魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑱
ササキアは朦朧とする意識の中、ロノミアを睨みつけていた。霞む視界の中、ロノミアは斬馬刀を振り上げ、次の攻撃に入ろうとしている。しかし、衝撃が彼女の体内を大きく損傷させており、ササキアは既に回避も防御もできない状態にあった。
「さーぁコイツで締めといこうか。せっかくだから、『全部乗せ』だ」
ロノミアもまた、“破城”を握る両手や踏みしめた膝は小刻みに震えており、体力の限界も近い。
「私の懸けた魂の分、全部、ぜーんぶ、ブチ壊し抜け!」
“破城”が振り下ろされる。ロノミアの魔力の全てを乗せた一撃は、一閃の軌道上に深く破壊の痕跡を残し、ササキア達の背後、校舎そのものを両断し、刀身自体も反動によって粉砕した。
「……ヤマ子ぉ」
振り下ろした姿勢のまま動かないロノミアが呼びかける。
「……くぁちゃん?」
「もう、結界消して良いぞ」
「うん」
アンテレアが結界を解除すると同時に、ロノミアの手の中にあった“破城”の残骸も消滅した。
「『時間切れ』だ。……うん、悔いは無い。最後にたっぷり暴れられた」
言いながら、ロノミアはその場に尻餅をついた。
「くぁちゃん?」
ボンビクスが、不安げな表情でロノミアに近付く。
「何だよその顔? 私の魔法はもうおしまい。それだけさ。まぁ……これから総務局にたっぷり怒られることにはなるだろうけど」
軽い口調で言うロノミアに、双子は変身を解いて抱き着いた。
「何だよいきなり」
「……くぁちゃん、もう私たちの師匠やってくれないの?」
「くぁちゃん、捕まっちゃう?」
「変な心配する奴らだなぁ……私に教えられることは全部教えたし、そもそも悪いことしたんだから捕まるのは前提だ。……あぁ、モリ子、ヤマ子」
双子が顔を上げ、ロノミアを見つめる。
「お前らは、何も心配しなくて良い。お前らの処遇については、私に考えがあるから。お前らの師匠からの、最後の贈り物だ。有難く受け取れよ?」