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架空の都市伝説:道を聞く人

日没前の1時間、その道を1人で歩いていると、向こう側から女性が一人歩いてくる。
その女性はすれ違う直前でこちらを呼び止め、ある場所への道を尋ねてくる。その場所に一貫性は無いが、最寄り駅・ショッピングセンター・大型スーパー・図書館など、ランドマークとして分かりやすく、周囲の事をある程度知っていれば案内できるような場所が必ず指定される。
この時、「知らない」「案内できない」など案内を断る旨の答えをすれば、女性は軽く頭を下げてその場を去っていく。
しかし、もし案内する意思を見せてしまった場合、口頭で説明するだけで済ませようとしてはいけない。女性に言いくるめられて結局彼女に同行しながら案内することになり、そうなった者はそのままどこかへ連れ去られてしまうのだ。
ただし、女性に提案されるより早く、こちら側から直接同行しての案内を申し出れば、何事も無く女性を案内して別れることができるという。

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逃鷲造物茶会 Act 5

朝、明るい日差しが辺りを照らす頃。
いつものように起きてきたかすみは何気なく喫茶店の物置の扉を開ける。
「グッドモーニーング」
物置の椅子には見覚えのある茶髪の少女が座って、かすみの方に手を振っていた。
「…えっと」
エマ、さん、ですっけとかすみはぎこちなく言う。
「おはようございます」
かすみが思わずそう返すと、もー固いじゃなーいとエマと呼ばれた少女は笑う。
「もっと適当でいいのよ」
おっはーとかさ、とエマは言うがかすみは何とも言えない顔をしていた。
何しろ昨晩急に押しかけて来たこの人物相手に、どうしたらいいのか分からないのだ。
何とも言えない顔になるのは無理はない。
それに、かすみが外の者と関わることはいつも同じような人が出入りする喫茶店の手伝いと、物置に集まる者たちとの交流くらいである。
実を言えば、かすみは外の人間との関わりに慣れていないのだ。
「かすみ?」
かすみが考えごとをしているような顔をしていたので、思わずエマが声をかける。
かすみはハッとしたように顔を上げた。
「なんでもない」
かすみは横に首を振ると、エマはそうと答える。

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Daemonium Bellum RE:堕ちた明星と狼 Act 5

天使たちと接触したサタンとアモンが街外れから逃げ出してから暫く。
2人は街から離れた森の中を歩いていた。
「ねーどこまで逃げるの〜?」
のんきに尋ねるサタンに対しアモンは仕方ねぇだろと返す。
「アイツらは諦めが悪いからな」
できる限り逃げないと、とアモンは呟く。サタンはふーんと頷いた。
「…ねぇ」
不意にサタンが話しかけたので?とアモンは聞き返す。
「君さ、例の“反乱”の後どうしてたの?」
その言葉にアモンはぴたと足を止める。
「…なぜ今さらそれを」
「いや〜だってぼくと会うの久しぶりじゃん?」
ずっと何してたのかな〜ってとサタンはアモンの前に回り込む。
「…別に」
テメェに話すことはないとアモンはそっぽを向く。
「えーぼくたちちょー仲良しだったじゃーん」
冷たいなぁとサタンは笑うが、アモンは嫌そうな顔をした。
「…テメェに語ることはねぇよ」
アモンはそう言って歩き出す。あーちょっとーとサタンもその後に続く。
「て言うかテメェ今まで何してたんだよ」
あの反乱の後急に俺の前から姿を消しやがってとアモンは呟く。サタンはいやーちょっとねと頭を掻く。
「ぼくあの後天界に連行されちゃってさ」
それで色々審理を受けてたんだよねーとサタンは続ける。
「で、その結果こっちに来たっていう」
「あっそ」
アモンは適当にそう返した。
「…もしかしてぼくがいなくて寂しかった⁇」
サタンの言葉にびくりとアモンは反応する。

