みなさんこんにちは! もし今回の小説をここまで読んでくださった方がいたなら、こんなに長いのにどうもありがとうございました。とっても重くて湿っぽかったのに、本当にお疲れ様でした。
今回は自分の今ハマっている要素を詰め込んだ結果になります。おおよそ書き終わったのが1カ月とか2カ月前なので、読み返してみると、甘々すぎて胃もたれ起こすような部分もあり、当時の自分の精神状態が心配になるところもあり、という感じでたくさんびっくりしました。
特に、戦闘後のギスギス(どころの話じゃないデートDV)シーンは、このシーン書きたいがために戦闘シーン入れたというレベルで書きたい部分でしたが、読み返すとアッドが擁護できないくらい酷いし、ファナがあまりに可哀想だし、そもそも反映されるかどうかわからなかったので自主規制してあんな感じになりました。本当はアッドくんがファナちゃんの手にトバルカインを思いっきりぶっ刺して地面に固定されたファナちゃんがばたばたする、というシーンでした。
他のシーンで追記すると、謎に始まった最後のカウンセリングは、2人がちょっとマトモに見えるように書いた部分なのでとっても不自然でしたね。あとは、私がオリジナルながらファナちゃん好きすぎてその可哀想な思考回路をお見せしたかったというのと、アッド君が今のところただのクズヤロウになってたのでちょっと擁護してあげたかったという意味もあります。私は2人とも大好きです。好きじゃないキャラなんか作りようがありません。
第二部に関してですが、第一部だけでも話はひと段落しているし、第二部は予定では多少社会派になってしまって余計読んでもらう意識が薄いものになってしまうので、ここまででも十分かなとも思っています。ただ、いろいろと伏線を張ったり、そもそも「彼らが処分されるまでの物語」なのに処分されてないという問題も残ったりなのでぷんやりと書き続けようとは思います。
書き溜めが尽きているのと、ナニガシさんの企画のも書きたいのでいったんここで区切りという感じになります。
この度は早く更新したいがために多少雑な仕上がりになってしまったことは、申し訳なく思っています。でも、すてきな企画を用意してくださったテトモンさん、本当にありがとうございました!
閑話休題、職員に水を差された若い二人は、明らかに不満げな顔をした。ファナはそのあと、アッドの首にとりついて、片方の手で切断された腕の断面を撫でて、艶笑する。
「分かったわ、ファナがやってあげる。いいでしょ?」
許可を求める目は愛する少年の目の奥をのぞき込む。本来職員の方に許可を取らないといけないのにも関わらず、だ。
「そうだなあ、一番俺のことよく分かってんのはファナだもんなあ」
アッドも、彼女の制御を買って出ているなら、勝手なことを言い出すべきではないが……聡明でいい子のアッド君はいったいどこに行ってしまったのだろうか。
「ちょっとなんでそうなるのよ!」案の定職員も制止しようとするが、一度決めると2人とも止められない。
「ちょ、待ちなさいって!」
「手術寝台借りるわよ」
「すいません、すぐなんで入ってこないでくださいね」
職員の命令も愛の前では無力であるようだ、2人はさっさと手術室に入っていった。
「……なーにが『すぐなんで』よ」
職員は呆れて独りごちる。
……純粋に愛し合う2人は本当に微笑ましい。その幼く、同時に成熟した、否、熟れきって腐りかけた愛が、彼らを、ラボとこの世に繋ぎとめる数少ない手段であるのだと思うと、それが果たして純粋であるかは疑わざるを得ないが、最終的にはどうでもいいことだ。どんなに互いが傷つき、地獄の底でもがき苦しんでいたとしても、かわいそうに、とは思っても、大した問題ではない。
それがリニアーワルツの背負わされた無常さと、世の中の冷酷さなのだった。
【第一部 終】
「あなたたち、今回ちょっと大きい怪我しちゃったわけだし、他のペアたちもいる部隊で戦わない? 今回も本来分隊で相手する規模だったわけだし……」
「絶対やだ!」「絶対嫌です」
2人の声がそろって、職員はつい失笑した。
「他のヤツは目障りです。邪魔」
