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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです!

「先生、おはよ〜。」
今日はいつもの窓辺、ではなく先生の部屋の扉を叩いていた。

『あぁ、おはよう。どうかしたか?』
「いや、もう夏休み終わっちゃうのに、宿題が手に付かないから遊び来た。」
『おぉ。…遊び来たか?』
「ねぇ、なんで繰り返した(笑)?」
『繰り返してはない(笑)。…う〜ん、麦茶くらいしかないぞ?麦茶でいいか?』
「うん!麦茶がいい!」
先生は冷蔵庫の中から麦茶の入ったピッチャーとガラスのコップを2つ取り出した。

『あとどのくらい残ってんの?』
「宿題のこと?あとちょっとが多いのよ。」
『半分しかやってないだろ(笑)?』
「そうね、半分くらい(笑)。」
『じゃあ、宿題持ってくるか?』
先生はコップに注ぎながら問いかける。

「どこに?」
『ここに。』
「なんで?」
『ここでやるから。』
「嫌だ。」
『嫌なんかい(笑)!』
「嫌に決まってるでしょ(笑)!この時間はこの時間で大切だから(笑)。」
『じゃあ明日にでも勉強会しよう。それならいいだろう?』
「えっ?ごめん、聴こえなかった。」
『確信犯だろ(笑)。』
「もう(笑)!わかったよ(笑)。明日勉強会ね。」
私はお茶を飲むと一息つく。

『8月も、もうすぐ終わりだな。』
「寂しいね。花火大会とか行きたかったな。青春したかったわ(笑)。」

私は先生の横顔を見ながら、私の青春は学校生活よりもこの人だなと感じていた。
私はくすくす笑いながら、ただ一つ、「先生に浴衣姿を見てほしかった」とは言えなかった。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです!

「今は降ってないみたいだけど、雨、ひどいね。」
私は窓枠に手をかけ外をみていたので、ふらっと現れた先生にそうなげかける。

『怖いか?』
顔を覗き込むと、いつものように腰掛ける。
「怖くはないけど、なんか7年前の災害と同じくらいの雨が降るんだって。」
『ここも地球温暖化の影響を受けてるのかもな。』
「うん。雨は好きだけどここまで降られるのは困る。」
『この感じだと郵便も当分来ないな。』
「あぁ、梟さん?あの子達先生のとこ来てたんだ。」
『そりゃあ、魔法に使う道具はこっちに売ってないからな。』
今日は私も先生と同じ向きで座る。

「また先生の魔法見たいな〜。」
『そろそろ、アルの魔法も上達したんじゃないか(笑)?』
「そうね(笑)、アルの魔法が先ね(笑)。」
『楽しみにしとくといい(笑)。』
“勝手に約束しないでくださいよ!”
ムスッとしたアルがでてくる。

「いつからいたの?」
“君が座ったあたりかな。”
「あ、あと、ムスッってしてたけど、約束してたよね?魔法見せてくれる約束したよ!?」
“え、嘘?いつ?”
『してたよな。』
「だよね!!」
『どっちみち魔法を見せなきゃだ。』
“え〜…。”
「手伝ってあげるから。」
“じゃあ、夏休み中にはなんとかするわ〜。”

『ちょろいな(笑)。』
アルは魔法の段取りをしていたので、それを横目に先生は耳元で呟いた。

私は、この雨が止んで3人の上に虹がかかる事を祈った。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです!

今日は久しぶりにいつもの窓辺で、足を外に出して座っていた。
『君がそうやって座ってるときは何かあるときだ。』
先生が後ろから声をかける。

「う〜ん、今日はちょっと違うかな〜(笑)。」
『というと?』
「何かあるわけじゃないんだけど考え事かな。」
先生は横に私とは反対の向きで座る。
『考え事?』
「うん。ほら、8月6日が来るでしょ?」
『8月6日?』
「あっ、そっか。先生、魔法の世界の事しか知らないよね!!」
『しかで悪かったな(笑)。』
「私は先生からたくさん学べるからそれはそれで好きよ(笑)?」
『私の話はいいんだ。8月6日、何かあるのか?』
「厳密に言えば何かがあったのほうが正しいかな。私の故郷は広島なんだけどね、76年前の8月6日、市内に原子爆弾が落ちたんだよ。」
『なんで?』
「ほら、魔法の世界でもあるでしょ?戦争。戦争があったの。」
『それで?なんで思い馳せてたわけ?』
先生は少し長い髪を耳にかける。

