膨らまないパンケーキに プレッシャーを与える私は きっと嫌な上司になるのだろう
窓辺、頬杖をつく夕日 半分脱げた靴下 くすぐりたいその踵 ソファに沈む自堕落が 音痴なギターを奏でてる こんな休日もありね ( 毎日でもありだけどね ) あのね、パンケーキが食べたいな
「あ、号砲は鳴らないので」
それはきっと春になれば 雪解けのように 何事もなかったように さらさらと小川のような さようなら
シんだ木々が季節を過去にして 美しかった思い出も 篩にかけられた浜辺の砂つぶさ 毎度毎度いやになるよ 毒づく老人にはなりたかないが それも全部、この街のせいだ 頷くように錆びた風が椅子を揺らす
青空にうす紅色 色彩だけは式日の様 終わりと始まりを意識しだして もどかしい、わずらわしい 阿保か、咲く花ごときで
どさくさに紛れて 冷たい夜が肺ってきた そのまま息を止めて二十八秒 溜め息として破棄出された夜は より一層黒さを増して 弱い星を塗り潰してゆく 不覚、不覚
部屋からはみ出した 隣人の灯りと談笑が 癪にさわって夜空をにらんだ 八つ当たりされた月が雲隠れして 心の狼は爪を隠した 残った豆柴みたいな焦燥をぷかぷか吐くと にべもない夜は一層更けていった
きみに会える気がして 駆け抜けた百鬼夜行 何度も前髪なおしてみて 早くわたしのことを見て 偶然は高望みだ 足よ、成せよ旋風の如く 街が冷えぬうちに せっけんの匂いが消えぬうちに
きらりと光るピアスが 耳の裏へと流れる川に映える 夏休みあけの少し大人なきみの笑みが ぼくを底知れぬ空虚へと突き落とした
夢の狭間で切られたしっぽ 戯れの猫が咥えて駆けてゆく 腐食したマーマレード 網戸ごしの昼下がり 朝顔が咲いていたプランターに 吹きだした種が芽をだした 一瞥した太陽に中指を 飲み干したあくびの予兆 光と影の両生類 今宵は水底 攫われたしっぽに思い馳せ、
帆に命が宿り 水平線は水芭蕉 パレードは誰が為にゆく 駆け寄る少女の為にだろうか 少し伸びた背に戸惑う 水夫の照れ笑いに 死神すら顔を顰めていた
できたての琥珀で眠る蜉蝣 指で掬えば、甘い黄金糖 あした髪を切る予定だから いまのわたしを目に焼きつけてね
電池切れだぜ 六等星 隣の芝が何色でも 光った色があんただぜ 無様もまた美学 当たって砕けた流星が 誰かの夜を照らすことも
ぼくの網膜じゃ既存しない 奇天烈色、さんざめく 埋め立て地の夕凪は 人工的なにおいがした 鏡面を跳ねた鯵が、波紋が 退屈な明日に波を起こす 逃げ水に沈んだ帰路に舟をだせ 金曜日だし、終末だし そのままプランクトンへ還ろうか
雨雲を巻きとったフォークが 山並みに突き立つと 選び損ねた言葉を祀る墓標となるのです ナポリタン色に染まる背景 ラブとライクを往来する小舟は 手を振る君のさざなみに 忽ち、難破舟となるのです
奇しくも あなたのようで 真綿のような 雲がカモメを攫ってゆく 繋げた貝殻は臥せた日々の数 形状記憶の猫背を伝う 飲み比べた苦汁の滴 面影が背伸びする 諦め色の空に浮かぶ 真綿のようで あなたのような 群雲
指切った、指切った それは紙か約束か 滴った、滴った 淡い血液か溜め息か がんばった君には赤いリボンを 解いて手繰りよせたなら ああ 君だった、君だった
帰巣本能狂う空 約束をわすれたツバメは 訳もなく泣いている 誰も救われない物語で ひっそりと迎えるエンドロール ツギハギの怪物は岬へと帰る 何かを待ってる錆びた塔 二つの名前を削った跡
肩をなでる感触の音 解き放った黒い髪で 君の目を奪う 投げ捨てた白いシャツは 汐風に溶けて水色になった 首をすくめて笑う癖 鎖骨の上下が白波のようで 奪われた僕の目は ラムネのくびれで揺れていた
塵が輝きだすような アメオトコが吹き出した夜に 爪を切るみたいに忘れたい 逆剥けのようで 花向けのような それはただの目眩し アメフラシが吐き出した夜だ
迷いこんだチャイナタウン 運に見放されちゃったみたいね 露天商の手招きにすら付け込まれそうワタシ 地図アプリはどこへ誘う そこを左、その先も左 突き当たってさらに左 振り出しに戻ってまた会ったなオヤジ 右に曲がるための勇気を一つ
蓋を舐めるひとりの夜 紅花みたいな猜疑心 既読を待つ 冷えたパスタとコントローラ スプーンで捲れた乳白色 独り占め、独り惨め、知覚過敏
雨が枯れたら傘を閉じる 前世の記憶は捨て去って 違う世界ではじまりたい 一度焼かれたこの身なら 恋に焦がれても平気だわ
居眠りみたいに死ねたらいいのに そんな口癖も皮肉になった 天井の目地で明日を占う 行き着く先は幸か不幸か もう本当はどうだっていいのに 今さら彼奴の事なんか思い出して 変わる季節に期待なんかして
湿った路地のにおい たばこ屋と部屋を行き来する日々 幾千の雨が培った苔が目地に沿って あみだくじ 邪魔するななめくじ 行き着く先は幸か不幸か わかりきってる それはこの後に降る雨と同じ確率で
快晴 快晴 天気予報士が煽る 上手に焼けた目玉焼き はしゃぐ声が夜勤明けに堪える 今日なにするって無言の笑顔 うーん寝てるって無言の笑顔 道徳を保って張りつめた日常 この瞬間がぼくを留めてる 花を飾るくらい心にゆとりを 明日からまた歯車に戻るけど とりあえず今は、 きみが彩る生活をありがたく頬張るよ
きっかけが文学なら さよならは哲学か 溜め息の音楽に詞をつけて 気が済むまで唄えばいい そっちはそんなでもないのかな こっちはこんなに水彩だ
それは甘い色 いつの日か見た 海辺の夢 [[[ デジャヴ ]]] 夏の業に怯える春 おはよう、搾りたての手首から
春を折り畳んで 木漏れ日で固結び 体感時間はセツナ 泡沫を食むトワ 受理されなかった遺失物届 紙飛行機にして君に届け