音のナイフ 14
僕は、いつからか気がついていた。
僕は周りの人とは違うんだと。
この女の子の手と違って、僕のは、暖かくもないし、柔らかくもない。
僕は、精巧に作られたニセモノなのかもしれない。
そんな疑念を抱きながら今まで旅を続けて来た。
音楽を教えて欲しいと言われた時、僕は、どうやって音楽を知ったのかも、誰から習ったかも思い出せなかった。
僕は生まれた時から、音楽を「知っていた」
脈がない、それが何を意味するのか
僕にはわかる気がする。
僕はどこから来たのか。
僕はこの世界の道理に反して生まれて来たような気がして、ならない。