静かに、秋の様相が 地を這って忍び寄る 静かに、君の咳が 上擦って響く夜 心が 音に変わって 知らない記憶の一端を見る それがどうにもせつないから、 揺れたグラスの水面 目を逸らしてしまった 白驟の夢を見る 晴れとも言いきれない夜空は 隠した名前の答え合わせを しきりにせがむ 冷たい息に噎せて 諦めて、口を噤んだ
うつらうつ つ、ら 瞳が顔をのぞかせて 梅雨リズム刻むメトロノーム、止まる 蕩けるような意識で 昨日より30g重い空気を ゆっくりと押し上げる うつ、うつらつ つ こんなに蒸し暑くて 蔀戸しとどにとつとつ滴る 真冬みたいな色の空 が、 ゆっくり、ゆっくりと ゆっくりと 降りてくる感覚 相対的に 私の体は浮かび上がる 重たい空気を掻き分け ずむ、ずむむと浮かぶ そう、ずむむ、と うつら、ら、つ うつ つ、うつら る、た、うつ 夢現の ギリギリの狭間 そこから雨は やがて、 つと滴り つ、
髪を撫でるその感触を 忘れられない私は馬鹿で 本当は嬉しいなんて感情を 見せられない私は本当に可愛くなくて いとも簡単に揺らされてしまった心の 行き場も見つけられない このまま以上はないのに 時々涙が出てしまうのは 難解な私のせいだ
私たちが生きる此の世界は 限りなく小さくて 際限なく大きくて そんな矛盾に塗れた此の世界を 好いては嫌って 愛して憎んで その中で生きる私たちは 手の届かないモノを必死に求め すぐ側にあるモノには気づかない 責任転嫁の成れの果て 争いが起き人が死ぬ 挙句の果てに「世界の所為」? 馬鹿げてるのは 矛盾だらけなのは 誰だったっけ、何だったっけ。