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月の魔術師【9】

ロケットが、ぽーんと浮き上がった。正に玩具のような挙動でロケットは飛んで行く。
「おおお…!すげー!」
ロマはぴょこぴょこ跳ねてはしゃいでいる。
「す…すごい精度…」
ロザリーも感動して丸窓から外を眺めた。
「そろそろ宇宙だね」
ニトの呟きに、斑が尻尾を振って応えた。

暫く勢いよく進んでいたロケットは、ふよふよと宇宙を漂い始めた。ロマも最初こそはしゃいでいたが、途中で疲れたのか斑と戯れ始めた。
「…こ、このロケット本当に速いですね…」
「地球から太陽系の外までなら魔法でギリギリテレポートできますし、速度と衝撃の吸収も補正つけたんです」
「できることなら、精霊も魔法を覚えるべきかもしれませんね」

それから二時間、三時間…と時間が経っていった。ロマと斑は遊び疲れで眠り、ロザリーも丸窓に張り付いたまま寝落ちしてしまった。
「…ふわぁあ……」
久しぶりに大量の魔力を消費したニトも眠くなってきた。どうせ着くまでに時間があるし、ニトも眠ることにした。

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Daemonium Bellum RE 〈企画要項〉(再掲)

どうも、企画「Daemonium Bellum RE」の企画者です。
開催期間も折り返し地点に辿り着いたので、ここで企画要項の再掲を行いたいと思います。
という訳で、以下は要項です。

どうも、テトモンよ永遠に!です。
突然ですが企画です。
タイトルは「Daemonium Bellum RE」。
天使と悪魔が人間を巻き込みつつ抗争を繰り広げる世界を皆さんに描いてもらおうという企画になっております。
開催期間は3/1(水)15:00から3/29(金)24:00までです。
参加方法は公序良俗と設定を守った上でタグ「Daemonium Bellum RE」を付ければOK!
作品の形式・個数・長さは問いません。
ちなみに当企画は2022年5月に開催した企画「Daemonium Bellum」の復刻版になります。
あの頃より賑わっている(かもしれない)ポエム掲示板なら盛り上がるかもしれない…!ということで設定をパワーアップさせました。
もし企画「Daemonium Bellum」が気になる方がいたらまとめがあるので探してみてください(宣伝)。

設定はタグ「Daemonium Bellum RE」かぼくのマイページから探してやってください。
ちなみに今回は激ムズ企画で参加者は1人2人になるだろうと思ったら、参加者が自分以外に6人出たのでびっくりしました。
…天使と悪魔って、モチーフにしやすいんですかね?
もちろんここからの参加も歓迎していますので、参加したい方は気軽にご参加ください。
何か質問などあればレスお願いします。
では、皆さんのご参加待ってまーす!

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視える世界を超えて エピソード6:月夜 その⑪

「よく頑張ったね。君、立てるかい?」
しかし種枚が少女に向けた言葉と口調は飽くまで優しいもので、少女はすぐに緊張を解き、自分の身体を見回してから、首を横に振った。
「そうか、なら家まで送ろう。未成年の夜遊びはよろしくないからね」
「……ありがとう、ございます」
少女に背中を向けると、少女は身体を引きずるようにして種枚の肩に縋りついた。
「よし、道案内は頼むよ。おい馬鹿息子、刀の方はお前に任せた」
「いや初対面の子の目の前でその呼び方マジでやめてくださいって……」
2人は少女の指示に従って彼女の自宅に向かう。到着した場所は広大な敷地面積を誇る平屋の日本家屋であった。
「ここです。……もう、大丈夫です。ありがとうございます……」
少女は自分から種枚の背を下り、鎌鼬から受け取った刀に寄りかかりながら、最後に二人に向かって1度頭を下げ、足を引きずって入っていった。

「……しかし、良い子を見つけたな」
それからも街中を駆けては怪異を狩り続ける種枚だったが、ふと思い出したように呟いた。
「良い子って……あの子ですか? 刀の?」
「そう。……あの子は、『金』かな」
「きん? ゴールドですか?」
「いやァ……? キヒヒッ、これからもう少し素敵になるぜ」
次の獲物を求めて再び駆け出した種枚の眼は、既に金色に輝く人外のそれだった。