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復讐代行 あとがき

復讐代行を読んでくださった皆さん!
本当にありがとうございます!
当初の予定よりも長くなり、更新の空く期間もあり
と散々な形ではありますが
先程の最終話を持って無事に完結しました!
皆さんいかがだったでしょうか?

今作は初め、「宇宙を駆けるよだか」という作品を見てこんな設定の作品を書いてみたいなぁというところから始まりました。
この作品はクラスでブスといじめられる女子と主人公が入れ替わる物語で、ただパクるのもつまらないので、主人公の方を男にしてみました。
ですが
「いじめ」をテーマにするとついつい色々詰め込みたくなるのが悪い癖ですね笑
登場人物それぞれに考えがあるようにして自分の中にある全てを書こうとも思ったのですが長くなるので避けました。なので実はまだ小橋と橘のお話が少し残ってます
もしかしたら来週辺り書くかもしれません。
最終的に書きたかったこととしては
「いじめ」は人を壊してしまう。
それは時に、優しさすら信じられなくなるほどに
でもその優しさを信じることこそが生きる希望
それをどうか自分の中に確かに持っていて欲しい

ちょっと隠しすぎたかな?
あんまりまっすぐだとクサくなっちゃうから
少し遠回しにしたり、素直な言い方をしなかったり
そんな僕の小説…に限らず詩も
これからも楽しんで頂けたら幸いです

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Trans Far-East Travelogue㊱

駅に戻り、三崎口に着いてから3分の接続で乗り込んだバスの車内で少し先程の件を話すことにした
「何が原因だったか、訊いた?」そう尋ねると「名古屋で、彼氏さんが台湾にいる少し年配のお友達の親御さんに会ったんだって。そしたら、彼氏さんがその親御さんに日本語で『ホンショーのお二人が僕らくらいの頃は大変でしたよね。特に、2月のあの日は酷かったと聞いてます』と言って会話してるのを聴いて、彼女さんは『ホンショーって何?2月って何かあったの?バレンタインのチョコ作りが大変ってこと?』って言っちゃって、彼氏さん御立腹からの喧嘩別れだそうよ。でも,台湾で2月に大変なことあったの?昭南島占領しか知らないんだけど」と返ってきたので「2・28か…あれは気の毒だよなぁ…にしても、そんなセンシティブな話題をいきなり切り出すのもどうかと思うが、そんなボケかますかね…いくら無知でも、そんな反応されたら俺でも怒るよ。大勢の人の命が失われた悲惨な事件で生き延びることの大変さをバレンタインのチョコ作りと比べるのかよ…」と溜息混じりに返すと「2・28事件?2・26の間違いじゃないの?」と返ってきたので「2・26は日本の軍隊の暴走、2・28は終戦後の台湾で起きた事件で、立場によって見方が変わる、近現代の台湾を語る上で絶対に避けられない、非常にセンシティブな話だから避けるのが無難な話題さ。教育の大切さを教えてくれる歴史的事件でもある」と返す間にバスが目的地の温泉施設最寄りの停留所に着いた
「さぁ、降りるか。このことは後で兄貴とも話すよ。ここでは短時間で入って上がるけど、良いかな?」と声をかけると「そうね。私も彼女さんと話してみる。一応、持ち帰れるようならタオルはドライヤーで乾かすから、時間かかるかもね」と返ってきたので「なら、念の為今乗った奴の折り返しの2本後に乗ろうか」と返すと嫁も頷いている
バスの時間まで、タイムリミットは残り45分だ

