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紅狗造物茶会 Act 17

「私が気まぐれで拾い、そして無理やり私の元へ引き入れた存在だから、アイツと私はすごく固い絆で結ばれてはいないの」
強いて言うなら“形式上の仲”、とピスケスはテーブルの上に手を置く。
「だから私は…」
「そんなこと、ない」
ピスケスが話を続ける中、不意にかすみが口を開いた。
かすみはハッとしたように、あっ、えーと…と我に返って慌てるが、ここでナツィがかすみ、と声をかける。
「言いたいことがあるなら言った方がいい」
ピスケスがなんか言っても俺がフォローするし、とナツィは腕を組んだ。
かすみは…ナツィ、とこぼし、ピスケスに向き直った。
「あのねピスケス…この前、お巡りさんのお世話になりかけた露夏ちゃんを迎えにいったとき、露夏ちゃんが言ってたんだ」
ピスケスは“意外とおれのこと気にかけてる”って、とかすみは呟く。
ピスケスはまばたきもせずかすみの方を見ている。
「『付き合いが長くなってきて腐れ縁みたいになってきてる』から、お互いのことを気にするようになってきたんだって、言ってた…」
かすみは自信なさげに俯く。
暫しの間その場に沈黙が続いたが、という訳だとナツィがイスに座り直した。

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紅狗造物茶会 Act 16

「…それで、アイツを“拾ってしまった”」
簡易術式で傷を治して、アイツに“私のところに来ないか”迫ったのとピスケスはこぼした。
「それが、お前らの出会い、か」
ナツィがポツリと呟くと、ピスケスは、えぇと弱々しく頷く。
「さすがに歳乃には怒られたし、あの時点で保護者…アイツが“父親”と呼ぶ人にアイツは消されようとしていたから、あとでどうにか説得してアイツの魔力供給術式を私の手元の魔石に移させるので大変だったのだけどね」
「おいちょっと待て」
ピスケスの告白に、ナツィは驚いてテーブルの上に身を乗り出した。
「アイツが“消されようとしてた”って…」
ナツィがそう言いかけると、ピスケスはまぁ色々あったのよと苦笑いする。
「アイツの“家”はかなり複雑な事情を抱えているから…」
「はぁ」
やや適当なピスケスの説明に、ナツィはため息をついた。
ピスケスはまぁそういう訳で、と話を続ける。

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紅狗造物茶会 Act 15

「でも、アイツはこう呟いたの…“天使”って」
「えっ」
その言葉にキヲンは驚き、ナツィとかすみは身じろぎした。
ピスケスは顔を上げて、そんなに驚くことでもないわと苦笑する。
「そのときの私は背中の翼を生やしていたから、なにも知らないアイツには天使に見えたのよ」
だけど、とピスケスはまた手元に目を落とした。
「私はふと思い出してしまった」
ずっと昔、私が歳乃の家…鴻海一族に引き取られたばかりのころに、私のことを“天使”と呼んだ人間がいたことを、とピスケスは目を細める。
「その当時の鴻海家の当主だった私のマスターの娘…病弱で、魔術の才もなくて、一族の中では疎まれていたけれど、遠い海の向こうからやってきた“空飛ぶ人工精霊”の私に興味を持って、よく“遊び相手”になってほしいとせがんだ彼女」
あの子も私のことを“天使”と呼んで、懐いていたのよとピスケスは続けた。
「その子は病気で早々に亡くなってしまったし、私は何十年も彼女のことを忘れていた」
でも、アイツの言葉で思い出してしまってとピスケスはティーカップをテーブルの上の小皿に置く。

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紅狗造物茶会 Act 14

「でも、アイツにそこまでする義理はないし…」
ピスケスが事を有耶無耶にするかのように呟くところを見て、なんだよ義理ってとナツィはこぼす。
「お前、よくアイツのこと自分の“狗”って言ってるじゃんか」
赤の他人じゃないんだろ、とナツィはピスケスを睨んだ。
「自分の“狗”であるなら、“飼い主”のお前が責任を取るべきだと思うんだけど」
違うのか、とナツィは低い声でピスケスに尋ねた。
ピスケスは少しの間驚いたように黙っていたが、すぐにそうねぇと目を逸らす。
「確かにそうなのだけど、アイツはそこまで望んでいないでしょうから」
「なんだよソレ」
無責任だなとナツィは呟き、手元にある紅茶の入ったティーカップを手に取った。
ピスケスは暫くの間、手に持つティーカップをじっと見つめるが、やがてそのまま…アイツは、と口を開く。
ナツィ、かすみ、キヲンはピスケスの方を見やった。
「アイツは、私が気まぐれで拾ったようなものなの」
ピスケスはティーカップの中身に映る自身を見ながら続ける。
「5年くらい前、夜中に路地裏で腹から血を流して気を失いかけているアイツを見つけて、私は最初放っておこうとした」
どこかで戦いに巻き込まれて負傷した人工精霊だと思ったから、きっと近くに主人がいるのだろう、すぐに傷を治してもらうのだろうって、私は思ったのとピスケスは言う。