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メリーさん

ある日の夜、電話がかかってきた。
『もしもし、私メリーさん。今、あなたの家の近くの墓地に居るの』
どうやら先日捨てた人形が化けて出たらしい。供養の仕方が足りなかったか。素直に神社に頼めばよかった。今更後悔しても仕方が無いので、包丁と電話を手に、壁を背にして次の電話を待った。
『もしもし、私メリーさん。今、あなたの家の前に居るの』
いよいよ来た。さあ、次の電話が来た、その瞬間が勝負どころだ。
『もしもし、私メリーさん』
しかし、壁を背にして陣取る自分に、負けは無かった。無いはずだった。しかし、
「今、あなたの、後ろに居るの」
その声は受話器ではなく、確かに自分の後ろから聞こえてきた。
咄嗟に前に跳びながら背後に向けて持っていた包丁で斬りつけた。何か硬いものに当たる感触があった。
そこには、壁を通り抜けるようにして、何か人の形をしたものの腕が突き出ていた。腕には、包丁が当たったと思われる場所に欠けたような傷跡が見える。あと少し長くそこに居たら、恐らくあれに掴まれ、想像もしたくないような恐ろしい目に遭っていたのだろう。
「もしもし私メリーさん。今、あなたの」
『それ』が再びあの台詞を吐きながら、こちらに進み出てきた。そして、
「後ろに居るの。」
そこで『それ』の姿が消え、声は背後すぐ近くに移った。これにも後ろに向けて斬りつけながら回避。『それ』はまた腕で防御したらしく、先程と同じ感触が腕に伝わった。

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ある人が書いた手紙

H先生へ
毎日話しかけてくれてありがとう。不登校になりかけた私を救ってくれたことは絶対忘れません。
ノートの落書き、自学ノートのコメント全部宝物です。かけがえのない日々をありがとう。面接練習のとき、見捨てず、最後まで教えてくれたこと本当にうれしかったです。テンパって失敗ばっかりで、文覚えるのも苦手な私に優しく根気強く教えてくれたこと絶対忘れません。
中1のときは本当に迷惑ばかりかけて、反抗したこと、最後の最後で休校になってきちんと感謝の気持ちも伝えられずに卒業してしまったこと本当に後悔してます。卒業式の日にくれた本は私のお守りです。先生みたいな先生になりたいです。長いようで短かった3年間私を支えてくれてありがとう。

T先生へ
3年間くだらない話をしてくれたり、聞いてくれてありがとう。指相撲とか、引っかけ問題とか、小学生かって心では思ってたと思います。だけど、付き合ってくれてありがとう。毎日楽しかったです。面接練習のとき厳しく、的確なアドバイスをくれたこと本当にありがとう。あのときは恨んだけど、あのおかげで今の高校に受かることができました。
1回先生に本気で怒られたことがあった。あのときに私は変われたと思います。ノートのコメントめちゃくちゃ嬉しかった。見返して元気出してます。
私にとってかけがえのない日々の中に先生がいました。忘れることはできません。本当にありがとう。

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十二支のお話

神様が動物たちにこう言いました。
「元日の朝に最初に挨拶に来た動物十二種類を一年に一種類、十二年周期でその年のボスとする」
牛は歩くのが遅いので、前日の夜から家を出ました。鼠はその背中にこっそり乗りました。
まだ日の昇らない薄暗い頃にに牛が神様の家へ着くと、既に家の前には多くの動物が並んでいました。
牛が前に居た動物に尋ねると、
「俺も驚いたよ。だって四時起きしたのに既にこの行列だぜ?」
その前に居た動物に聞くと、
「俺なんか徹夜で日付が変わった瞬間にダッシュしたってのにこの順位だぜ。全く、家が遠くなきゃもう二十は上の順位だったぜ」
その更に五つか六つ前の動物に聞くと、
「馬鹿だなあ、いや、牛か。こうゆーのは前日から並んどくに決まってんだろ?」
そこに神様が現れ、言いました。
「徹夜組は駄目。そこより前は全員退場。」
大方の動物は残念そうに去っていきました。
「え、俺が一番っすか?恥ずかしいなー……。そうだ兎!お前に前譲ってやんよ!」
虎が言いました。
「いやいや、アジアン百獣の王様の先を行くなんてとてもとても」
兎がやんわり断りました。
「いや……すぐ後ろにドラゴン連れといてそりゃあねーだろ……」
「それは許したって。我も怖い」
すると前から四番目に居た蛇が叫びました。
「げえっ、このままだとわちき四番目!?嫌だ嫌だ。四って数は縁起が悪いんだ。そうだ牛、せっかくだし俺の前行って良いぞ。それでも俺ランクインするし」
「四が無理な割に四時起きだったのか……」
「げえっ、そういえばそうだった」
「何ならわしの前もドゾ」
「マジすか。あざっす龍の旦那」
「ああ、虎さん、ちょうど良い奴がやって来ましたよ」
「おお、牛よ!俺の前に行ってくれないか?流石に一番は……」
「あ、ありがとうございます」
そして牛が緊張子ながら門をくぐろうとすると。
「グズグズしてんなら先行かせてもらうよ」
鼠がその背中から飛び降り一位になりました。