目を逸らしこそしたものの、その少年、剛将の口ぶりに悲壮感は無かった。
「……おや? そんなにショックじゃない?」
「いえ、その……僕たち、部隊の中じゃ年下の2人で、他の人たちは僕たちだけでも逃げるようにって、庇ってくれたんです。…………だから、仮に死んでたとしても、まあ、そうかな……って」
「タフだねぇ……。それじゃ、そっちのハナちゃんだっけ? その子も起こして早く帰ってもらおうかな。いつまでもこんな場所にいるものじゃないからね」
「はい……あ、でも、僕たちのP.A.ってどこに……」
「さあ? 親友、見た?」
吉代は首を横に振って答える。
「いや、見てないな。何か適当にくれてやったらどうだ?」
「それならもうあげたじゃない。まあハナちゃんには何か適当に都合してあげようかね」
そう言って明晶は机に立てかけておいた自動小銃型P.A.を花の手元に置き、剛将を見上げた。
「君の義腕にはいろいろと仕込んであってね。戦闘用P.A.としても使えるようにはなっているから、持って行ってくれて良いよ。使い方は帰り道で教えてあげよう。どうせ必要になるし」
「あ、はい。ありがとうございます!」
頭を下げる剛将にひらひらと手を振って応え、明晶は花を起こすために肩を揺すったり頬をつついたりし始めた。
だらしなく蹴伸びした足は白く
何も成し得なかった日々を物語る
汚れた網戸の向こうでは
深さを増してきた空が
青々と純度を上げてゆく
首を振るエースと壊れかけの扇風機
同じ暑さなのにこうも価値が違うかね
「…」
キヲンはナツィにあれやりたい!と言わんばかりに笑顔を見せたが、ナツィは嫌そうな顔をした。
「やりたいとか言うなよ」
「まだボクそんなこと言ってないよ〜」
キヲンはそう言ってスーパーボールの屋台に視線を向ける。
ナツィは暫くその様子を見ていたが、やがて溜め息をついた。
「仕方ない、1回だけな」
ナツィはそう言いつつ服のポケットからがま口を出すと、キヲンはえ、いいの⁈と目を輝かせる。
「いいの⁈って、お前がやりたそうな顔をしてるからだろ」
ナツィがそうジト目を向けるとキヲンはやった〜!と跳ねて喜んだ。
「終わったらすぐにかすみたちの所へ行くからな」
ナツィはキヲンに500円玉を握らせると、キヲンはうん‼︎と頷いた。
〈華火造物茶会 おわり〉