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逃鷲造物茶会 Act 13

「実は我々、“魔術学会”の者でして…」
このような“人工精霊”を探しているのです、と女は主人に1枚の写真を見せる。
そこには明るい茶髪に白いワンピースの少女が写っていた。
「え…」
かすみは思わず後ずさる。
なぜならその写真に写り込む少女は、かすみがこっそり匿っていたあのエマそのものだったからだ。
「今日、ここにそれらしい人工精霊がいたという情報が入りましたので、我々は直接伺ったのですが…」
ご存知ありませんか?と女は主人に尋ねる。
「あぁ、確か昨日似たような人がお客さんに来ていたような気がしますが…」
今日は来てないよなぁ、と主人は傍にいるかすみの方を見た。
しかし既にそこにはかすみはいなかった。
「あれ?」
主人は思わずポカンとしてしまった。

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厄災どおるtutorial:嘘吐き煌星 その⑤

「……あなたの仕業か」
目だけをサユリに向け、少女は低く言う。
「だとしたら?」
「まず、あなたから」
倒れた体勢のまま、少女がロケットのようにほぼ水平に飛び出した。サユリは再び地面を揺らしたが、空中にいる少女に影響は無く、一瞬のうちに接近した彼女によって、サユリは両足首を切断されてしまった。
「っ!」
既に切断されている右腕を伸ばすが、透明な体内液が飛び散るばかりで、少女を止めることはできない。
更に踵を返した少女が、心臓目掛けて刺突を放ってくる。サユリは倒れ込みながらも身体を大きく反らしながら躱し、心臓の代わりに左の肩の辺りに刀剣が突き刺さる結果となった。
「……捕まえた!」
右腕の肘を刀を握る少女の腕に絡みつけ、残る左手で肩の辺りを掴み、自身の倒れる勢いも利用して引き倒す。
「は、離せ……ぎッ⁉」
サユリの左手から少女の身体に、強烈な振動が一瞬伝わる。全身へのダメージで一瞬意識が飛び、気付いた時にはサユリを下敷きにうつ伏せに倒れ込み、後頭部を呪術師の男性に抑えられていた。
「ぅぁ……」
「悪い子だ……少し大人しく、してもらおうか!」
男性の手から、呪術的エネルギーが直接注ぎ込まれる。少女は一度大きく痙攣し、脱力しきって動かなくなった。

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月の魔術師【10】後編

三人で暫く星をぶらぶらと歩いた。やはり砂漠が永遠と広がっているだけの景色が続いた。
「…ニト、みずがのみたいぞー」
「はいはい」
ロマは退屈で少しうとうとしている。
「殺風景ですね…」
ロザリーは座りこんだ。ニトも座って呟く。
「…魔術には、禁忌のものがいくつかあります」
「え?」
「呪術、蘇生術…とかいろいろあるんですが」
ニトはふぅ、と息を吐いた。
「土地には、思い出があり…蘇らせることもできます」
「それって…」
「生き物は復活できないけれど…自然や建物なら蘇生ができます」
ニトはロマの柔らかい髪を撫でた。
「ロマ様の記憶、戻るでしょうか」
「試してみましょうか」

ニトは掌を切り、地面の砂を一握り持った。その瞬間、風が止む。
「まほうだ!」
ロザリーは目を見開いた。いつの間にか、足元に枯れかけの草が生えている。その草は、じわじわと活気を取り戻し…。
「わぁ……」
あっという間に、砂漠は鮮やかな草木と清らかな水で満たされた。
「綺麗な星だなぁ」
ニトの呟きは、穏やかな風に流された。

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あなたにとっての自動ドアになりたい。

例えば今日、僕が花びらを片付けていること
ささやかな諸々の根回しとか

全部。
知らないままで、大きくなっていってほしい