春、暖かい時期。
気候がぽかぽかしてくると、不思議と外で遊びたくなるものだ。
ここ暫く、おれは外で友達と遊んでいる事がすっかり増えた。
クラス替えをして仲の良い奴が増えたからかもしれないが、ここ最近の気候もあるのかもしれない。
平日はもちろんの事、休日も友達と外出している事が多かった。
…と言っても、行き先はいつもショッピングモールである。
何せこの街は微妙に田舎なのだ。
遊べる場所が限られている。
だからいつも行き先がショッピングモールか寿々谷公園になってしまうのだ。
でも仲の良い友達と遊ぶのは楽しいから、それでも良かった。
そういう訳で、今日もおれはショッピングモールで友達たちと遊んでいた。
いつも通りゲームセンターやフードコートで駄弁る。
いつもと変わらない、おれ達の日常だ。
「なぁ、ちょっとジュース買いに行こうぜ」
ふとゲームセンターで遊んでいるおれが提案すると、仲間達もそうだなとうなずく。
「じゃ、行こーぜ」
おれがそう言うと、おれ達はゲームセンター近くの自販機へと向かった。
そこには既に何人か人が並んでいる。
「潜龍さん? 何をしているんですか?」
短刀の刃を掴み、青葉が低い声で尋ねる。
「……こいつの異能は危険だ。その根源たる十指を、切断する」
平坂は平然と答えた。
「……そうですか。なら、私の手諸共、斬ってみますか?」
「……離せ」
「離しません」
平坂が短刀に込める力を強め、それと同時に青葉の握る力も強まる。
「こいつの遣う霊障によって、既に人が死んでいる。こいつの異能は封じられなければならない」
「だとしても、私はその手段を許しません」
青葉の掌と刃の隙間から、血が滲み出る。
「……ほう。ならば、何か他の手段があるとでも? こいつの力を、確実に封印できる手立てが」
「はい。『私達』が手段です」
翌日。
少女の手を引いて街中を歩く青葉の前に、種枚が現れた。
「あ、クサビラさん。ちょうど探してたところだったんですよ」
「そりゃちょうど良かった。で、その娘は何者だい?」
少女に顔をずい、と寄せながら、種枚が青葉に尋ねる。
「えっと、最近悪霊について騒ぎが起きていたことについては、御存じで?」
「そりゃあ、ここいらで起きる怪異絡みの出来事に関しちゃ大体把握はしてるがね」
「その犯人です」
「……へェ? お前、何て名だい?」
種枚に臆する事無く睨み返しながら、少女は答えた。
「榛名千ユリ(ハルナ・チユリ)。霊障遣い」