情報収集からだ。
「何だね被害者君」
「あいつ、この鉄棒からどれだけ離れられる?」
「さあ……一度、走って逃げようとした人がいたけど、すぐ捕まってたよ」
「距離で言え」
「えー……そうだな……」
幽霊野郎は考えるような素振りを見せながら、腕をぴんと伸ばしてちょうど45°くらいの角度で地面を指した。
「この鉄棒の高さが、たしか……2.5mくらいだったかな。僕の座高やら何やらを合わせて考えると……」
腕の角度を保ったまま、弧を描くように真横の地面を指す。
「あの辺りが3mくらいの距離か」
そのまま指す方向を微調整しつつ、奴は空いた片手でこめかみをコツコツと叩く。
「だから……うん。大体5mくら」
奴の言葉が急に途切れた。鉄棒から両手を放した状態で急にこっちに頭を振って話したせいで、バランスを崩したんだ。
俺が捕まえる前に幽霊野郎の身体は鉄棒の上から完全に重心を外し、そのまま地面に向けて落下していった。あの『サメ』が待ち受けている、ちょうどその地点にだ。