「あま音さん?」
わたしが思わず声をかけてもあま音さんは反応しない。
「…何、これ」
私は…とただあま音さんは何かを呟くばかりだ。
「あの、大丈夫ですか?」
あま音さ、とわたしが話しかけようとした時、何ですの⁇と後ろから声が聞こえた。
「茶番はおやめにしてくださる?」
ヴァンピレスの言葉にあなた…とわたしは語気を強める。
「あま音さんは、あま音さんは…!」
わたしがそう言いかけた時、不意にサヤカちゃんとあま音さんのしっかりとした声が聞こえた。
わたしが振り向くと、あま音さんはよろよろと立ち上がっていた。
「あま音、さん?」
わたしが驚きつつ尋ねると、あま音さんはゆっくりと顔を上げた。
その目は、薄い緑色に輝いていた。
「…思い出した」
彼女はポツリと呟く。
「私が何者であるか、何で記憶をなくしたのか」
全部、全部と彼女は言いながらヴァンピレスに近付く。
「うぉああああ!?回復してる!」
素っ頓狂な声を上げてシオンはとことこ走り出す。下の階は水がたまっている。
「もうダイナミックに出るしかないね!」
「えっ?」
核も水も追ってくる状況で、シオンは悠長(?)にも窓を割り始めた。
「な、何してらっしゃるの…?」
「リサちゃん、窓枠に頭とかぶつけないでね」
「は、はい…?」
「ちょっとさ、賭けになるんだけど…」
そう言いながらシオンは、ガラスの割れた窓枠に腰掛けた。
「ここから飛び降りて、その瞬間にさっき割った窓を戻すの」
「戻す…?」
「私の能力って『回復』だけど、苗に使えば『成長』させられるし、偏頭痛なら『元通り』にできるからさ。もしかしたら物にも『元通り』が使えるんじゃないかなって」
そう言いながら、水が目前まで迫ったところで窓枠から落ちるように飛び降りた。
「きゃあぁぁあああ!」