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復讐代行〜第28.5話 悔恨〜

「でもね」
光ちゃんはさらに続ける。記憶から抜け落ちたその言葉に私は大事なことを思い出させられた。
「わかんないから全力で相手を思いやることができるんだよ」
思い返せば私は最近予測ばかりだ。
相手を、守りたいものを思いやっていただろうか
そんな今の私の逡巡を待ってくれるはずもなく、私の体は逃げるようにフェンスを登り始めた。
「待って!闇子ちゃん!」
「うるさい!光ちゃんの言葉は私を惨めにするだけ!これ以上私を…傷つけないで!」
今になってみれば私はかなり酷いことを言っている。
しかし当時の私にとってはそれだけ憐れまれるのが屈辱だったのだ。
もうすぐ左手がフェンスの上につく。
その時見上げた私の視界に光ちゃんの右手が入り込んでくる。
「なんで…?」
「全力で思いやるって言ったでしょ?あなたが惨めにならずに自殺を踏みとどまってくれる方法を探してる!」
私の死んだ目まで潤さんばかりに目を輝かせて素っ頓狂なテンションで光ちゃんは言った。
「そんなものない、もうすぐ私は飛び降りる」
「ならちょっと強引だけど力ずくで止めるよ」
左手はフェンスの頂点をつかみ、体を引き付ける。
視界から一瞬光ちゃんの右手が消える。
これで死ねる…
辛いだけの現実とはおさらばできる…
「だから、止めるって言ってるでしょ」
光ちゃんは私の足を掴んでいた。
「ウザい!何度も言わせないで!」
私は光ちゃんを何度も蹴る。どんなに心が傷んでもその足が止まることはない。それでも彼女は少しずつ登り、再び私の視界に入り込んできた。
「わかった…そこまで言うなら私も一緒に死ぬよ」
「え?」
私には記憶通りだが当時の私には驚きしかない。
その驚きに思わず、力が抜け、手が滑ってしまった。
「あっ…」
体はフェンスを乗り越え、宙へ投げ出された。
懐かしい感覚だ…気持ちいい…
「闇子ちゃん!」
後ろから聞こえる光ちゃんの声に振り返ると彼女は私の体を抱きかかえた。
そこで視界が途絶え、気がつくと私の体が下敷きになっている。
「え…?」
そうして私は初めて人と体を入れ替えた。
私は光の体を、命を奪ったのだ…

to be continued…

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Trans Far-East Travelogue㉜

おおむね定刻通り、正確には30秒遅れで俺達を乗せた電車は横須賀中央の1番ホームに滑り込む
「懐かしいなぁ…高校の卒業旅行以来か〜」
思わずそう呟くと嫁が「高校の卒業旅行?そう言えば中学時代の卒業旅行は聞いたことあるけど高校時代は聞いたことなかった」と言って上目遣いになってるので歩きながら話すことに
「俺が君に恋しても会えなくて、一時期めちゃくちゃ苦しんだことは話したっけ?」と訊くと「それは聞いたよ。確か、あまりにも辛くて傷心旅行であの鉄道旅行ったんでしょ?」と返ってきたので「そうだよ。でも、話はあの旅の前に遡る。俺は元々福岡に行く予定だったんだけど、母さんがどうしても韓国の親戚に会いたがってて、それで韓国に行ったんだ。その時、韓国の南海岸に行くことになったから、釜山の港から福岡まで俺だけ船で行く予定を考えたんだけど、宿が取れなくて、高速バスも取れないし、なんなら新幹線はグリーン車しか空いてない、飛行機もダメで帰京できなくて諦めたんだ…それで、仕方ないから中学時代のメンバーで当時の場所を巡るというのを一気に前倒しして、2月のうちに、河津桜と菜の花が咲き誇る綺麗なうちに行くことを提案した。でも、メンバーの1人が勝手に先輩たちに呼びかけて3月に延ばすわ、他の1人は俺が韓国に飛ぶその日しか予定が空いてないって言われてヤケクソになって自分だけ行ったんだ」と言うと嫁は黙って聴いてる
続けて、「その時も今と同じ『みさきまぐろきっぷ』で横須賀中央で途中下車して三笠に行った。
そこのモールス信号打電体験ブースが空いてたから、長文だけど『キュウシュウノ,フクオカニイルアノコニアイタイ。ソシテ、アノコニアエタラ、イマデモダイスキダ。オレハキミノシアワセヲイノッテイルガ、モシコンナオレデモスキデイテクレルノナラ、カノジョニナッテクダサイ。ソノトキマデマッテマストツタエタイ。ハヤク、キミニアイタイ』と打ったんだ。そしたら、自分でも知らないうちに大好きな君と結ばれて、君は俺の彼女になるどころか今じゃ大好きな奥さんになってるんだ。全く、運命ってのは何があるか分からないな」と言って笑うと嫁が「伝えたいことはあるけど、直接じゃ恥ずかしいからモールス使うね」と囁くので何を言われるのかドキドキしながら記念艦に入ると嫁がモールスを早速打っている
その姿は陽の光を浴びる海面に反射して輝いている

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