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Daemonium Bellum:Angels Lapsus Ⅲ

人気のない野原にぽつんと生える大木の影、3つの人影が立っていた。
その内1つは木の根元で座り込んでいる。
「…」
せっかく外に出たのに日陰にいるルシファーを見ながら、アモンは呆れた顔をした。
「お前いつまでそこに座り込んでるんだよ」
そう言われてルシファーはちらとアモンの方に目を向ける。
「別に良いじゃん」
「ンな事言われても」
アモンはそう返したが、ルシファーは足元で動かない。
「…いくら襲撃が怖いからって、ずっと外に出ないのは問題あるだろ」
アモンにそう言われて、ルシファーはムッとした顔をする。
「わたしの過去なんかよく知らない癖に」
そう言われて、アモンはうぐっとうろたえた。
「どーせわたしが堕ちた経緯ぐらいしか知らないのでしょう」
それ以前にどんな暮らしを天上でしていたかなんてあなたは知らないだろうし、とルシファーは膝に顔を埋める。
アモンは微妙な顔をした。
確かにルシファーの言う通り、アモンはこの堕天使の過去をよく分かっていない。
せいぜい知っててここへやって来るまでのまでの経緯ぐらいだ。
「それでも…」
そう言いかけた時、その場から離れていたベリアルが小走りでこちらに戻ってきた。
「ぼす! ねぇあれ見て!」
ベリアルは慌てた様子で空を指さす。
空には白い鳥が何羽か飛んでいる。
「一体どうしたって言うんだ?」
アモンがそう聞いた時、ルシファーが何やら呟いた。
「…まずい」
「え?」
アモンが思わず聞き返したその時、上空から何かが降ってきた。
「⁈」
すんでの所で避けると、背後の木に無数の矢が刺さっていた。
「…おいおいマジかよ」
アモンは思わず呟く。
「逃げるよ」
いつの間にか立ち上がっていたルシファーはそう言った。
「…だな」
アモンは静かにうなずいた。

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復讐代行〜第2話 現実〜

「あなたは学校の屋上で桐谷さんと倒れているのを発見され3時間ほど眠り続けていたんです。」
もはやどんな言葉も雑音にしか感じられず、内容は微塵も入って来なかった。
“だって…俺はあの時…白い光に包まれて…”
しかしその光のあとの記憶がまったくなかった。
そうやって回想するのを医者と看護師は待っているようだったが、その沈黙を突き破るように喪黒の母が病室に乱入する。
「闇子!なんで人様に迷惑かけるの!」
問答無用の怒号が飛んだ。
わかりやすい恐怖を感じてるわけではないがひたすらに理不尽に晒されるのもここまでくると新手の悪夢である。
「まぁまぁ、お母さん、娘さんもおそらく倒れた衝撃で記憶が混濁しているのでしょうし、ここはひとつ我々にお任せいただけないでしょうか」
自分がその怒号の対象者であることすら忘れて完全な他人のヒステリーを見ている気分で、医者の対応に感心していた。
しかしその瞬間に当事者に引き戻される。
「すみません、先生、あんたも!頭下げなさい!」
「っつ…」
頭を捕まれ起き上がったばかりの体が強く曲げられた。
どうにかその場は収まる形に収まり、
その後俺、もとい、私は脳への影響の懸念からMRIなどの検査を受けて、1泊だけ入院し翌日、あのヒステリー母に連れられる形で退院した。
自分が別人になっているというこの状況は到底受け入れられるものではなかった、それでも、形はどうあれ生きられただけでも良かったと思うことにすることでどうにかやり過ごした…つもりだった。
しかし、次の日学校に行くとそこには
いつもと変わらない生活を送る俺の姿があった。
“あれは…一体…誰なんだ?”

to be continued…

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Daemonium Bellum:Angels Lapsus Ⅰ

