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鉄路の魔女 〜Megalopolitan Witches. Act 6

一方その頃、ウグイスたちは路地で先程対峙した幻影と戦っていた。
「っ‼︎」
幻影の大きな口から伸びる長い舌を避けつつ、ウグイスはチャクラムを投げつける。チャクラムは幻影に向かって飛んでいったが、長い舌に弾かれる。
「バーミリオン、カナリア!」
ウグイスが声を上げると建物の陰からバーミリオンが槍を持って飛び出し、カナリアはマシンガンの銃口を向ける。カナリアが次々と銃弾を撃つ中バーミリオンは高く飛び上がって槍を幻影の身体に突き立てようとした。しかし長い舌がすぐにバーミリオンにぶち当たり、彼女は近くの建物の壁に衝突した。
「バーミリオン!」
カナリアは思わず立ち上がって彼女に駆け寄ろうとするが、幻影の舌がカナリアの方に伸びてくる。カナリアは思わず硬直するが、そこへ銀色のナイフが飛んできて幻影の舌に突き刺さった。
「${*+[‼︎」
幻影は短く悲鳴を上げて伸ばした舌を元に戻す。カナリアがナイフの飛んできた方を見やると、そこには地下の魔女たちとソラがそれぞれの武器を携えて立っていた。
「みんな!」
カナリアが声を上げると、赤髪の少女ことスカーレットがハーイと手を小さく振る。
「お困りのようね」
あたしたちが助けに来たわ、とスカーレットは笑う。
「私たちは助けを求められたから来ただけだからな」
別にやりたくてやってる訳じゃない、と銀髪の少女ことシルバーはそっぽを向く。その右手には先程幻影に突き刺さったナイフと同じものが握られていた。
「とにかく、ここからはあたしたちが片付けるから」
あなたたちは下がってなさい!とスカーレットは担いでいた赤い鎌を構えて走り出す。シルバー、スカイ、グリーンの3人もそれに続く。そしてソラは姉妹たちの元へ駆け寄った。
幻影も新手の敵に気付いてドスドスと音を立てて魔女たちに近付く。しかし先頭を走るスカーレットは高く飛び上がってそれを避ける。

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眠りとは

いわゆる一般的な睡眠を指すのではない。
感情や思考、果ては意識すら関係ない。
ただ深海て沈みゆくことを指すのだ。

おやすみ、しっかり寝ておくように。

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崩壊世界見聞録 3

野営の準備が整うと、
辺りは丁度夕焼け色に染まる頃だった。
薪探しに出て行ったエミィを待ちながら、
カナは写真を取り出した。
全体的に煤けて端が焦げ、色の褪せた写真。
そこには、どこかで見覚えのある幼女と夫婦らしき男女が写っていた。
男の方は割と綺麗に残っているが、女の方は、右側が焦げ、顔の辺りも煤けて見えなくなっている。
一般的に、ここに写っているのは、彼女の家族だと思うだろう。
しかし、この写真にはカナは写っていない。

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暴精造物茶会 Act 11

「そう、怪談本でよくあるような…」
「そんなこと言わないの」
タイサンボクの言葉を中紅が咎める。
「そもそも、お化けなんている訳ないじゃない」
基本的に一般人がお化けや幽霊だと認識しているのは精霊の類よ、と中紅は腕を組む。
「だからいる訳…」
「え、ベニってこういうの苦手なの⁇」
「うっ」
キヲンの質問に中紅は驚いたように飛び上がる。
「べ、べべべべ別に、わたしは幽霊が怖い訳ないのよ!」
ただこういう不気味な場所が苦手ってだけで…と中紅はそっぽを向く。
「えー怖いんだ〜」
キヲンはそう言って笑い、中紅は恥ずかしそうにしていた。
…とここでクロミスがあ、と声を上げる。
後の3人がクロミスの方を見ると、クロミスがいかにも怪しげなお札が貼られた扉を懐中電灯で照らしていた。
「なにコレ」
キヲンが近付くと中紅がちょっと待ってとキヲンを止める。
キヲンは?と振り向く。
「あれ…結界の術式が書かれてる」
中に何かあるわね、と中紅が真剣な顔で言う。

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私のこと、

なんだと思ってるの?って聞けたらいいのに
なんとも思ってないって答えてくれたらいいのに

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観葉生物専門店

あら、いらっしゃいませ。なにかお探しで?
…ああ、雨宿りにいらしたのね。最近は天気がころころ変わって大変ですねぇ。風邪引くといけません、どうぞ。

ここですか?観葉生物の店ですよ。…え?観葉生物とはなにかって?あれですよ、ほら…ご覧くださいな。あの子は向日葵の茎に大きなひよこが咲くタイプなんです。まだ蕾なので卵状態ですが…。

…ご想像と違いましたか?いえ、なんだか微妙そうな表情をなさっていらっしゃったので…失礼いたしました。

あら、この子がお気に召しましたか?…ああ、別に気に入ったわけではないのですね。この子は文字通り金魚草ですよ。ええ、金魚が咲いているでしょう?…色に驚かれましたか。この金魚草はですね、見ている人の好きな色を映し出すのです。まあ光の当たり方によって、普通の金魚にはない色に輝きますから、驚かれるのも無理はありませんね。高価ですよ、この子。

そろそろ雨上がりそうですね。まだご覧になりますか?

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視える世界を超えて エピソード9:五行  その⑩

「クサビラさーん、はいはいしつもーん」
白神さんが手を挙げた。
「何だシラカミメイ」
「結成したのは良いけど、この集まりって何か名前とかあったりする?」
「よくぞ聞いてくれた。名前なら考えてあるぜ」
「あ、あるんだー」
「ああ。その名も〈五行会〉」
犬神ちゃんが拍手し、他の人たちも何となくといった感じでそれに続く。
「五行……陰陽五行説のか」
平坂さんが尋ねる。
「そうそれ。土行の犬神ちゃんだろ?」
言いながら、種枚さんは犬神ちゃんを指差す。そこから隣に、隣にと指差す相手を変えながら言葉を続ける。
「金行の青葉ちゃん、水行の潜龍の、火行の私に、木行のシラカミ」
「おい待て俺は名前だけか」
「雷って木行なんだ……」
納得していないのは平坂さんと白神さん。それと、
「え、嘘、俺はのけ者ッスか師匠⁉」
鎌鼬くん。
「あァ? お前を『上』に置いておけるわけ無エだろうが。私に殴られなくても正気を保てるようになってから文句言いやがれ。お前はシラカミの下に就け」
「師匠の下ですらなく⁉」
「お前にガチの妖怪の監視任せてやるってんだよ」
「あ、そーいう……」