わたし達が不思議な事を言う少年と遭遇してから暫く。
わたし達はショッピングモールを出て寿々谷駅近くの商店街へ向かい、裏路地に入っていく。
師郎に腕を引かれるあの少年は、度々師郎にどこへ行くんですか?と尋ねていたが彼はまぁ黙ってついて来なさんなと言うばかりだ。
わたし達ですら師郎の意図が掴めないまま、わたし達は裏路地を進んでいた。
「着いたぞ」
やがて少年を連れた師郎が立ち止まって言ったので、わたし、ネロ、耀平、黎は足を止める。
「ここは…」
ホオジロ商店?と少年は目の前の建物の看板を見上げて呟く。
師郎はそうだなと頷いた。
「ここは俺達の溜まり場…駄菓子屋だ」
「はぁ」
少年はポカンとする。
「…今、どうしてこんな所にと思っただろ」
「ふぇっ⁈」
師郎の振り向きざまの発言に、少年は飛び跳ねる。
「……テンちゃん、まずい」
ビルの屋上で、ボンビクスが呟いた。
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「糸を逃れる人がもう1人出てきた。多分、私より『上』から時空を握られてる。どうしよう……くぁちゃんの結界術は私の糸からしか守れないから、やられちゃうかも……」
姉の言葉に、アンテレアは一瞬考え込んでから口を開いた。
「お姉ちゃん、くぁちゃんと初めて会った日のこと、覚えてる?」
「うん。怖い先輩に絡まれてた時に、くぁちゃんがその人をボコボコにしてくれたんだよね!」
「その時にね、くぁちゃんが言ってたの。『お前らがいて都合が良かった』って」
「そういえば言ってたね? でもなんで?」
「私も気になって、あとで聞いたの。何か、くぁちゃんの刀の中に、2個の能力があるやつがあるんだって。『イショートー』だっけ?」
アンテレアが、にぃ、と笑う。
「くぁちゃんの刀の中にね、私たちみたいな子を守ると強くなれるのがあるんだって。だから、お姉ちゃん」
アンテレアの言葉に、ボンビクスは目を輝かせた。
「テンちゃん、行こう! くぁちゃん助けに行くよ! 結界お願い!」
「りょーかい!」
アンテレアが、新たに双子を範囲内に収める小さな結界を生成する。ボンビクスの魔法の発動と同時に、2人は屋上から飛び降りた。
ボンビクスは糸をクッションにして着地し、そのまま甜花学園を覆う結界に突入する。
「これで……自由に糸を使える!」
ボンビクスは双子の身体を糸でまとめ、校舎に向けて糸の先端を射出した。外壁に接着した糸を引き、伸縮性を利用して一気に跳躍する。
「お姉ちゃん、くぁちゃん見つけた!」
「分かった!」
糸を操り、双子はロノミアの前に着地する。
「くぁちゃん、助けに来たよ!」
「くぁちゃん、守って!」
突然の双子の出現に、場が一瞬固まる。
「お……お前ら、何つータイミングでで出てきてんだよ……最悪だ」
ロノミアの言葉に、双子は不安げに振り返る。ロノミアは頭を抱えながらも、口元には笑みを浮かべていた。
「……最高のタイミングだ……!」
鏡の向こうへ行けるかな
触れてみるが行けない、分かってる
それでも信じている
向こう側の自分
どうしたら
涙の雨は止まる?
やり玉に上げられた
星になった長靴
どうしたら涙は止まるの