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むかしむかし

むかしむかし
日本には人に悪影響を及ぼす宝石がありました。
それはそれは綺麗で夜空に光る三日月のようでした。
しかしその宝石の魔法は本当に恐ろしく人々の心を悪魔に変えてしまうものでした。その宝石から人々を守っていたのが恐ろしい姿をした鬼たちでした。鬼たちは人々にこの宝石を持ってはいけない。そう説得しようと長い間頑張っていましたが、その姿は本当に恐ろしいため誰も話を聞こうとするものはいませんでした。そのうち鬼たちは諦め、宝石を持っている人達から強引に奪うことにしたのです。しかし、それは何も知らない人々からしたらとてもとても恐ろしいことでした。なぜ私達を襲うの?私達はなにかしたの?鬼は本当に恐ろしい。悪魔だ。
そうして何も知らない人々たちは鬼を村から追い出したのです。しかし鬼たちは人を助けることをやめませんでした。追い出されようとも宝石を奪いに村へ何度も足を運んだのです。そうしているうちに長い年月が流れ、あの英雄が村へ流れ着いてしまいました。
よし、僕が鬼を退治する。そしてみんなから奪った宝石を取り戻す!そう言って鬼が住んでいる島へ仲間を引き連れ向かっていったのです。その英雄は恐ろしいほどに強くそれは悪魔のような強さでした。いとも簡単に鬼を倒し、宝石を村へ持ち帰りました。
しかしその宝石は恐ろしい魔法が宿っています。
人々はその宝石に長い間触れすぎてしまいました。
宝石は心だけではなく、姿も悪魔のようにしてしまったのです。その姿は人々がとても恐れていたあの鬼のような姿でした。鬼たちは初めて知りました。私達が追い出した鬼たちは私達を守ってくれていたのだと。
それから数年が経ちました。英雄というものはいつの時代も生まれてしまうものです。鬼たちはいとも簡単に倒され、また新しい鬼を生み出されていきました。………
おしまい。

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名前も知らないあなた

高校へ行くために乗る電車の中。
私が乗る時間は朝一番だからあまり人がいない。
だけど毎日私と同じ便に乗る人がいる。
それが、あなた。
名前も知らないし、話したこともない。
「(こんな時間に乗るなんてどこの学校なんだろ…)」
制服を見た限りだと私が通っている高校ではないみたいだ。
きっとこの時間に乗らないといけない程遠いところなんだろうな。

初めてあなたに出会った時はこんなことしか思ってなかった。

いつからだろう。
違う感情を抱くようになったのは。

毎日この時間にあなたと同じ空間で過ごせることが出来る。
あなたが私の目の前に座ってくれる。
それが私の楽しみになっていた。

私はあなたに恋をしたんだ。

ある日のこと。
その日は偶然に、本当偶然にも寝坊をしてしまった。
「(もう最悪だよ…あの人に会えないじゃん…)」
ま、寝坊した私が全て悪いんだけどね…
そう思いながら普段乗る便の1個後の電車に乗った。
あーあ…今日は一緒になれないよな…
ブルーな気分で吊革をつかむ。
やっぱり通勤ラッシュの時間帯だから人が多いな…
どんどん各駅に停車する度に人が増えていく。
ぎゅうぎゅうになってきた。
「(せ、狭い…)」
パッと顔を上げた瞬間前の人と目が合った。
それは私が密かに恋するあの人だった。
「(ち、近いよー//…)」
ドキドキしてる。今までにないくらい鼓動が早くなってる。
どうかあなたに聞こえていませんように。

…だけどちょっとだけこのままでいたいななんて思ったり。
あと少しだけ、
このままでいてもいいですか?


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主人公が恋してる「あなた」sideも書こうと思ってます!

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落涙

  始

かなしいね

涙がこぼれていたはずなのに
それがどうしてなのかを忘れてしまうのは

やっぱり、かなしいね

そんな
  ”かなしい”
は空っぽで
なみだやあめが落ちないのも
やっぱりかなしいんだ

  中

いつまでも
いついつまでも
同じことで泣いていたいというのは
この願いは、神さま
どうして許されないのでしょうか

上を向かないと涙がこぼれてしまうのは
下を、後ろを向いてはいけないことの証左
そう、涙は
こぼしてはならないのです
ひとつひとつが足もとを濡らして
滑ってしまいますから
やがて
溺れてしまいますから
花がしおで枯れてしまいますでしょう

 終

かなしい”かなしみ”を
わたしは、神さま
忘れとうございません

かなしいならかなしいままで
いいじゃないか

痛みと、傷みと、わずかな過去さえあれば
わたし達は生きていけるのです
パンなどはいりません
一汁三菜もいりません
わずかな糧でくちびるを濡らせば
いまはそれで満足
わたしは痩せ衰えますが
それをして肥えているというのではありませんか

 留

涙が流れていれば
わたしの中で鮮血のように飛び散った悲劇を
その美しいさまを
そして僅かなあなたの愛憎を
こころに留めておくことができる
涙を犠牲にして

それでも人間は脆いことに
ニンゲンの”さが”で
きれいに洗い流してしまうから
それをかなしいと呼ぶのです
それを虚しいと呼ぶのです



3

告別の詩

今日もまた下らない太陽が上り
真っ青な空は吐きそうな程です
全身の気怠さは昨日の後悔達で
いつまでも僕の踝を掴むのです
こんな何でもない冬の朝だから
縮こまった体を少しだけ震わし
また今日も行くべき場所へ行く
目的などとうの昔に忘れました
こんな僕をこんな所に繋ぐのは
死ぬことさえ面倒に思う怠惰と
この世への未練かのような顔で
僕の心に居座り続ける恐怖です
自分の為に生きられるほどには
僕は強くなんてなれなかったし
誰かの為に生きられるほどには
僕は優しくなんてなれなかった
僕に死ねるだけの勇気があれば
僕はもっと幸せだったでしょう
努力することを覚えられたなら
僕はもっと幸せだったでしょう
それでもその何方でもない僕が
幸せだなと思う瞬間があるから
この世界はやっぱり意地悪です
僕の襟を掴んで離さないのです
貴方はこれをただの詩だと思い
また溜め息をつくのでしょうか
何れにせよ僕の中の浅ましさが
やっぱり僕は嫌いでなりません
誰に伝える気も無いかのような
こんな長ったらしい詞たちさえ
貴方は何故か拾ってくれるから
やっぱりこの世界は意地悪です
そんな詞ももうすぐ終わります
ですが最後に一つだけとすれば
僕は貴方のように生きたかった
それしか言うことは無いのです