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個人的な意見。やっぱり想いは直接伝えるべき、、、だと思う。

どいつもこいつも小さな画面をした光る板を持ち始めた。
それを見てほとんど毎日を過ごしている。
通り過ぎる私になど目もくれず、足を踏みつけて詫びも無しに、自分よりもはるかに小さな板に依存している。
その目が人を真っ直ぐ見たのは一体何日前なのだろうか。
画面に食い付き、時に涙して、時に喜んで、時に笑って。
そしていじめが起こるのもこの画面上だと言う。

いつから人は変わったのだろう。

腕時計をしきりに確認して、好きなあの子が駅に来るのを今かと待って、走り寄って来たあの子に待った?と聞かれ、ううん、今来た所と返す。
こんな会話があの画面のせいでなくなった。
メッセージアプリで連絡して、あと何分で着く、と言えてしまう世界。

震える手で電話番号を打ち、あの子の家に電話をかけたけど、出たのはまさかのお父さんで、ひどく緊張してしまった。
こんな失敗談が言えなくなった。
電話なんて直接かけられる世界。


いつまで私達は小さな画面をした板に支配されるのか。
私にはわからない。

わからないけど、とりあえず、
私は君の目を見て話していたい。
だから、君も、ちゃんと私を見て下さい。
私を真っ直ぐ見て下さい。

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佐々木の世界

AM6:00
【ピピッピピッピピッピピッ】
「ん、、、くわぁ」
今日も朝がやって来たようだ。
また1日が始まる。
【ピロリン】
『今日の時間割教えて』
なぜだ。昨日、連絡帳に書かなかったのか。不思議。あれだけペンを持っているのに、書かないのか。そんなことを思ってしまう。つい皮肉を言ってしまうのは、私の性格が良くないせいだ。
性格が良くないのは分かっているが、答えない訳にはいかない。そうして、いつも返信する。
『数学、理科、文化祭準備2時間、国語、英語』
既読がつかない。別にすぐ読めとは言っていないが、こういう時、すぐに既読がつかないと、、、
『ごめん詩織ちゃん』
『優芽が教えてくれた』
『ありがとう』
なんだ。私の頑張り。無駄か。朝のコーヒータイムを犠牲に答えてやったのに。コーヒー飲めないけど。ああ苛つく。大体書いてない方がおかしい。書いとけよ。迷惑かけやがって、、、

こう思っていても、顔には出さない。ポーカーフェイス。いつもの私は仮面を被っている。
剥がされたくはない。かといって、隠している訳でもない。これでいい。これが私。

謎に自分を褒めて、朝食の準備を始めた。
【ピロリン】
【ピロリン】
【ピロリン】
うるさい。誰。私の朝のコーヒータ((省略。
『おはようございます』
噂の転校生だった。彼はたまたま席が隣で、その流れでLINEも交換したのだ。少女漫画みたいだ、と改めて思った。席隣。恋の予感?ないな。
『昨日のプリントって』
『提出ですか?』
知らん。私は先生でもお客様相談センターでも質問専用窓口でもない。ロボットでもない。当たり前だけど。とにかく。返信。
『英語は今日提出です』
『後は分かりませんごめんなさい』
何か今日は進みが遅い。大丈夫か。
【ピロリン】【ピロリン】
あーもううるさい。何だ。
『佐々木さん、今日土曜日ですけど』
『学校ありましたっけ』
、、、、、、あ。
私は今までこんな間違いしたことがなかった。
すごく恥ずかしい。なんて返信しようか。
『間違いです』
『ありませんから』
『休みです』
たまにはこんな日でも良いか。
佐々木、少し成長した。

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佐々木の世界

AM7:00
「ふわぁーっ、、、んんっ!?」
【ピロリン】
『詩織ちゃん、今日休み?』
『もうすぐ電車来るけど』
寝坊した。完全に、寝坊だ。10分などの可愛らしい寝坊ではない。1時間近く寝坊した。
いつもなら、今頃駅でクラスメートと話して電車を待っていたというのに、、、

