「おいキモいの! ファナが相手してやるわよ!」
ファナはディソーダー群に近づくと叫んだ。空気の振動に彼らは足を止め、ファナの方を真っ赤な目玉でぎろりと睨んだ。そして耳を塞ぎたくなるような共鳴音を上げて、たった1人の華奢な女の子に一斉に向かってくる。
ファナは臆せず群れに飛び込み、ナアマを振り回す。熱線攻撃と鋭い脚での攻撃を軽々と避けつつ、足元に回りナアマをひと振り。ディソーダーの体躯に対して細い脚は簡単に切断されて、がじゃんがじゃんと音を立てながら体勢を崩す。崩れ落ちたときに外皮の破片が四肢を掠めて、いくらか傷ができた。浅いものはすぐに治癒したが、深く肉が抉れた傷はそう簡単には治らず、生温い鮮血がどくどくと流れ出た。
「いやぁだぁ! アディくん以外がファナを傷つけるなんてっ」
なんだか狂気的なことをほざきつつ攻撃を避ける。その間に血は止まってきた。
何はともあれ、こういう戦い方ができるのは、小型ディソーダーと比べても小さい人間型のリニアーワルツたちの、数少ないながらもかなりのアドバンテージである。攻撃を受けたディソーダーは、人間の叫び声と鯨の鳴き声を混ぜたような鳴き声を上げて、最後の抵抗とばかりに熱線攻撃を浴びせる。しかしほとんど動くことのできない彼らの攻撃が当たるはずもない。目玉から脚の付け根まで伸びた赤く鼓動する溝にナアマを突き立てて、一気に引き下ろすと、ディソーダーはグロテスクな叫び声をあげ、粘性の高い黒い液体を噴き出して動かなくなる。
ファナ1人ではどうすることもできない大型個体はとりあえず放置し、小型個体の殲滅を図る。ファナは先ほどのような戦闘を何度か繰り返し、最後の小型個体を倒した。
ふと自分の身体に目をやると、どろりとした体液が白い肌の上を流れている。ディソーダーの体液と自分の血液という質感の違う液体が混ざって気持ち悪い感覚がした。
「うぇーっ、まじサイアク!」
弾かれたように手足をばたつかせて悪態を吐いた。
「いやそんなに驚くなよ」
こっちは軽い気持ちで声をかけただけだし…とミツルは上着のポケットに両手を突っ込む。
わたしはあっごめん…と謝った。
「…で、どうしたんだ、難しい顔して」
考え事かー?とミツルはわたしに尋ねる。
わたしはどうして分かったの?と不思議がったが、ミツルはまー異能力使わなくても分かるさ、と笑った。
「で、なーに考えてんだよ」
悩み事か?とミツルがわたしの隣に座ったので、わたしはまぁそんな感じかな…?と苦笑いする。
「他人に話すべきか迷うような事だけど」
「えっ何それ!」
超面白そうじゃん‼とミツルはわたしの言葉に対し目を輝かせた。
わたしはそ、そう…?と首を傾げる。
「いや、だって俺情報屋だし、面白そうな情報には目がないんだよ」
せっかくだから教えて欲しいな~とミツルは両手をこすり合わせつつにやけた。
わたしはそんな彼に引きながら、それはちょっと…とやんわり断る。
するとミツルは、え、どうして?と不思議がった。
あなたは皆を救うべく一人犠牲になった。
なのになぜ笑顔なの?
一人、戦場の地へと足を踏み入れ、そして舞い踊り、まるで一人目立つようにして、焦点をあなた自身一人に向けるように、皆んなを庇うように…あなた一人集中攻撃を受け、
なのになぜ、笑顔なの?
追い風は
知らず知らずに僕をおいてく
友達も
知らず知らずに僕をおいてく
限りないものがないから
限りある私は尊い
その心に気づいてよ ねえ
だから今日はおいとま
おいてかれて今日はおいとま
雨がふってこっそりおいとま
妄想途中で再びおいとま
人生は満ち足らない
向かい風は
知らず知らずに時を戻す
やり直したいことなんてないのに
知らず知らずに時を戻す
未来の行き方も未来の生き方もわからないくらい
自分を疑う僕だけど もう
誰かが嗤ってることになれちゃったから
今日はおいとま
見つからないように今日はおいとま
虹の橋で優雅においとま
妄想途中で再びおいとま
泣いても笑っても時間は経つ
頑張らなくても時間は経つ
おいとましてても時間は経つ
世界にいるなら時間は経つ だから
今はおいとま
今日はおいとま
今週はおいとま
今年はおいとま
人生は楽しければなんとかなるから