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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.キリン ⑪

「こ、これは…ちょっと色々あって」
わたしが慌てて説明しようとすると、穂積はちょっとって何よと腰に手を当てる。
しかし不意に彼女は…もしかして、と呟く。
「あたし達の同族⁇」
「えっ」
彼女の言葉にわたしは思わずポカンとする。
「同族って、さすがにそれは」
「だって”気配”がするじゃない」
「ふぇっ?」
わたしは思わず少年の方を見る。
少年は相変わらず師郎の陰からこちらの様子を伺っていた。
それに対し、師郎は上着のポケットに両手を突っ込んで真顔でこちらを見ている。
「…ね、ねぇネロ、もしかしてあの子って」
「なぁお前ら」
わたしが近くにいるネロに尋ねようとした時、不意に師郎がそう言いだした。
どういうこととわたしは言おうとしたが、わたしたちにいつの間にか近付いていた師郎はにやりと笑う。
「ちょっと店の外出てくんない?」
その有無を言わさぬ表情に、わたし達はうなずかざるを得なかった。

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑩

(何だ? この子供たちは……こいつの仲間か? しかし、言い分が奇妙だった。『助けに来た』といった直後に、『守って』だと? 不自然だ……)
ササキアが、ニファンダを庇うように前に出る。それと対になるように、ロノミアも双子を後方へ押しやりながら前進した。
「クキキッ、何となーく察してるとは思うがよぉ……生徒会長さんよ?」
「どんな魔法を使おうが、勝つのは“甜花学園”だ」
「どうだろうなァ? あんたなら知ってると思うが……」
ロノミアとササキアが、同時に攻めに入る。ササキアの盾とロノミアの“チゴモリ”がぶつかり合い、静止した空間に火花が飛び散る。
(この威力……これまでの打ち合いと比べて、明らかに『重い』)
「クカハハッ! びっくりしてんな? 生徒会長さんよぉっ!」
ロノミアが“チゴモリ”を振り抜き、ササキアを押し返す。
「あんたなら知ってるはずだ。『守るものがある奴は強い』ってな。そういう能力」
ロノミアの構えた“チゴモリ”の赤い刀身が、どこか神聖さすら感じさせる清らかな輝きを放つ。
「異称刀、“稚児守”」
ニタリと笑い、ロノミアが更に斬撃を叩き込む。ササキアはそれを大盾で受け止めた。その衝撃の余波で、ボンビクスとニファンダによって縛められているはずの空間がビリビリと震える。
「なっ……これも防ぐのかよ!」
「『この程度』で……私は折れん!」
ササキアの啖呵に、ロノミアは再び口角を吊り上げる。
「へェ? そんなら……こっちはどうだ?」
大盾に向けて、ロノミアは更に“ヒナギク”を叩きつける。
(両手で打たれようが……待て、何故『変形効果』で直接狙わない?)
「敵に届くまで、この『生きた刃』は止まらねぇ」
“ヒナギク”の一閃は大盾に衝突して尚停止する事無く、少しずつ前進していく。少しずつ、その一撃の成立を目指して振り抜かれていく。
「異称刀ぉっ!」
遂に、その斬撃は完了した。防御技術により、直接的な殺傷こそ起きなかったものの、ササキアは弾き飛ばされ、後方に控えていたニファンダに受け止められる。
「“否凪駆”」

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腕相撲

手が触れる
(汗ばんでないかな…)

顔が近い
(緊張、、)

胸の鼓動
(聞こえてないかな…)

指をジッと見てくる…
(爪の手入れし忘れた!)

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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 3

「……キミも迷子?」
ポニーテールの少女の言葉に、ラパエはついずっこける。
「き、キミ“も”?」
ラパエが聞き返すと、ポニーテールの少女はうんと頷く。
「だってボクも迷子だし」
「えええ⁈」
そう、なんですか……?とラパエが近付くと、ポニーテールの少女は苦笑いする。
「実はボク、今日からこの学園に所属することになってさ、まだ校舎の構造が頭に入ってないんだよね」
「だから迷子に……」とポニーテールの少女は言いかけるが、ラパエは「えっ、あなたも転入生なんですか⁈」と驚く。ポニーテールの少女はあぁ、うん……と答える。
「もしかしてキミも転入生なの?」
「はい! 中等部2年1組のピエリス ラパエですっ‼︎」
ポニーテールの少女の質問に、ラパエは姿勢を正して明るく答える。その様子を見てポニーテールの少女はそんなにかしこまらなくていいよと笑ったが、ラパエは「いえ! 先輩相手に失礼なので‼︎」と背筋を伸ばしたままだ。それを見てポニーテールの少女はふふと微笑む。
「……ボクはグラフィウム サルペドン、高等部2年3組だ」
ボクのことはサルぺと呼んでとポニーテールの少女が言うと、ラパエは「じゃーサルぺ先輩!」と声をかけた。
「一緒にこの校舎から脱出しましょう!」
ラパエは元気よくサルペの両手を取る。サルペはあぁ、そうだねと言ってちらと真横にある教室の扉に目をやった。それに気付いたラパエは「……どうしたんです?」と首を傾げた。

