表示件数
3

続・小説版ソラミミ

その日以来先輩は僕のことをやけにイジるようになった。しかしそれもあくまで“先輩”としてでしかない。
そんないい雰囲気で最後の演奏会当日を迎えた。
演奏は良好、僕も緊張こそするけど先輩が前にいるだけですごい安心感。先生の指揮も心なしか感情的だ。全てが自分を後押ししている様だった。こんな楽しい時間は初めてだった。しかし演奏はいよいよ終盤…
それとは裏腹にみんなの音はかつてないほど響く。
終わりたくない…
反比例する心…
しかしアンコールが終わった…
会場からは惜しみない拍手が送られた。
達成感か、安堵か、泣いている部員もいた
まだだ…まだ僕は今日泣く訳にはいかない…

“いざ先輩に告るのだ!”

「先輩!最後にツーショット撮りましょうよ!」
お願い…心臓の音よ…今だけ収まって…
でも裏腹に先輩と近くなる度に音は大きくなる。
「またドキドキしてるでしょ.」
先輩はやっぱりズルい、この言葉も“先輩”でしかない…
でも、僕は…
「そりゃしますよ!僕、先輩のことずっと好きなんですから!」
そう言って思いっきり先輩に抱きついてシャッターを切った。
先輩と少し驚いてから一緒に笑顔になった。
でもこの言葉だけは勢いで言っちゃいけない気がした。
1年間も想い続けたんだ…
「先輩…今度は本気です…僕と付き合ってください…」
まるでマンガみたい…本番終わった高揚感のまま告るとか…でもあの音楽、心臓の音、楽器の音、弓の音、
全てが自分を守ってくれてる気がするから…
きっと今なんだ…今しか…

「気づかないわけないじゃん…━━━━━━━……」

この時の言葉だけはどこか遠く聞こえた。
きっと初めて先輩が“先輩”じゃなく発した言葉だったから

後輩を持って気づいた
“先輩”を捨てたら包んでたベールは剥がれてしまう
それは時としてただ打ち解けるより残酷だ

だからもう一度“先輩“の言葉で…
「私もずっと好きだったから…」
そう聞きたい…

空耳かな、先輩の声がした
あぁそうか、僕も引退したんだ…

「先輩…あの時はごめん…」
ほら見て、“先輩“みたいに少しはズルくなったでしょ

1

小説版ソラミミ(ソラミミの前日談的な)

“あなたがもう一度聞きたい言葉は何?”
僕は…あの時の…

「よろしくお願いします!」
この地域では結構強豪な(らしい)吹奏楽部に入部した。
入部の理由は極めて安易(というか不純)だった。
初心者でも大丈夫って言葉とそう言ってた先輩がクッソ可愛いってことだけ。
結果どうにかその先輩のパート、吹奏楽部で唯一の弦楽器、コントラバスパートに入ることができた。(ちょっと後悔してたけど)
やっぱり最初の頃は死ぬほどキツかった。
左腕は上げっぱなしだし、弓には慣れないし、運搬ただただ重いし、なのに先輩は僕より小さい体でサクサクとそれをやってのける。多分この時初めて好きとかを越えて人に憧れた。それからはもう下心とかもなく素直に先輩との時間が楽しかった。学校行事もコンクールも、

“楽しいまま終わらなければいいのに…”

「先輩!今日一緒に帰りませんか?」
初めてそう言えたのは最後の演奏会を控えた練習が始まった頃だった。最寄り駅までの道はどこか部活の延長みたいで、でも帰りの電車が揺れた時先輩に初めて触れてしまった。
あれ?別に隠してた訳でもないのに、
なんか…ドキドキする…なんで?
どうして先輩までそんな顔をするの?
「すみません、先輩、僕の不注意で」
でもズルいよ、そんなすぐにすまし顔するなんて。
先輩が“先輩”のままでいたら手出しなんて出来ないよ。
「大丈夫、あ、なんかドキドキした?」
だって僕は後輩である前に先輩に告ろうとしてる不届き者ですよ!?ドキドキしないわけないじゃないか
「すぐにそういうこと言わないで下さいよ」
「顔真っ赤だよ?(笑)」
「え?」
「なーんて(笑)でも楽しかった。じゃお疲れ様ー」
そう言ってタイミング良く先輩は電車を降りていった。

to be continued...