「まぁそんなことは元より」
早く言ったら?とピスケスは寧依を促す。
寧依はそうだねと言って自らに抱きつく金髪のコドモの目を見た。
「…“キヲン”」
あなたの名前はキヲン、と寧依は金髪のコドモに言う。
金髪のコドモは寧依から腕を離し、目をぱちくりさせた。
「きをん?」
「うん」
寧依は静かに頷く。
「図書館にあった植物図鑑に、そういう花の名前が載っていてね」
そこから引っ張ってきたの、と寧依は金髪のコドモの頭を撫でた。
「…」
金髪のコドモは暫くポカンとしていたが、やがて寧依に再度抱きついた。
「嬉しい‼︎」
急にまた抱きつかれて寧依は一瞬驚く。
「ボク寧依が付けてくれる名前ならなんでも嬉しいよ!」
ありがと!と金髪のコドモことキヲンは飛び跳ねる。
寧依は少しだけ微笑んでまたキヲンの頭を撫でた。
〈無銘造物再誕 おわり〉
人間と目が合って、琥珀は唸った。背中から生える触手のようなものが琥珀の首根っこを引っ掛けて持ち上げる。…よく見るとその触手のようなものは虫の足だということが分かった。
『…蜘蛛か?』
人間の背中にはでかい蜘蛛がいた。背中と蜘蛛は白っぽい糸で繋がっているらしい。
琥珀はびっくりして大きな蜘蛛の足に噛み付いて抵抗する。
「あれ…?子供じゃない…」
人間は気にしていない。背中の蜘蛛は、痛かったのか足を引っ込める。
琥珀は脱兎の如き勢いで林檎の滑っていった方向へ急いだ。
『あんな大きさの蜘蛛がいてたまるか…』