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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑤

ロノミアが斬馬刀を振り上げたその時。
「お前ッ! 何をしている!」
背後からかけられた怒声が、彼女の攻撃を引き留めた。
「…………へェ? この領域内で、自由に動けるヤツがいるとは思わなかった」
ロノミアが振り返ると、数m先に軍服風の衣装に身を包んだ魔法少女が立っていた。
「お前がここで一番強いヤツか? それなら朗報だ。『私を倒せば、この学園の異常は解決する』」
ロノミアの言葉に、魔法少女は眉を顰めた。
「……私より強い魔法少女なら、この学園に山ほどいる。私はこの甜花学園の生徒会長、ササキア・カロンダ。皆の信頼に報いるため、お前は必ず倒す!」
「やってみろよ」
ロノミアは“破城”を消し、代わりに一振りの日本刀を生成した。
「“幽鱗”、やるぞ」
身体強化による高速移動で距離を詰め、斬りつける。ササキアは大盾を生成し、それを受け止めた。金属製の硬質な防御に超高速で打ち付けられたことで、刀身に亀裂が走る。
「ははっ! 上手く防ぐじゃんか!」
「この程度の速度で、私を破ろうとしていたのか?」
「いやァ? ……けど、困ったなァ……刀にヒビが入っちまった」
ロノミアが“幽鱗”を掲げると、刀身の罅が全体に広がり、パリンと音を立てて割れてしまった。そして、その下から無傷の刀身が新たに現れる。
(……刀身の損傷を修復した? そういう魔法か)
ササキアが盾を構えると、ロノミアは“幽鱗”を消滅させた。
(何故消した? 損傷は修復できるはず……)
一瞬の思考の後、ササキアは口を開く。
「……今の刀、『修復』の回数は有限なんだな?」
「だったら何だ? どうせ『刀』は他にもある。“チゴモリ”、“ヒナギク”」
ロノミアが新たに、刀身の赤い二振りの日本刀を生成する。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.キリン ③

「何、なんか不都合な事でもある?」
「いや、そうでもないんだけどさ」
「えー、じゃーなんでそんな顔するのさ~」
おーいーとネロは師郎をつつく。
師郎はちょっとよせってとショッピングモールの通路の真ん中へ後ずさった。
その時だった。
通路の真ん中に出た師郎と、通路を走っていた誰かがぶつかったのだ。
「⁈」
師郎は倒れることがなかったが、彼にぶつかった小柄な少年はその場に尻もちをついてしまった。
「師郎!」
大丈夫か?と耀平が声を上げながら近付き、ネロや黎、わたしも彼に駆け寄る。
師郎はあー平気平気と頭をかくが、師郎とぶつかった少年はへたり込んだまま何かにおびえたように震えていた。
それに気付いた師郎はあ、お前…と近寄ろうとする。
しかし少年は師郎の方を見ると、あ、わわ…と後ずさった。
「だ、大丈夫か、おま」
「わーっ‼」
心配する師郎をよそに、少年は急に頭を抱えて叫び出した。
わたし達は思わず驚いて動きを止める。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その④

落下しながらビルの外壁を蹴り、ロノミアは一気にアンテレアの結界領域内に飛び込む。同時に、メディウムに封じられた結界術の効果で自身を取り囲む半径1m程度の小さな結界を展開するのと同時に、敷地内の地面に着地した。
「さて……もう始まってっかな? あいつらの魔法が発動しちまうと、どうしようも無いからな……」

ロノミアが飛び降りた直後、ボンビクスは固有魔法を発動していた。
ボンビクスの魔法は、『糸による拘束』。肉眼で捉えられないほど細い、透明な糸を展開し、対象を拘束するものである。
本来、ボンビクスの生成する細糸はその直径故に極めて耐久性に乏しく、出力も不安定なため、実用に足るものではない。
しかし、メディウムに設定した魔法によって固有魔法を強化することで、糸自体の強度を飛躍的に増強すると同時に、その糸が『捕える』対象を概念的なものにまで拡大する。
彼女の放つ『糸』は、その特性を最大限に強化したことで、不安定さも数倍に上昇したのと引き換えに、時空すら絡め取り縛めることが可能となったのだ。
しかし、魔法効果の不安定性自体は据え置きどころか更に悪化しており、ボンビクス一人では自身の強さを発揮できないという、致命的な欠点がある。
それを補うのが、双子の妹であるアンテレア・ヤママイの固有魔法である。彼女の魔法で円形に展開される結界は、領域内において作用している魔法を強化し、更に安定させる。範囲内にさえいれば例外なく効果が適用されるため、味方以外を強化してしまうリスクもある。
しかし、ボンビクスの糸は『時空すら縛める』。領域内にボンビクスの魔法効果が存在する場合、全ての存在及び概念は、安定化しリスクの消滅した拘束糸によって自由を喪失するのだ。

ロノミアが展開した結界内は『双子の領域』から独立した空間となるため、拘束糸は安定性を失う。唯一領域内で安全に活動できるロノミアは、悠然と無警戒に校舎に近付き、魔法を発動し、手の中に全長3m超の斬馬刀を出現させた。
「キッヒッヒ……やるぞォ“破城”。犯行予告のお陰で『守り』は固めてるだろうからな。お前が役に立つはずだ」

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諦めないことが素敵だとか
信じ続けることが大切だとか
そんなことが言いたいのではなくて、

諦めたなら、その決断に後悔しないための努力を。
信じられなくなった日には少し立ち止まる勇気を。

それだけでもいい

自分に絶望するよりも、
自分で夢を見ていたいと思った


何度も悩んで選んだこの道を、正解にするための4年間に。