昼頃に出会った彼女がヴァンピレスと繋がっているかもしれないと言われて暫く。
わたし達はネロと合流してあの少女…穂積を探し始めた。
ネクロマンサーとコマイヌの異能力を組み合わせることで、2人にとってはほとんど知らない人物でも何とか探す事ができた。
「本当にこの上にいるのかな…」
わたしは穂積がいると思しき建物の外付け階段を上りながら呟く。
「ま、ネクロとコマイヌの異能力に狂いはないからな」
大丈夫大丈夫と師郎は笑う。
「そうだと良いんだけど」
わたしは不安げに階段を見上げる。
階段の上にはネクロマンサーとコマイヌが既に上っていた。
「…」
とにかく、今は信じるしかないとわたしは階段を上り続けた。
そうこうしている内にわたし達5人は階段を上り切り、屋上に辿り着いた。
そこには屋上の柵に寄りかかってうつむく長髪の少女がいた。
「おい」
ネクロマンサーが彼女に声をかけると、少女は静かに顔を上げる。
その姿は見覚えのあるものだった。
「あら、ここが分かったのね」
異能力者の皆さん、と少女は微笑む。
その目はネオンパープルに輝いていた。
色の無い空。
看板のネオンサインだけが、虚しく灯りを灯す。
音が消えたかの様な街。
不規則に屋根を叩く音のソロパート。
雨。
降り注ぐ水滴は、街の色彩を洗い流す。
色の消えた街。
その代わり。
洗い流された色彩は、
年中色味の無いアスファルトを染める。
そのアスファルトは、
もっと沢山の音を聴かせてくれる。
淡々と、機械的に物事を繰り返すこの場所にも。
少し小粋な音楽をつけてくれる。
見えなければ、見なければいい。
例えばコンビニで、誰かに渡せるように と
個包装のお菓子を選んだとき
わたしは少し前のわたしより成長している。はず。
「おいちょっとこっちにも当たったぞ!」
「ガノ……お前さァ、普通こういう時の一言目は感謝の言葉じゃねーの? いくら俺らが嫌いだからってさァ」
「あ、うんごめん……助かった」
「まあ良し。ロキ、他も見に行こうぜ」
「…………」
ロキの返事が無いことに気付き、タマモはロキに目をやる。ロキは右の二の腕を左手で揉むように擦っていた。
「どうした、ロキ?」
「ん、別に……もう行こう」
歩き出そうとするロキの腕を掴み、その手に隠れていた場所をタマモが検める。そこには2㎝程度の長さの細い火傷痕があった。
「…………ガノお前さァ……」
深く溜息を吐き、タマモはガノを見下ろした。
「別に『できてねえ奴が偉そうな口叩くな』とか言うつもりは無ェけどよォ……。ロキ、あいつのこと2回くらい蹴っとけ」
「うん」
ロキは立ち上がろうとしていたガノに近付いて蹴り飛ばし、再び倒れ込んだ背中を軽く踏みつけてからタマモの隣に戻った。
「じゃーなーガノ。お疲れ」
「ばいばーい」
2人は倒れたまま呆然としているガノに手を振り、その場を後にした。