迷い込んだスパイダー
窓の外を眺める
自由な空に憧れた
眩しすぎる太陽が
今はただ恋しい
「こんな部外者の私がいて迷惑じゃないかしら…?」
「迷惑じゃないと思いますよ」
ついて行く位なら…とわたしが言いかけた所で、ネロはいやいやいやと突っ込む。
「何で見ず知らずの人を連れていくハメになるんだよ!」
おい、とネロはわたしを睨む。
耀平はその隣でうんうんとうなずく。
「べ、別に良いかなって…」
「良くない」
わたしの言葉に対しネロは口を尖らせる。
しかしネロは少女に目を向けた後、溜め息をついた。
「…仕方ない、ついてきてもいい」
お前、とネロは少女に目を向ける。
少女は本当ですか?と聞き、ネロはあぁと答えた。
「ありがとうございます!」
少女は笑顔でそう言った。
立ち上がろうとする怪物を前に、サホはその場でスタッフを振り回し始めた。その軌道上には闇を凝縮したようなラインが残存し、空間を少しずつ侵食するように広がっていく。やがて直径約10mの半球状に暗闇が広がり、タツタはその闇に溶け込むように姿を消した。
(サホの生み出した“エフェクト”……暗闇と、私の魔法で操る“霊”は相性が良い。この霊障は今、闇に溶けている)
無数の霊体腕が、怪物を“空間上”に“縫い留める”。
「お前の『魂』を掴んだ。この“霊体”と同様に、『障られた』お前もまた、闇と一体化する。そして……」
タツタは素早く闇の中を滑るように移動して、サホの背後に着地した。同時に、サホの振り上げていたスタッフの先端を飾る宝石が光を放ち始める。
「『闇』を切り裂く光の一閃」
振り下ろされて生じた光の軌跡が、一筋の斬撃として空間を占める暗闇を両断し、吹き飛ばす。一瞬遅れて、怪物の残骸が無数の肉片となってその場に降り注いだ。
「…………いやァ……決まったね」
タツタがサホに声を掛ける。
「うん。実践は初めてだったけど……上手く決まって良かったよ…………」
サホも額の冷や汗を拭いながら答え、肉片を回収するタツタの霊体腕に近付く。
「……バラバラだねぇ」
「うん、バラバラだ」
「タツタちゃんが闇から抜け出したタイミングに合わせて斬らないと、タツタちゃんもこうなるってことだよね?」
「ま……そうなるね。スリル満点だ」
「こわぁ……。真っ暗だから、私からはタツタちゃんがどんな状態か見えないんだよ?」
「ダイジョブダイジョブ。何年一緒に戦ってきたと思ってるの。私らの息の合い方なら失敗確率0パーだよォ」
シオンの言葉は突拍子もなかったが、エリザベスは何も言わずにそれを信じた。
「シオンさん、ご存知かしら。魔法には射程距離がありますの」
「え、なに?射程距離って?」
「この手の魔法は、いえ、例外もあるのだけど…まあまず使用者はそんなに遠くにいないはず。射程距離の短い、パワー振りの魔法と見ましたわ」
「すごいねリサちゃん、そんなことわかっちゃうんだ!」
「ふふ、光栄ですわ!って、そんなこと言っている場合じゃありませんのよ!?水の速度自体は大した速さではありませんけれど、蛇口という蛇口が開いて水かさが増してますわ!」
どばどばと音がして走る二人を水が追ってくる。
「ああ〜…うーん…どうしよう、この先の水道も開いちゃってるのかな…」
「はあ…はぁ…ま、まさか水から逃げる日が来ようとは…速いですわ…水って恐ろしいのね…」
シオンは既に息切れしているエリザベスをおんぶして職員室へ走った。
7月7日以外にも 短冊に願いを書けば叶うのかな
1日だけすがるのは あまりにも虚しすぎるから