「う〜ん、最近思うんだよね。戦争とか紛争ってさ私達は経験してないからわからないでしょ?だけど思いを寄せることはできる。それって意味のある事だと私は思う。だからかな(笑)。」
『君のそういうところ、私はいいと思うよ。』
「先生に褒められると嬉しい〜。」
私はそう言いながら先生の肩に寄りかかる。

『どうした?』
「眠い。おやすみ。」
私はそうつぶやくと寝たふりをしてみた。
すると先生の温かい手が頭に触れる。
『落ちるなよ?…おやすみ。』

先生の優しい声を聞きながらこの『平和』な時間が続けばいいなと思った。
先生の温もりが伝わる距離で、手と手が触れ合えそうな距離に、このまま時間を止めてしまいたいと思う。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです!

コンコン。
私は先生の部屋の扉を叩く。

『どうぞ。』
中から少し冷たい声が聴こえる。
「私。」
そう言いながら、扉から顔を覗かせる。
『あぁ。君か(笑)。』
さっきの冷たい声が嘘かのような優しい声で言う。

「ねぇ、私だと思ってなかったからだと思うけど、すっごい冷たい冷えきった声だったよ(笑)?」
『しょうがないだろ……。』
先生は少し恥ずかしそうに俯く。
「先生も私と同じで好き嫌い激しいもんね(笑)。」
『で、何しに来たんだよ〜。』
「ほら、約束。そろそろ魔法見せてもらおうかなと。」

『どんな魔法をご所望ですか??』
店員さんのようにそう言うと、貴族のようにお辞儀をする。
「今日は暑くないのがいいな(笑)。」
『そんな都合の良い魔法なんてないよ(笑)。薬学にはね!』
「うん、なんとなくそうだろうなって思ったのよ(笑)。いつものやつ見せて?」
『おう。今日は材料を変えてやってみようか。』
「色が変わったりするの?」
『それは見てからのお楽しみ(笑)。』
先生はイタズラに笑いながら、少し大きい釜のような鍋を取り出す。
『アルが来る前に済ませるぞ(笑)?』

私は手伝いをしながらいつもの魔法(材料を変えているが…。)を見ながら、先生の細い指を見ていた。
いつもとおなじように綺麗な魔法と、先生の美しさをこのまま記憶の中で冷凍保存してしまいたいと思った。

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〜二人の秘密〜少し長いので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

「暑い……。」
そう呟いた声を先生が拾う。

『まぁ夏だからな。』
「お〜、いつの間に先生。」
『顔にタオルをかけてるからだ。』
「いや、もう暑すぎて(笑)。」
『確かにこの暑さは死んでしまいそうだ(笑)。』
先生はチョロっと舌を出しながら笑う。

「うわ。何それ。可愛いかよ。」
私は先生を少し睨む。
『いや、なんで睨むんだ?』
「私より可愛かった罰。」
私はムスッとした顔を見せるとニコッと笑う。
「先生、可愛いから焼きもち焼いちゃう(笑)。」
『君は女の子なんだから、君より可愛い訳はないさ。』
「最近は更にさらけ出してるよね、先生(笑)。」
『何をさらけ出してる?』
「う〜ん、全部かな。自分をさらけ出しすぎ〜(笑)。」
『そんなつもりはないのだが??』
「いやいや、自覚なし(笑)?」
『自覚も何もさらけ出していない。』
「ふふ。先生のそういうとこ好きよ(笑)。」

“なんかイチャイチャしてんな〜(笑)。”
アルが音をたてながら歩いてくる。
「おっ、久しぶりアル。」
“久しぶり(笑)。”
「何してたの?」
“仕事だよ、仕事。”
「先生はここに来てくれてるのにな〜……。アルは仕事ばっかしてんだな〜。」
私はアルをジロッと見る。
『可愛い顔が台無しだぞ(笑)?』
先生は笑いながら手で私の目を覆う。

私は先生の手をずらしながらアルに言う。
「アルめ。今日は先生がいるからお預けだっ!」
“いや、アニメのセリフみたいに言うなよ(笑)。”
「ごめん(笑)。そういうつもりじゃなかったんだけど(笑)。」

久しぶりに3人揃った廊下は少し騒がしかった。
3人の笑い声が響く廊下に、蝉の不思議そうな目が釘付けされている事を私達は知るはずもなかった。