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逃鷲造物茶会 Act 1

昼下がり、とある小さな喫茶店の店内にて。
カウンターからエプロン姿のコドモがティーセットを載せたお盆を持ち上げる。
そしてそれを持ったまま窓際のテーブルに向かった。
「ご注文の…」
エプロン姿のコドモことかすみがそう言いつつティーセットをテーブルの上に置いた所で、目の前のイスに座る明るい茶髪の少女がこう言った。
「ここ、いい店じゃない」
突然の言葉にかすみはへ?と拍子抜けする。
「内装といい、雰囲気といい、わたしは好きよ」
少女はそう言うが、かすみははぁ、と返すだけだ。
「あらあなた、ここの店員さんなのに良さが分からないって言うの?」
もったいないわね、と少女は溢す。
「何年ここで働いてるの?」
少女に尋ねられ、かすみはふと宙を見上げる。
「えーと…1年半、くらい?」
かすみは首を傾げながら言った。
「ふーん」
結構長いじゃない、と少女はティーカップに紅茶を注ぎながら呟く。
「まぁ、自分はアルバイトじゃなくてマスターのお手伝いみたいなものだから…」
あんまりここの良さとか考えたことなかったなぁ、とかすみは笑う。
「そう」
少女は窓の外を見ながら頷いた。
するとここで店内のカウンターの向こうに座る店主の老人がかすみの名を呼んだ。
はい?とかすみが振り向くと、店主は2階のあの子たちが呼んでる、と店の奥を指さした。
「あ、分かりました〜」
かすみはそう言うと、じゃあ自分はこれでと少女に一礼してカウンターの方に向かった。

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Daemonium Bellum RE:ふぉーるんらぼらとり その⑥

来たる痛みと死に備え、反射的に目を瞑り身体を強張らせる。しかし、肉の潰れるような気持ち悪い音が聞こえるばかりで、恐れていたものはいつまでも襲ってこなかった。疑問に感じおそるおそる目を開くと、私から見て右側、悪魔氏がいた方から伸びてきた鼠色の物体が、青年の長剣を受け止めていた。
「……ッたくよォ…………俺らを『悪魔』と呼んでるのはテメエらだぜ? それをお前、人命救助なんかに使わせやがってよォ……!」
「ようやく出てきたか。それを待っていたんだ。俺の知る限り唯一無二の、『首も心臓も無い悪魔』!」
拘束を易々とすり抜けた鼠色の不定形の物質は、私の前で伸び上がり人型に、あの悪魔氏の姿に戻った。
「なるほどねェ……弱点皆無最強無敵の俺サマをご所望かい。で、その俺をどうするつもりだ?」
「勿論、殺します! あんたを殺せたとなれば、恐れるものはもう無いでしょう?」
「なるほど正論。それじゃ、恐れるものの無くなったテメェは何をするんだ?」
「いや別に……。普通に不可能を可能にする浪漫を追いたいだけですが」
「……そっかー…………。んじゃ、ヒトカスは解放してやれよ。本題は今、テメエの目の前に立ってるぜ?」
「あー、天使のひとの方は気にしない感じです?」
「まあ、うん……天使だし…………」
「了解。それじゃ、本気で殺し合いましょう!」

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いつもが戻らなくても
いつか幸せであるように
笑えるように
泣けるように
愛せるように
いきるように

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少年少女色彩都市・某Edit. Modeling Master Amenonuboko その②

