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無銘造物再誕 Act 11

「だぁれ?」
青髪のコドモはその質問にふふふと笑ってから答える。
「私はピスケス」
通りすがりの人工精霊よと名乗った相手に、金髪のコドモは不思議そうな顔をする。
「ぴすけす⁇」
「そうよ」
“お母様”に付けてもらったのとピスケスは続ける。
「あなたは?」
ピスケスに聞かれて、金髪のコドモはボク?と自らを指さす。
「ボクまだ名前付けてもらってないよ」
その返答にピスケスはあらと驚く。
「まだ名前を付けてもらってないの?」
「うん」
寧依があとでって言うからと金髪のコドモが言うと、そうなのとピスケスは返す。
「ヒドいものねぇ」
せっかく自分が作った人工精霊に名前を付けないなんて、とピスケスは口に手を当てた。
「…ねぇピスケス」
不意に金髪のコドモが話しかけてきたので、ピスケスは相手の方を見やる。
金髪のコドモはそのまま続けた。

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五行怪異世巡『覚』 その①

「種枚さんのォー、五行会・山狩りたァーいむ」
「わぁーぱちぱちぱち」
種枚さんと白神さんの和やかな挨拶。
「……ところで、1つ質問良いです?」
「ん? どしたの千葉さん」
「なんで自分もこの場にいるんですか」
種枚さん曰く、今日はこの山で何か妖怪を捕まえるらしい。それで白神さんにも助力をお願いしたいと、そこまではまだ分かる。しかし、自分はただの『霊が見えるだけの人間』だ。戦力にはなりようが無い。いても足手まといになるだけだと思うのだが……。
「え、だってぇ……クサビラさんと二人っきりになるの怖くって……」
白神さんがすり寄ってくる。
「……いやまぁ、それは仕方ないか…………」
「ッつーわけで、チバさんよォ。お前にも同行してもらうわけだよ。まァ安心しなって、私がいる。ついでにシラカミメイもいる。危険なんか無いさね」
「いやまぁ、はい。そこについては別に心配してはいないんですけど…………あ、ところで今日の山狩りって何を狙ってるんですか?」
「ン?」
種枚さんの口角がニタリと吊り上がる。
「覚」
彼女はそう短く答えた。

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御狐神様 キャラクター

・御狐神様(オコミ=サマ)
年齢:外見年齢20歳(実年齢は20歳)  性別:外見上は女  身長:165㎝
とある地方の村落で信仰されていた神様。正確には信仰によって生み出された存在。外見は狐の耳と尻尾が生えた和装の女性。艶やかな色素の薄い茶色の長髪をしている。
信仰心から生まれたために神様という自覚があるので、人間と遭遇した際は努めて尊大な態度で接する。実際の性格はかなり素朴でビビリの小心者。御友神殿(後述)とネズミの天ぷらや果物を食べている時が一番幸せを感じる。果物の好みは甘くて柔らかい果肉のものだが、食肉の好みは小骨の割合が高いネズミの尻尾や小鳥の脚など。
ちなみに料理は結構出来る方。サバイバルも結構出来る方。一緒にキャンプとかしたら滅茶苦茶楽しそう。
神徳は特に無いが、一応神様なので霊感はあるし、大抵の生物や怪異存在は神威でビビらせて動きを止めることができる。何なら弱個体の霊体は神威で祓える。

・御友神殿(ゴユウジン=ドノ)
年齢:50歳  性別:メス  体長:50㎝くらい
オコミ様の友達。お社の中に繋がれているキタキツネ。その正体は御狐神様の本体というか正体。この『ただのキツネ』が祀り上げられて溜まりに溜まった信仰心や畏敬の念が形になったのがオコミ様。オコミ様はお社に一緒に祀られているだけの無関係の別個体だと思っているが、何なら実質的な親まである。
割と年食っているうえ幽閉のストレスも溜まっているので元気が無くて、普段はお社の隅っこで丸くなっている。オコミ様のとってきたネズミや小鳥や果物を食べるのが好き。骨と肉のバランスが良い小動物と、少し酸味のある瑞々しく柔らかい果物が好み。愚かな人間どもは仕留めるのが面倒な生きた鶏とか食べにくい人間の生贄とかばっかり押し付けてくるので嫌い。
元々、かつて豪雨で村の近くの山が土砂崩れを起こした際に、運よく村を避けてくれたのを見に行った村人が、土砂や倒木の隙間に上手い事収まっていて生き残っていた子ギツネを拾って来てそのまま神様に仕立て上げたという出自。
年齢からも分かるように、大量の信仰心を浴びたことで神格化しており、既にただのキツネではない。ただのご長寿キツネである。

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cross over#5

母さん、と心の中で呟いた。無機質なタッチパネルをひと通り流しながら見る。1番安いホワイトソースグラタンを選んだ。自分は心にわだかまりを感じる必要なんてないのだ。画面に顔が写った、働き過ぎのせいか血色の悪いロボットが運んでくる。ロボットはやけどしなかったのか心配になる容器の熱さである。膜を張ったソースにスプーンを差し込む。鶏肉とマカロニが入ったシンプルなグラタンは懐かしさを覚えさせた。猫舌が1つの特徴であるトタはグラタンとともに運ばれてきた水を一気に飲み干した。昨日治ったばかりの舌にやけどを重ねる。気に留めず、残りのグラタンもかき込んだ。今時珍しい紙の袋に入った割り箸を取り出し、袋の余白の部分を探す。アンケート用紙と書かれた紙っきれと同じケースに入れてあるペンを取り出す。ナップサックのひもに留めていた帽子。快感と言える音を立てて外れた。帽子を被って、空より海に近い青色の長財布を取り出した。軽食にはならない食後の口直しとしてお菓子が並んだお会計台へ向かう。それなりに繁盛しているようで2組の客が案内されるのを待っていた。目の前には規則内でおしゃれを楽しんでいることをアピールポイントにできそうな若い人と席へ案内した人が立っている。
「俺も俺で頑張ってるから。」
目の下に隈ができている人を前にして自分は何を頑張れているのか分からなかった。だから、お金を置いてすぐにお店を飛び出していた。トタが選んだ窓際にある2人掛けの席で箸の紙袋が、おいしかったです、という言葉を残していた。