太陽が高く上った昼下がり。
人里離れた森の片隅に小さな屋敷がある。
その屋敷の一角にある部屋で、机に伏している者がいた。
「…おーい」
起きて、と揺すられるが、その人物は顔を上げる気配はない。
「起きないの~?」
暫く揺すって、やっとその人物は顔を上げた。
「何か用?」
無理やり起こされた事に不服そうな顔をしながら、その人物は傍に置いておいた眼鏡を掛ける。
「やっと起きましたね」
ずっと揺すっていた人物はうれしそうな顔をする。
「ねぇ”ぼす”…外へ出ましょうよ?」
「断る」
”ぼす”と呼ばれた人物は、間髪入れずにそう行った。
「だってめんどくさい」
「そんな事言われても」
ずっと室内にいたら身体に悪いですよ~と金髪の人物は”ぼす”を揺する。
やめなさい、と言いながら”ぼす”と呼ばれた人物は相手を諫めた。
「どーせ、天使共がわたしを探しているから、外に出たって…」
襲撃されるくらいならここにいた方がマシ、と”ぼす”と呼ばれた人物はそっぽを向いた。
えー、と金髪の人物は不満そうな顔をする。
「もし天使に遭遇してもボクやアモンがどうにかするから大丈夫だよー」
だから外に出よーと金髪の人物は”ぼす”の腕を引っ張る。
ちょっとベベ…と”ぼす”は嫌そうな顔をした。
すると部屋の入口から声が飛んできた。

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復讐代行 設定

喪黒闇子
県立TT北高校の2年生。2年A組
幼い頃に両親が離婚してからネグレクト気味の母と暮らしている。
ある時期以来クラスでは「陰キャ」と呼ばれ、クラスのヒエラルキーを強くコンプレックスに感じている。

桐谷青路
クラスメート
小学生の頃に「陰キャ」と呼ばれていじめられて以来いじめ、仲間はずれに対して強い恐怖を感じている。
高校デビューでどうにか陰キャ脱却はできたもののその恐怖は拭えず、陽キャのグループと少し無理しながら一緒にいる。

橘蓮
クラスメート
ずっと「陽キャ」で居続けるカリスマ的存在でクラスのヒエラルキートップ。
クラスのまとめ役もこなし、いじる時とそうでない時の使い分けもはっきりしていて信用も厚い。だが、そこにはただならぬ覚悟があり少し残酷な1面も?

小橋健太郎
クラスメート
橘蓮の幼馴染で同じくクラスのヒエラルキートップ
橘と違うのはカリスマでないこと。歪んだ正義感を持ち、それ故に「陰キャ」に対して嫌悪感を持っている

三浦祐介
県立TT北高校2年B組
桐谷青路の幼馴染で「陰キャ」というものに対して理解があるが揉め事が苦手なため、いじめに対して強くは出れていない。それでも陰ながらにサポートをしている。
(桐谷青路が立ち直ったのも彼のおかげ)

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復讐代行 ~第1話 異変~

目が覚めるとそこには見知らぬ天井が広がっていた。
どうやら死なずに済んだようだ。
「あ、目が覚めたんですね、喪黒さん」
そう言って看護師が歩み寄る。どうやらここは病院らしい。それにしてもよくある展開だ、記憶喪失モノだと大体ここから…
「自分の名前、言えますか?」
ほら来た、しかし幸か不幸か僕の記憶は鬱陶しいほど鮮明だった。
「桐谷青路です」
問題なく答えられた。
「…」
しかし看護師はどこか困惑した表情だ。
なぜだ?何も間違っていないはずだ、それとも上手く発音できていなかったのか?
「桐谷青路!20XX年5月N日生まれ!なんなら住所だって言えるよ!」
長めに喋ったが反響して帰ってくる言葉に発音のおかしな点は見受けられない…
でも、そろそろ気がついていた。
なんだ…?この違和感…
少し体を起こして感じる胸元の重み、
でもこれは気絶明けで体が慣れていないだけだと言い聞かせることができた。
男の声が…聞こえない…
こればかりは言い訳が出来なかった。
気絶の影響で声が出づらいなら喉の異変でわかるし、何より発音に問題がないことからも異変がないのは明らかだった。
そんな自問自答の間に病室に医者と思しき白衣の男が入って来ていた。看護師がその医者と話している内容までは聞こえなかったが、何やら不思議そうな顔でこちらを見ていることだけはひしひしと感じられた。
「担当医の福原です、もう一度お名前を言って頂けますか?」
「だから!桐谷青路!記憶には何の異常もないんだってば!何なんだよさっきからさ!」
「あなたの名前は喪黒闇子なんです」
俺は全ての辻褄が合うその情報にただただ目を丸くすることしか出来なかった。

to be continued…