表示件数
0

無銘造物再誕 Act 27

「!」
金髪のコドモは驚いて後ずさるが、足元の小さな石ころにつまずいて後ろに倒れてしまう。
慌てて立ちあがろうとするが、金髪のコドモは突然目の前に現れた“何か”に驚くあまりうまく立ち上がれなかった。
“何か”はいつの間にか金髪のコドモの目の前まで迫ってきており、低い唸り声を上げている。
「どどどどうしよう…」
金髪のコドモは座り込んだまま後方に下がった。
“何か”は金髪のコドモに向けて大きな口をゆっくりと開く。
金髪のコドモは恐怖のあまり顔を背ける。
しかし、突然上空から黒い影が飛び込んで“何か”に斬りかかった。
“何か”は驚いたように後ろに飛び退く。
金髪のコドモが思わず顔を上げると、黒髪で背中に黒い蝙蝠のような翼が生えたゴスファッションのコドモが黒鉄色の大鎌を構えて立っていた。
「…ナツィ‼︎」
金髪のコドモは思わず声を上げる。
黒髪のコドモことナツィはちらと金髪のコドモの方を見るが、すぐに目の前の“何か”に向き直った。
そして目の前の“何か”に飛びかかる。

0

無銘造物再誕 Act 26

一方、金髪のコドモは住宅街を1人さまよっていた。
「なーつーぃー、どーこー?」
金髪のコドモは辺りを見回しながら歩いているが、昼間の住宅街ゆえなのか人気はほとんどない。
むしろ初めて行く所故に、金髪のコドモにはその風景がどこか不気味に見えた。
「どこ行っちゃったんだろ…」
金髪のコドモは不安げに立ち止まる。
辺りには相変わらず同じような家々が続いているだけで、それが金髪のコドモを余計不安にさせた。
「…」
金髪のコドモは周囲をきょろきょろと見回す。
静かな住宅街に、金髪のコドモの足音だけが響いている。
…と、不意に金髪のコドモは何かの気配を感じて後ろを振り向く。
後方にはただの細い道が続いていたが、そこには確かに何かの気配があった。
金髪のコドモは不思議そうに気配がする方に近付く。
何歩か近付いた所で、金髪のコドモの目の前には半透明の大きな爬虫類のような“何か”が立っていた。

0

無銘造物再誕 Act 25

「別にいいだろ」
よく分かんない邪魔者が失せたんだし、何も問題はないとナツィは服のポケットに両手を突っ込む。
「…でも、あの子どう考えても“作られたばかり”でしょ」
あのまま1人で放っておくのは、ちょっと…とかすみは不安そうな顔をする。
「なんだよ」
アイツのことが心配なのか?とナツィはかすみに尋ねる。
かすみは…だってと返す。
「何も分からなかった頃の自分を見ているみたいで、なんか、さ…」
かすみの言葉にナツィはなんとも言えない顔をする。
暫しの間2人はその場で黙り込んでいたが、やがてナツィがこう呟いた。
「…行くぞ」
「え?」
既に金髪のコドモが歩き去った方へ向かおうとしているナツィに対し、かすみはポカンとした様子で返す。
「だから行くんだよ」
アイツを追いかけに、とナツィはかすみに背を向けたまま呟く。
かすみは思わず目をぱちくりさせたが、やがてうんと頷いた。
ナツィはその返事を聞くとスタスタと歩き出した。

0

無銘造物再誕 Act 24

「隠れるぞ」
不意にそう言うと、ナツィはかすみの手を引いて近くの細い横道に駆け込む。
かすみはえっと驚くが、そのままナツィに引っ張られて建物の陰に隠れた。
「おーい2人とも〜」
暫くして、金髪のコドモはナツィたちが姿を隠した横道近くの十字路へ辿り着いた。
「どこ〜?」
金髪のコドモは不思議そうに辺りを見回すが、誰も見つからない。
ナツィとかすみは建物の陰から静かに金髪のコドモの様子を伺っていた。
「…」
暫く辺りを見回して、置いてかれちゃったかな?と金髪のコドモは不意に呟く。
「ま、探せばいっか!」
金髪のコドモはそう手を叩くと、ナツィたちがいる方の隣の角を曲がっていった。
金髪のコドモが道の奥に消えていったのを確認すると、ナツィはそっと建物の陰から出た。
「…やっとどっか行ったか」
呆れたように呟くナツィに、かすみはナツィ…とこぼす。

0

無銘造物再誕 Act 23

金髪のコドモがナツィとかすみに出会ってから暫く。
ナツィは先程までいた大学構内を出て、かすみと共に住宅街の中を早歩きしていた。
「ね、ねぇナツィ」
そんなに早歩きしなくても…とかすみはナツィに話しかけるが、ナツィは別にとだけこぼす。
「俺はアイツを避けたくて逃げてるだけだし」
「そ、そんなぁ」
呆れるかすみに対しナツィはなんだよと続ける。
「お前はあんな素性の知れない奴に優しくしようっていうのか」
ナツィの冷たい言葉にかすみは、別にそういうのじゃなくてと言い返す。
「ただ…なんか放っとけないなって」
かすみがそう呟くと、ナツィはそうか?と首を立ち止まる。
そうだよとかすみも足を止める。
「なんか、あのまま1人にしておけないっていうか…」
多分自分たちのこと追いかけてきてるでしょ?とかすみは後ろに目をやる。
住宅街の細い道には人気がなかったが、どこからかなーつーぃ〜という声が聞こえる。
ナツィはちっと舌打ちした。