「地上における治安についての審議を始める…」
天使、悪魔、人間の3種族は形上の議会によって地上、そして天界を治めている。しかしその裏では天使と悪魔の戦争が続いていた。
「我らは神よりその身を与えられし種族、地上の種族ごときと同じにされては困るな」
「我らは地上を統べる種族、天界の種族にこれ以上荒されたくはないな」
人間はその2種族によって長く虐げられ、地上に作られたエリアの中に閉じ込められていた。しかしそんな歴史に2人の人間が革命を起こす。
「人間に自由を…我らの地上を取り戻す!」
理宇は持っていた2本の棒を地面に放り、ガラスペンを取り出した。輝くインキを無造作に垂らし、形成された大きなインキ溜まりの中に両手を突っ込む。一瞬待って引き抜いた両手には、インキと同様に輝く1双のガントレットが履かれていた。
「これだからバチは駄目なんだ。ちょっとラグができちゃうから。素手なら最速だ…………仕返ししてやる!」
口に溜まった血を吐き捨て、理宇は再びエベルソルに向かった。
敵から繰り出された3本の腕のうち2本を沈み込むように躱し、1本を手の甲で受け流し、空いた片手で顔面を殴りつけた。
続けて側頭を狙うエベルソルの攻撃を後退りながら躱し、再び始まった連撃もガントレットで防ぎ、受け流し躱していく。
エベルソルは連撃を続けていたが、突如その手を止め、再び背中を丸め身体を震わせた。
(! また腕を増やす気か!)
変化が起きる前に、理宇は素早くエベルソルの頭頂を殴り付け、地面に沈める。更にタマモの放った大型光弾2発が、腕型器官1対を吹き飛ばした。
「オーケイこのサイズが有効打な。160までなら上げてやる」
「タマモ先輩! 了解です!」
タマモは大型光弾を生成し、空中に十数発待機させてから射撃を開始した。正確に等間隔で発射しつつ、新たな弾丸を生成する。それを繰り返しながら、エベルソルの腕を重点的に狙い、理宇に向かう攻撃の数を減らしていく。
7旅
先生の葬儀が済んだ翌日。
俺は先生の遺言通り、集落を出た。
誰にも何も言わなかった。
その後、数年間は東方と北方を行ったり来たりしながら、用心棒をして旅を続けた。
17の時、商人のキャラバンを護衛していた。
山賊に襲われ、普段ならなんて事はないが、その日は人数が多過ぎた。
見ただけで約15人。
一人でキャラバンの全員は守れない。
仕方なく俺はキャラバンを逃がし、一人で残る事にした。
翼がほしい
翼を羽ばたかせて舞い
空風で皆の悲しみを癒す
そんな天使になりたい
キミはどうして重苦しい
純白の翼があるのか。
キミはどうしてその純白な衣を
身に付けているのか。
キミはどうして穢れのないような瞳なのか。
"神"などこれほども信じていなかったが。
"神"などむしろ蔑んでいたが。
キミを一目見たときに
怒りを、哀しみを、葛藤を覚えたのは。
キミとぼくとの違いは
それほどないというのに
その差が大いなる隔たりだった。
キミはどうして女性ではないのか
キミはどうして「天使」なのか
どうして、どうして、どうして
ニトとロザリーはとりあえずロマの故郷についての話を続けた。
地球とはかなり距離が離れているが、大体天の川を辿れば近いところまで行けるということ。ロザリーとロマは精霊なので、宇宙空間でも問題なく生きられること。その他にもいろいろなことを話した。
「成程。問題は地球から宇宙へ行く方法だけか」
「ええ…重力にはあまり逆らえないので…」
「ロケットがあれば行けますかね」
「行けると思います」
「じゃあ造りますね」
「えっ」
かくして、ニトは魔術師でありながらロケットを錬金した。
「あら…」
ニトが鍋を混ぜたり変なものを入れたりして生成した小ぶりなロケットを見て、ロザリーは呆然とする。
「魔術師の方…ですよね?」
「ただの魔術師じゃないので」
ニトは爽やかに笑ってみせた。
目を覚ますと、私は知らない部屋の中にいた。どうやら硬い椅子に座らされ、縄と鎖で身動きが取れないよう拘束されているらしい。
「あ、起きました? おはようございます。そんな状態じゃ難しいとは思いますが、どうぞ寛いでもらって」
声の方に目をやると、長い銀髪の青年が長剣の刃の手入れをしていた。
何故こんなことになっているのだろう。起きる前のことを思い返してみても、普段通りの生活を送り、普段と変わらない時間に床に就いた、その記憶しか無い。
状況を整理するために部屋の中を見渡してみると、自分以外にも2人、同じように椅子に拘束されているのが見えた。項垂れているところを見るに、まだ目覚めてはいないのだろう。
「わ……私達をこんな風にして、あなたはいったい何をする気なんですか」
あの青年に、震える声で、それでもできるだけ毅然と、尋ねてみる。
「……そーだそーだー。そっちの羽根持ちならいざ知らず、俺がこんな目に遭わされるような恨み買った覚え無ェよォー」
自分の右側に拘束されている男性が、便乗するように口にした。どうやら意識はあったらしい。
「なァ、“片羽根”?」
その男性が、長髪の青年に言う。よく見ると、青年の腰の辺りから、真っ白な鳥の翼が右側だけ生えていた。
「そーいう『如何にも差別してます』みたいな言い方、良くないと思うなー」
「バァーカ、挑発でンな丁寧に呼ぶわけ無ェだろーが」
「それもそっか。……けど、今回の俺の目当ては、どっちかというとおたくなんですよ」
「マジで? 何それ気色悪りィ」
2人の言い合う声のせいか、最後の1人もようやく目を覚ました。
気づけば1周回ってここに
12編の物語
演劇の様な、独白みたいな
矛盾に塗れたこの日々を
愛せる日が来るように
少しづつ大人になってゆく
私をそっと、見ててほしい。