昨日用意していた朝食のシリアルは残して明日に回そう。アイロンかけておいて良かった。ハンカチはお気に入り乾いたかな。カフェオレはパックのを持って行こう。

こんなことを考えながら、家の中を駆けめぐる。そして制服を着て、束縛の世界に入る。
【ピロリン】
『電車乗るねー』
『ゆっくり来なよ』
「忙しいんだってば、、、」
返信なんて置いておく。別にあの人達に私生活まで教える義務はない。そう信じよう。

パン片手に家を飛び出した。マンガみたいだ。
自分が主人公になった気分。速く走れそう。
この角から、誰か出てきて、ぶつかるんだ。
なんてね。あり得ない。私は通行人Bだろ。

「痛っ」「痛いっ」
本当にぶつかった。痛い。カフェオレ無事か。
パンは落ちた?そういえば学校の用意出来てるかな。あ、お箸忘れた。

「大丈夫ですか?痛くないですか?」
そうだ。相手は大丈夫だったのか。
「はい、私は大丈夫です、、、あなたは」
「僕は全然平気ですよ!無事で良かった」

そう言って、相手は走って行った。速い。
またいつか会えたら、お礼しないと。
さて、あと学校まで240メートル。急げ。

【ピロリン】
『うちのクラス、転校生来るらしい』
『写真送るね』
『イケメンだよね』

そこに写っていたのは、さっきの相手だった。
不意に心臓がドキドキする。汗が出てくる。
きっと走っていたからだ。ずっと急いでたし。

学校に向かう足取りが、なぜかちょっぴり
軽くなった気がした。

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佐々木の世界

AM6:00
【ピピッピピッピピッピピッ】
「ん、、、くわぁ」
また今日も朝がやって来た。

【ピロリン】
『おはよー!今日の学校休むー!』
『オッケー('-^*)ok』

正直、友達付き合いは苦手だ。
人と話すのがそもそも得意ではない。
だからと言って、友達付き合いをしないのは勇者である。孤立主義ではないから、そこは乗り切るしかないのだが。とりあえず返信せねば。
何とか打ち込んで、いざ送信しようと思った時には、既にトーク画面の話題は移っていた。

AM8:00
「詩織ちゃん、おはよー」
「お、おはよ、、、」
人と話すのは慣れない。難しい。
私は小さい頃から、「大人しい性格」というレッテルを貼られて来た。だからなのか、話しかけてくれる人も少なく、いつの間にか「頭が良い」と有りもしないことを言われるようになった。

今日も、一人で過ごすだろう。特に異論はない。いつも通りの生活。何も変わらなくて良い。

誰かに侵入してもらおうだとか、この生活を壊そうだとか、そんなことは望まない。

席に着いて、お気に入りの本を広げて、栞を取り、 さぁ本を読もうとしたその時。
「佐々木さんいますか?佐々木詩織さんです」
誰かに名前を呼ばれた。誰だ。

廊下に目を向けると、そこには知らない女子が立っていた。
「はい、佐々木ですけど、、、」
緊張状態かも。あぁ、机の上の本は大丈夫だろうか。置いて来てしまった。どうでも良いことに気がとられる。

「あの、私、2年夏組の田辺と言います」
田辺さんは軽く自己紹介をした。
「夏組のクラス委員をしています。お時間頂戴してもよろしいでしょうか」

良いから早く言えよ。こっちは(本を読むのが)忙しいんだよ。おせーよ。
なんて思っていても口には出せない。こんな時の為に、世間には愛想笑いというものが存在する。

「時間はありますが、何のご用件ですか」
「冬組だけ、クラス委員が決まっていないんです。もし良ければ、佐々木さんに」
「お断りします!」

これで良い。私に役職など必要ない。田辺さんには悪いが、私には向いていないのだ。

今はこのままで良い。
そう思っていた私に、色々な出来事が降りかかるのだが、それはまた次のお話で。