ただ其処に そう在るだけの物事へ 訳や価値を塗して それを神と呼んだの 人は 空虚に耐え切れない 人は 自ずから在ることができない 手当たり次第に暴き立てて 神は科学に切り刻まれた 人は 空虚に耐え切れない 人は 自ずから在ることができない 何もかもを検分し"確かなもの"にすることは 何もかもの本質を 手放したのと同じ 己の周囲を暴かずに居られないということは 己の不確かさを 認めたのと同じ
とっくに壊してしまったものを それと知りつつ抱え込んでる 抱えた腕は血塗れで 押し付けた胸もズタズタで 苦しいだけだと 救いは来ないと それが相互の認識なのに どうしても手離せないこれが 僕等にとっては愛なのだね
眠れない夜には手を繋いで 星空を お散歩するんだ おうし座から おおいぬ座 こいぬ座から ふたご座へ 星空は君の庭 目につく星座 全ての お話を 強請れば すらりと諳んじる 偶に かち合う見知らぬ星には 少しの間 立ち止まり 即興の神話を一つ それが大好きな私が 小さな星ばっかり指差すから 明け方頃に君は決まって ネタ切れだよって笑うんだ
翼の名残りは 所詮ただの骨なのだと 知ってしまったのは何時の日か どんな青空でも 君の元へ翔けてはゆけぬと 知ってしまったのは何時の日か 指先から広がってゆく鉛に 理没した挑戦者の心意気 きっとそれは近いうち 君への想いをすら飲み込むけれど 埋もれたのならそんなことも 悲しまずにいられるはずね
ガラスの靴を履きたいわけじゃない 呪いの糸車も毒林檎も私には関係ない その先の幸せなんて私は求めてはいないのに ただただ ほんの少しだけ 気楽に息をしていたいだけなのに
人間不信なんて悲しいことねと したり顔で頷かないで 分かったようなこと言うくらいなら 貴方のことを信じさせてよ わけないはずよ たった一言 それだけでいいの だって私は いつだって ほんとは信じてみたいのだもの
顔も名前も声色すら知らないのに 笑って泣いて震えるほど共鳴して いつの間にか落ちていた 宛名不明の貴方の恋文に 私の名前を書き込んだ ほんの束の間の幸福に浸った 宛名不明の私の恋文に 貴方の名前を書いては消した 決定打を打つのが怖かった 住んでるところと仮物の名前 綴られてゆく貴方の世界 それだけが私の中の貴方の全て だけどそれで充分だった 貴方にその世界に 身を焦がしてしまうには
物事の輪郭を捉えたいよ だけどそれだけじゃ駄目なんだ 物事の真中を捉えたいよ だけどそれだけじゃ駄目なんだ 片一方じゃ駄目なんだ だけど手を伸ばす度 片一方すら すり抜けてゆくの
見苦しいほど貴方が好きよと 言えたらどんなに幸せか
例えば肩に凭れた時に そっと背筋を伸ばしてくれるような 分かりにくい貴方が好きだった 例えば料理を褒めてくれなくっても 数週間後 ぽつんとリクエストをくれるような 分かりにくい貴方が好きだった 別れ際に私は 貴方の愛情不足を詰ったけれど きっとそうではなかったのね 貴方のささやかなサインを察するだけの愛情が 保てなかったのは私の方だったのね