「記憶を消すって言ったって、貴女の記憶さえ奪ってしまえばわらわの勝ちよ!」
この…とヴァンピレスは白い鞭を出しながら言いかけるが、不意に彼女の後ろからおい!と聞き覚えのある声が聞こえた。
ヴァンピレスが振り向くと、そこにはネクロマンサー達が立っていた。
「貴女‼」
わらわの分身で足止めしたはずじゃ…とヴァンピレスは驚く。
ネクロマンサーはは?と首を傾げる。
「アンタの分身なんざさっさと倒したよ」
具象体の刃が当たったら消えたから、まさかと思ってコマイヌの力も借りて探したんだと隣に立つコマイヌにちらと目を向けた。
「そしたらまさかアンタが追い詰められてるなんて」
良い気味だなぁとネクロマンサーはにやける。
ヴァンピレスは何よ!と言い返す。
「明らかに異能力の存在を忘れている異能力者の異能力を奪おうと近付いたら、まさか思い出すなんて思ってもみなかったのよ⁈」
仕方ないじゃない‼とヴァンピレスは赤くなる。
「もういい‼」
帰るわ!と彼女はわたし達の方を向くとパッと姿を消した。
そしてわたしの真横を走っていくような足音だけが聞こえた。
だから、かかって来いよ。
争えよ。戦えよ。競えよ。
何スカしてんだ。斜に構えてんじゃねえぞ。
自分が上のつもりか。謙遜して下のフリか。
競争無しに決まるワケねえだろ。
おい。
そっちが吹っ掛けた喧嘩だろうが。こっちは準備できてんだよ。
相身互いにきっかり対等。それが敬意ってモンだろ。
おい。
逃げんな。
人ひとり侮辱しといてそんなん許されると思ってんのか。
なあ。
人格ひとつ否定しといて、逃げられるワケねえだろうが。
もう殺し合うしかねえぞ。
『よしオーケイ、そんじゃァ早速本題に入らせてもらうぜェ』
「あ、あの、一つ良いですか?」
『ア? 何でェあと周りに人の姿が無い場所で大声で話すのはオススメしないぜ』
「え、あ、はい……」
ヤツが声を潜める。よしよしと頷き、話を再開しようとして、ヤツの方からこっちに問いかけてきやがった。
「それで、さっきの質問なんですけど。あの、あなたは一体……?」
『アァン? ンなこたァどうでも良いんだけどよォ……まーいーや。オイラのこたァ小悪魔とでも呼びやがれィ』
「あ、はい……え、あ、悪魔?」
『ソソ、悪魔タン。オイラのビジュアルがテメエらでいうところの如何にも悪魔でヨ。まァテメエらが想像するほど恐ろしい代物でもねーから、気楽に付き合おうぜ?』
「は、はい……」
『そんじゃ、自己紹介が終わったところで本題に入るか。あァ、ソッチの名乗りは要らねーゼ? オイラは小悪魔だからナ、情報ツウなんだヨ』
「そ、そうなんですね……」
ヤツの戸惑っているサマは少し愉快だったが、いい加減本題に入らねェとオイラの身体にも悪い。ここは敢えて、使い古された伝統的文句で攻めさせてもらおうか。
『なァ嬢、お前さん、“力”が欲しくないか?』
月の終わりがやってきて
ぼくたちは満月のことを思い出した
そして外に行こうっていう
散歩して街をさまよってしまおう
無駄なことがたくさんあって
そのひとつひとつが
以外と大切なことなんだって
ふたりなら信じられることも
この世にはまだあるんだろ
風が気持ちよすぎるときは
寝れないままでいいんだと思うよ
だからバチがあたっても
ツケがまわってきても
日記を書きながら 朝を待つんだ