街向こうに花開く光に
遠いとおい君を想う
いつまで経っても空白の隣に
「ばか…」って小さく呟いた
どうしようもない現実に
どうしようもない僕ら
大切だからこそ重ならない未来
今年も花火が散って
僕は君を狂おしいほど愛してたことに気がつく
僕だけがあの夏に取り残された
「オヤ、起きたね?」
少年が目を覚ましたのと同時に、明晶が声をかけた。その目はモニタに向けられており、少年には完全に背を向けている。
「ここは……」
「ワタシの秘密基地だよ、少年。しかし君は幸運だったね。ワタシの親友が君を見つけてくれたおかげで、君は今辛うじて生きているわけだ。まあ無傷じゃ済まなかったけど」
「……? あの、あー、すんません。ちょっと、話についてけないんだけど……」
「んー? あー……」
椅子を回転させ、明晶は少年に向き直り、にたりと笑って彼を指差した。
「君が今、身体を支えているその右腕」
「え、…………わあ何だこれ!」
金属製の義腕は、少年の意思に従って通常の人体と変わらないほど自然に動作しており、それ故に少年も実際に視認するまで気付かなかったのだ。
「私の自作ギア……まあP.A.だね。細い螺旋状のパーツを何枚も、何重にも組み合わせ、その伸縮によって身長145㎝から185㎝までの身長の人間に対応した特製義肢、名前は特に無い。元々君のための品物じゃなかったけど……まあ味方は多い方が有利だしね」
「……ぎ、ぎし?」
「そう義肢」
「え……それじゃあこれ、え、僕のこれ、腕無くなってるんすか⁉」
「うん。カゲに浸蝕されてたからねぇ。それしか無かった」
「ま、マジか……あの、それはありがとうございます」
「良いの良いの。恩義さえ感じていてくれれば。ついでにもう一つ恩着せといてあげようか?」
「え、何ですか」
少年が問い返したのとほぼ同時に、屋外から破壊音が響いた。
「え、何⁉」
「お、来たか。ワタシの親友が」
荒々しい足音が近付いてきて、吉代が部屋に入り、気絶した少女を1人床に放り投げた。
「わぁ乱暴。駄目じゃない女の子を乱暴に扱っちゃ」
「入り口壊した。ちょっと何とかしてくる」
「あー……そういうこと。行ってらっしゃい」
吉代を見送ってから、明晶は呆然とする少年の前を通り、気絶した少女を抱き起こし、壁際に寄りかからせてから再び椅子の上に戻った。
「はい、恩その2」
「花火大会、行く?」
「行かない」
ナツィはすかさずそう返す。
「俺興味ないし」
ナツィは横に目を向けながら呟いた。
「えーそんなこと言わないでよー」
ボクナツィと一緒に行きたーいと金髪のコドモはナツィに近付いて言う。
「はなびがすっごくきれ…」
「だから興味ないって言ってる!」
ナツィは思わず立ち上がる。
「俺はそういう面倒なことはしたくねーんだよ!」
ナツィはぶっきらぼうに言ってまたイスに座った。
「…」
金髪のコドモはつい俯く。
「きーちゃん」
かすみは心配そうに金髪のコドモに近寄る。
きーちゃんと呼ばれたコドモことキヲンは暫く下を見ていたが、やがて顔を上げてこう言った。
「じゃあナツィはかすみと一緒に花火見られないね!」
もしかしたら2人で花火でーとだよ〜とキヲンはにやにやする。