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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.オウリュウ ⑩

「あ、えーと…黎が師郎の陰に隠れているのは何でかって話をしてたんです」
わたしがそう答えると、霞さんはそっか~と言いながら師郎の隣に目を向ける。
黎はパーカーのフードを目深に被って顔を隠していた。
「…」
霞さんは暫く笑みをたたえながら黎の顔を静かに見ていたが、ふと師郎がなぁと口を開いた。
「お前さんは何で黎にそんなに興味持つんだ?」
その質問に、え、と霞さんは驚く。
「もしかして、迷惑だった?」
「いや、迷惑って程でもないんだが…」
ちょっと気になってな、と師郎は苦笑した。
霞さんはふーんとうなずき、そうだねぇと呟く。
「なんだか彼を見ていると、昔の自分をみているみたいな気分になってくるんだよ」
霞さんが不意に言い出したので、わたしは目をぱちくりさせる。
霞さんは続けた。
「昔の僕も、あまり慣れない人の前ではビビってることが多かったからさ」
あんまり友達がいなくて…と霞さんは頭をかく。
「でも耀平くんに出会って、少し変われたんだ」
霞さんはふふと笑う。

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リレー(シリーズ)

春とは思えないほど陽が照るあの日
わたしは貴方に恋をした
恋愛下手で人見知りなわたしは、声をかけられなかった
運動会が終わったら、もう貴方と関われないのに
こんなわたしだけど
もう少し、貴方を好きでいていいですか?

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いつになく

涙したうた

寂しくて泣いた日

笑いあったあの日を思ったうた

夜の秘密

底に溜まった私の思いの丈

苦しいような、嬉しいような、寂しいような。

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心地よい響き

宇宙の歌声は心地よい

あなたの歌声は気持ちが安らぐ

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闇がそこにはあった

忌み嫌われた時
ある色が私の心を染めた

闇がそこにはあった

誰かに必要とされた時、誰かに救われた時
ある色が私の心を染めた

光がそこにはあった

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プロ野球物語〜広島カープ編〜②

戦争の痛々しい傷跡がまだ多く残る広島という野球王国にいよいよカープ球団が生まれた。
しかし,産まれたばかりのカープに襲いかかった試練は数多い。
その全ての原因は一言で言うと資金不足だ。

まず前提として、職業野球・プロ野球のチームとは特定の親会社が保有する球団がプロリーグに加盟することが当時の常識であり、時代に応じた業種で潤沢な資金をもつ大企業が保有する球団が多い。

一方の広島カープは、というと…
戦争中に投下された爆弾によって工場も地域のお金も,人々もその多くが街もろとも失われ、そもそも野球に投資できる余裕のある大企業自体が存在しておらず心優しい有志の市民が協力して少しずつお金を出し合って産まれたいわゆる市民球団だ。

さらに,試合の主催者に関わらず、試合に勝った側にその日の収益の7割を、負けた側に3割を分配するという当時の構造上、巨人のように戦後でもまだ資金も選手も多い球団と,地元出身の監督の人脈だけでなんとか選手を開幕直前までかき集めたカープとでは、実力差が大きくてカープが負けてしまうことが多く、ただでさえ少ない収入が更に減少した。
バットを除いた全ての野球用具が革と糸から作られる関係で,ボロボロになった道具を手作業で一つ一つ縫い直して練習したり,選手の給料や選手の遠征費を払うことにすら苦労して球場の物置で寝泊まりさせたり、2軍の選手を一時的に実家に帰らせて解雇するまで困窮する時期も経験した。

そんな努力もむなしく結成2年目にして完全な資金難に陥ったカープ球団に対する裁定は…
次の関西・甲子園球場での試合にカープが欠場した場合,カープをリーグから除名することがリーグの結論であると報道・発表された。
そのニュースを聞いたカープの監督や選手は、まだ全員が戦争を経験しており,「戦争中はいくら望んでも許されなかった野球が平和になった今ならばできる。だから,甲子園まで歩いてもう少しだけ野球を続けたい」という想いから、広島から甲子園まで約300kmという距離を歩いて試合に出場するという悲壮感漂う覚悟を決めた。
一方その頃,その覚悟を聞いた心優しい地元ファンの有志8人が地元のメディア局になだれ込み,地元の宝を,カープを残してくれと懇願して臨時の募金作戦を開始する。

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プロ野球物語〜広島カープ編〜①

舞台は戦後間もない年の広島県内某所。
職業野球,のちにプロ野球と呼ばれる野球リーグの選手団の試合を観るためにこの街の運動場に多くの観客がやって来た。

つい数年前まで行われていた戦争により投下された爆弾で家も勤務先も,そして人によっては家族まで失った広島の人々を元気付けてきたものは、戦争が激化するまでの間この地にあった多くの会社の工場や学校で学んだり働いたりする男性を中心に娯楽として浸透し、県内から多くの名選手や強豪校を輩出するまで発展した球技,野球。
しかし,戦前からそんな野球を職業とする選手が集まるリーグが日本にはあったけれど、肝心の広島にそのリーグに所属する球団がない関係で野球王国,広島県出身の名選手の多くが地元の広島を去り遠く離れた関西や関東でプレーするという悲しい現実があった。
それゆえ,多くの広島の住民が満員の観客に形を変えて地元で行われた野球の試合に訪れたのだ。

その試合から2年と経たないうちに広島の人々を元気付ける平和の象徴として、野球チームを新たに結成すると言う朗報が広島を駆け巡る。

新球団の名前には2つの候補があった。
ひとつは、戦争という名の暗雲から平和になって晴れた空に輝く虹のようになって欲しいという意味から付けられたレインボーズ。
そしてもう一つは,地元・広島を流れる川がコイの名産地であることや広島城の別名が鯉城であることにちなんで魚のコイという意味を持つカープス。
話し合いの末にカープスという名前に決まったが、現地の学生から英単語の文法上の誤りを指摘されて球団名はカープに改められた。

これはそんな広島のカープというチームが地元の人から愛されて支えられていくつもの困難を乗り越えて成長するまでを描いた物語。