「ファナが『間違えて』そいつらのこと殺してもいいなら勝手にして」
アッドはつまらなそうな態度で肘をつき、ファナも何か追い払うように手を払いながら言う。反応が本当にそっくりだ。
「……なんか、もう、ほんと仲良しね……」
職員が呆れて零すと、ファナが一気に喜色満面になり、饒舌になった。
「そうよ、世界一ね! ファナにはアディくんだけいればいいの。アディくんもファナだけいればそれでいい。ね、そうでしょアディく……あ」
ファナは途中で言うのをやめて、また俯いてしまった。アッドはその様子に気まずそうに首の後ろを掻く。
「あー、えっと、そう。そうだよ。ファナ」
優しい口調に、ファナの目に盲目的な輝きが戻った。
「アディくん……!」
「わっ!」
途端、ファナはアッドの胸に飛び込んだ。背もたれもない椅子に座っていたわけだから、隻腕のアッドが彼女の身体を支えられるわけもなく、バランスを崩して床に倒れた。
「ちょっとファナ、気をつけなさいよ」
「やっぱりファナの大好きなアディくんね!」
「あっはは、俺の可愛いファナ、俺も愛してるよ。……さっきはひどいことしてごめんな?」
「いいのよ、怒ってるアディくんもかっこいいわ」
「俺も泣いてるファナも可愛くて好きだけど、こうやって幸せそうにしてるファナはもっと好きだよ」
「……お二人さん、それ、腕治してから『部屋で』やってくれる?」
職員は見てられないとばかりに額に手をやって眼を逸らした。
正直この2人は放置して次の仕事に移りたかったが……そんなことをしたら一晩医務室を貸し切りにしなくてはいけなくなるだろうから、ムードをぶち壊してやるしかなかった。
床に押し倒される少年とそこに跨る少女が、キスでもするのかという距離で見つめあうという状況は罷り通っていいものではない。だから一話冒頭でも邪魔が入ったのだ。これは世の摂理である。
『ん~……じゃぁ所有者ぁ、昔話して?』
「えっ何突然。さ、猿蟹合戦とか?」
『ん~んっ。メリーさん、所有者ぁのむかしのはなし、ききたいの』
「……俺の昔話? 俺が小さい頃のことを話せと?」
『うん。10ねんくらいまえの、むかしばなし』
「覚えてねえよ……ギリ小学校上がるかどうかの頃合いだろ?」
『……じゃぁもっとまえ?』
「余計覚えてねえよ…………」
『所有者ぁ、ちっちゃいとき、おにんぎょうあそび、したでしょ?』
「え……」
抱かれたまま清嘉を見上げる“メリーさん”を、まじまじと見つめる。彼の召喚体はただ、感情の読めない曖昧な微笑みを浮かべているばかりである。
「…………これは“メリーさん”の話じゃないんだけどさ」
『うん。きかせて?』
「俺、三人兄弟の真ん中っ子なんだよ。兄貴一人、弟が一人いてさ、そういうわけで家で遊ぶにも玩具の取り合いになるわけよ……そんな中、唯一俺以外の誰も持ってかない玩具があったんだ」
『……うん。どんなの?』
「女の子の人形。そう……“メリーさん”みたいに赤いフリルがたくさん付いたドレスを着てて……長い金髪で……」
『うん……うん』
「幼稚園時代は、比喩抜きに毎日それで遊んでたと思う。別に、可動部があるとか光るとか鳴るとか、そういう機能は一個も無かったんだけどさ……お喋りしたり、ごっこ遊びに使ったり……」
『それから?』
「小学校上がってからは勉強とかあってさ。毎日遊ぶって感じではなくなったんだけど……たまに偶然見つけた時には抱っこしたり眺めたりしたっけな」
『うん。そうだね』
「そういや、中学で【メリーさん】の力を使えるようになって、能力者養成校に転入した辺りかな……転校とか、勉強や部活で忙しくなって、あの人形で遊ぶことも無くなったなぁ……なんで今まで忘れてたんだろ。俺、あだ名も付けてたんだぜ?」
『うん……どんなの?』
清嘉は“メリーさん”を抱き上げると、目の高さを合わせて見つめ合った。
「……今思えば、あの人形は俺の頭の中にしか無かったから、俺だけの人形だったんだろうな……。……“メリーさん”、あれは“メリーさん”じゃない。それは承知の上で……」
『うん、メリーさん、またそうよんでほしいの』
「――“ハナちゃん”。ドレスのヒラヒラ……あの沢山のフリルが花みたいだって思ったんだ」