「や、新人くん」
先に待っていた新人くんに挨拶する。新人くんはまだ13歳か14歳程度の細っこい男の子で、濃紺のロングコートを纏っていた。
「ぬぼ子さん、急に手伝いなんか頼んじゃってすいません。今日はよろしくお願いします」
「良いんだよぉそんなに恐縮しなくて。後輩のお世話も私たち先輩の仕事だからね。君も成長したら、自分より後輩の子を助けてあげるんだよ?」
「はい、それじゃあ急ぎましょう。俺が乗り物を用意します」
そう言って、新人くんは素早く空中に何かを描き始めた。流れるような動作で、迷いなくぐいぐいと描き進め、みるみるうちに2頭引きのチャリオットを完成させてしまった。
「ほら、乗ってください」
「うん……動物描くの上手いねぇ」
言いながら、恐る恐るその戦車に乗り込む。初めて乗るチャリオットはなかなかアンバランスで乗り心地が悪かった。もちろん、口にはしないのだけど。
「では、行きますよ!」
新人くんが手綱を振るうと、2頭の馬が駆け出し、チャリオットは空を走り始めた。
「うわぁ! 飛んだ⁉」
「ほら、天高く、って言うでしょう?」
「越ゆるのかー」
そもそも今の季節は春では……? まあ良いや。
彼の駆るチャリオットは彩市上空をすごい速度で飛んでいき、あっという間に目的地へ到着した。
外見上はただのアパート。しかしてその実態は、ほぼ全室に腕利きのアーティストが居住、あるいはアトリエとして利用しているという、彩市民の間ではそこそこ有名な芸術家の集まるアパートだ。
そしてその一室に首を突っ込んでいる、大理石みたいな質感のエベルソルが1体。新人くんに任されているだけあってか、そこまで大きいサイズではないみたい。

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Daemonium Bellum RE:堕ちた明星と狼 Act 1

「この者を堕天の刑に処す‼︎」
「お前のせいであんなことになったんだぞ」
「やっぱり堕ちて当然よねぇ」
「さっさとここから失せろ」
「消えやがれ」
「…」
朝、日がそこそこに昇った頃、森の中の古びた屋敷の片隅の部屋にある寝台で、片翼で紫髪の堕天使が目を覚ます。横を向いて寝ていたその人物は、隣に横になってこちらを見ている1対の翼を持つ金髪の天使と目が合った。
「⁈」
紫髪の堕天使は驚いたように飛び起きる。しかし相手はえへへ〜と笑う。
「おはようぼす〜」
金髪の天使は笑顔で小さく手を振ったので、紫髪の人物は気まずそうな顔をする。
「添い寝は恥ずかしいからやめてと言ったのに」
紫髪の堕天使は呆れたように呟くが、金髪の天使はいいじゃーんと続ける。
「ぼすったらすごくうなされてたみたいだし」
傍にいてあげようかな〜と思って、と金髪の人物は起き上がる。紫髪の堕天使は恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「…うなされてたってことは、やっぱり処刑される時の夢を見てたの?」
金髪の天使がふと真顔に戻って尋ねると、紫髪の堕天使は静かに俯く。
「やっぱり」
金髪の人物はそう呟くと寝台から降りる。
「あの一件はよく分からないよね」
ぼすなら反乱なんて起こしたりしないはずなのに、と金髪の天使は呟く。
「だからボクは何かの手違いだと思ってるんだけど…」
金髪の天使はそう言いながら紫髪の人物の方を振り向く。
「ぼす⁇」
金髪の天使は紫髪の堕天使がぼんやりしていることに気付いて、思わず声をかける。紫髪の堕天使はハッと顔を上げた。

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立ち向かう

穢れるな
この魂

恐れるな
響き渡る虚空

拒まむな
たくさんの愛情

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月の魔術師【8】

翌日。
「うおーー!すげーな!ロケットだー!」
ロマはニトが錬成したロケットにいたく感動したようで、しばらくロケットのまわりをくるくるしていた。

「我ながらすごいのできたな…」
「錬金術は習ってらっしゃったんですか?」
「一応は。師匠にお前のそれは錬金術じゃねぇと怒られましたけど」
「私はそちら方面には疎いのでなんとも言えませんが…すごいと思います」
「それはどうも」

ロザリーは怪我をした足をさすった。
「足、治ったみたいです」
「早いですね」
「ちぎれてたらどうか分かりませんが、ただの傷だったので…」
二人が話しているところに、ロマがとことこやって来た。
「ニトー!はやくいきたいぞー!」
「はいはい…」
そうして、三人と一匹(番犬をしている斑も乗せた)はロケットに乗った。

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忘れぬように、避けないように
壊れぬように、大切に。
頭のどっかで転寝していた
近い昔のあの日を起こして
ちゃんとみんなで話をしよう
ちゃんとみんなで分かち合おう
いつか近い将来に
全員出席できるようにね。