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暴精造物茶会 Act 25

「⁈」
怪物が攻撃の飛んできた方を見ると、地上で黒髪のコドモことナツィが黒い歪んだような刃を持つ短剣を構えていた。
「…行かせない」
ナツィがそう呟くと、屋根の上の怪物は唸り声を上げながら地上に向かって飛び降りる。
ナツィは短剣を芝生に投げ捨てると、蝶が象られた大鎌をどこからともなく出して構えた。
そして怪物が目の前まで迫った時、ナツィは大鎌で相手を袈裟斬りにした。
「…」
怪物は悲鳴を上げることなく足元から崩れて落ちると、音もなく消滅し始めた。
ナツィは黙ってその様子を見つめていた。
「お見事」
不意にそんな声が聞こえてきたのでナツィが顔を上げると、乾いた拍手をしながらピスケスがナツィの元へ歩み寄ってきていた。
しかしナツィは別にとそっぽを向く。
「お前らの援護のお陰だ」
俺はそこまでやってないとナツィは呟く。
「あら、褒めてくれるの⁇」
ピスケスが笑顔で首を傾げると、ナツィはうぐっと飛び上がった。
「べべべべべ別に俺はそういう意図で言ってないから‼︎」
俺はテメェのことが嫌いだし!とナツィは声を上げる。
ピスケスはうふふふと笑った。

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月になりたい

月の光はどんな味だろう
と ふと思った


きっと甘くて芳ばしい、それでいてかすかによそよそしいような
風味


人気者の彼は誰もいない教室でひとり、黒板を消していた
あの血管の浮き出た腕で
あの笑顔の裏のため息で


彼はメロンソーダと月の光、どちらを選ぶのだろう



ふと青空を見やると昼の月が私を照らす
半月だった。

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日々鍛錬守護者倶楽部 その③

「で、タツタちゃん。何飲む?」
自動販売機の前でサホに尋ねられ、タツタは無言でボタンの1つに指を置いた。
「アイスココアね、りょーかい」
サホが投入口に1枚ずつ小銭を入れ、ボタンが光った瞬間にタツタが押す。
「ごちそーさまですサホさんや」
「うん、まあ負けたからねぇ……」
サホ自身も缶ジュースを購入し、近くに設置されていたベンチに並んで座って一息つく。
2人が飲み物を飲んでいると、離れた場所から爆発音とガラスの割れる音が聞こえてきた。
「敵⁉ 学校の中だよね今の⁉」
「落ち着けサホ」
いつの間にか変身していたタツタが、立ち上がろうとしたサホの肩を掴んで止める。
「〈See Thorough〉」
タツタが空いた片手の上に、霊体の眼球を生成し、音のした方へ飛ばす。壁と天井をすり抜けて飛んでいったそれは、数秒後引き返してきた。
「行くよサホ。怪物だ」
「う、うん!」
サホも変身し、廊下を駆ける。
「サホ、私は直線で行くから」
「え? 了解」
タツタは壁に足を掛け、力を込める。
「〈Walk Through〉」
霊体化した肉体がその壁をすり抜けた。そのまま重力すら無視して、音源の方向へ建材をすり抜けながら一直線で移動する。
最後の壁をすり抜ける直前、一時停止して再び霊体の眼球を飛ばす。その眼球は壁の向こうで暴れる、体長2mほどの怪物を映した。教室の隅には、まだ帰っていない生徒数人が縮こまって震えている。

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回復魔法のご利用は適切に_3

この学校、体育祭もなければ合唱コンクールもないらしい。シオンは落胆した。
「新学期始まって初のイベントがテストなんて楽しくないよぉ」
シオンは配布された種を見ながらぼやく。
「意外と面白いですわよ?」
魔力テスト。毎回異なる課題が出る。今回は特殊な種を一人一つ配布し、魔力を流してその種を変化させるというものだ。魔力量と変化後の物体のサイズは比例し、魔力コントロールが上手ければ複雑なつくりのものに変化する。
「…リサちゃんがやるの見てていい?」
「緊張しますわ〜」
エリザベスの手の中で種が徐々に変化を見せる。種は一度溶け、再形成し…
「こ…これは…」
「なんてこと…これは、コンロ!!」
掌サイズのコンロができた。
「すごいね!可愛い〜!私もできるかな…」
シオンも種に魔力を流してみる。種は溶けず、外の殻が割れ…
「え?なんか芽出てる」
「あらまあ…」
大輪の透明な花が咲いた。