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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 2

午後3時半、今日の授業が終わって多くの生徒たちが教室を去る頃。
櫻女学院の中等部2年1組の教室もまた、今日の授業を終えた生徒たちが去ってがらんとしている。そんな中、髪を二つ結びした少女・ラパエはリュックサックを背負って教室をあとにした。
「“学園”ってこんな感じなんだ〜」
「広いし綺麗だし、すごーい」と独り言を言いながら、ラパエは校舎の階段を下り、下の階の廊下を歩いていく。
「きっと素敵な魔法少女がいっぱいいて、賑やかな環境なんだろうな〜」
ラパエはそうスキップしながら進むが、不意に立ち止まり辺りを見回した。
「…あれっ?」
「ここ、どこ…?」とラパエは不安げな顔をする。自分は校舎の玄関に向かっていたはずなのに、今は同じような教室がいくつも並ぶ廊下に立っている。1階まで下りたはずなのに、別のフロアで下りてしまったのだろうか。
ラパエはここがどこか分かる手がかりはないかと辺りを見回す。しかし壁に貼ってある掲示物や教室の入り口に下がっている教室名が書かれた看板を見ても、ここが何階なのかは分からなかった。
「わたし、迷子になっちゃったのかな…?」
ラパエは不安そうに俯くが、ここで不意に背後から「おや?」と誰かの声が聞こえてきた。ラパエが振り向くと、そこには黒いパーカーを羽織り髪をポニーテールにした、スポーティーな印象で高校生くらいの少女が立っていた。
救世主が現れた、と言わんばかりにラパエの顔は明るくなる。

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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 1

よく晴れた春の朝。
白い外壁が特徴的な校舎の学園・櫻女学院の中等部2年1組の教室では、転入生の紹介が行われている。教室の前には桜色のセーラーワンピースの制服を着て、髪を二つ結びにした少女が担任の教師の隣に立っていた。
「えー、今日からうちのクラスで勉強することになったピエリス ラパエさんだ」
みんな仲良くするようにと言ってから、女教師は少女に目くばせして自己紹介するよう促す。少女は「ピエリス ラパエです!」と明るく名乗り、こう続けた。
「あたし、ずっと魔法少女学園都市に憧れてたので、ここに来れてすっごく嬉しいんです‼︎」
「だからよろしくお願いします!」とラパエはおじぎをする。それを見てクラスの生徒たちはどよめいた。
というのも、この櫻女学院がある人工島・レピドプテラは“魔法少女学園都市”とも呼ばれるように、世界各地から“魔法”と呼ばれる一種の特殊能力を発現させた少女たちが集められ、魔法を失うまで隔離される場所なのだ。魔法を失うまで、一度レピドプテラに隔離された魔法少女はまず出ることはできないため、大抵の人間にとってはあまりいいイメージのある場所ではないし、ここにいる魔法少女の多くは自ら望んでここに来た訳ではない。
しかしこのラパエという少女は“魔法少女学園都市に憧れていた”と言うのである。自らの意思でレピドプテラに来た訳ではない多くの魔法少女たちにとって、違和感でしかない発言だった。
「はいはい、騒ぐのはあとにして」
教師は手を叩き、「ピエリス、あなたの席は窓際の1番後ろだからな」とラパエに声をかける。ラパエははーいと返事をして言われた座席に向かった。

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自己紹介ならぬ好きな人紹介

好きな人の好きな食べ物
ガーリックライス、お刺身

よく遊びに行くところ
山【スノーボード】

得意なスポーツ
ソフトボール

好きなアーティスト
奥田民生