無題
君に恋文を贈ろうと
筆を執って はや3日
言葉は一向に沸いてこなくて
物書きの僕が こんなに苦戦するなんて
本当は君のこと 愛していないのかもしれない
そんな馬鹿げたことが過ぎって筆を置いた
固まった膝に苦心して部屋を出ると
君は小さな明かりで繕い物をしている
僕が枝に引っ掛けた着物の袖に
綻びを誤魔化すように花が咲いている
お仕事ご苦労様ですと微笑む君が
申し訳なさそうに眉を顰めて
男の人に花の刺繍なんてと それを隠した
良く出来ているねと手に執った
その柔い手は すんなりと馴染んで
嗚呼 愛を囁くのに
筆なんぞを頼ったのが間違いだったと
途端に降り積もる言の葉に笑った