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ユーラシア大陸縦横断旅24

日の出に近いがまだ西は暗い午前6時頃、トラス橋を渡る音で目が覚める
川面の向こうには朝靄の中アパートや教会らしい建築物群が見える
「ここは?橋を渡っているが、ボルガやオビはまだ先だよなぁ…それに、川の向こうに中心市街地が見えるとなると、これはクラスノヤルスクのエニセイ川か?」
確証は持たなかったが、到着駅の駅名標にはКрасноярск( クラスノヤルスク)と書いてあった
つまり、さっきの川はエニセイ川だったのだ
クラスノヤルスクを出ると同時に彼女が目覚める
そして、開口一番「どうして私と距離置こうとするの?私ってそんなに魅力ないの?」といきなり尋ねてくる
「正直言って、君は俺にはもったいないくらい魅力的だからなぁ…君の彼氏が本当に俺でいいのか分からなくなってしまってね。俺がそばにいない方が君が幸せになれるんじゃないかとか考えちゃうんだよ。自分と彼女の関係のことになると後ろ向きになっちまうダメ男が彼氏でごめん。もし、こんな俺でも受け入れてくれるなら嬉しいな」そう言って頭を下げる
「バカなこと言わないで!私が生涯バッテリーを組みたいと思っている相手は貴方しかいないの!だから、こっちは貴方が重くてど天然で抜けている所がある私なんかと一生一緒に居たいと思ってくれるまで20年でも30年でも待つつもりなの!」と俺が彼女に初めて惚れた時のセリフで返された
「そうか。実は、俺も同じ気持ちだったんだ。こんな時にムードもへったくれもないけど、言わせてくれ。俺と結婚してくれないか?ゴーアラウンドならいくらでもするがダイバートはしない」と当時の言い回しで伝えて指輪を渡す
「もう、離さないよ」「俺もな」
カレカノから婚約者同士になったカップルを乗せ、列車は西へ行く

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ユーラシア大陸縦横断旅23

深夜、ナウシキでロシア入国手続きを終えて眠りにつく
そして、目が覚めたら朝日で輝くプラットホームの駅に着いた
駅名を見ると、Улан-Удэ(ウランウデ)だ
そう、この駅はかつて俺がシベリア鉄道版の鉄道唱歌作詞で省くか否かで迷った場所である
当時の苦労を思い出しながら車窓を眺める
そして、セレンガ川を渡るところで彼女を起こす
なぜなら、セレンガ川を渡ると、彼女も俺もシベリア鉄道の旅で1番楽しみにしていたバイカル湖畔の風景が見えるはずなのだから
ありがたいことに、湖畔の天気は晴れだ
そして、彼女は湖面に映る青空と小高い山の風景を見ながらボソッと尋ねる
「今も結婚願望ってあるの?昔は『25になるまでに嫁さん欲しい』って言ってたけど」
「あるようでない。」とだけ返す
「あるようでないってどういうこと?」と聞き返されたので、「今は言えないよ…俺たちがパリに着く日になれば答えが分かるから、それまで待ってくれ」と返すと、彼女がふと「もしかして、私って魅力ないのかなぁ」と呟く
だが、俺はその呟きを聞かなかったフリをして「俺が結婚したいと思っている相手は一人しかいないし、むしろその人ほど魅力がある女性には会ったことも話したこともないんだがなぁ…」と呟く
「変なこと訊いちゃってごめん。もうこの話は終わりにしよう」そう言われて話題が変わり、広いバイカル湖畔南部の町、スリュジャンカの駅でオームリという名物の食べ物を誰が買うのかという話になり、俺が買うことになった。
俺はホームにいた物売りからなんとか最後の残りを買うことに成功したのだが、彼女が美味しいと言ってガツガツ食べるものだから、俺の取り分がほとんどなくなってしまった
幼少期に弟とよく食べ物を巡って喧嘩したので、どうすれば穏便に済むかは経験上知っている
だから、残りは彼女にあげた
そして、彼女がバイカル湖をすぎて一言、「ゆう君(俺の幼少期の愛称)みたいな優しい人と結婚したいなぁ」と呟く
そして、俺も「こんな一途に俺のこと思ってくれて、健気で、天然な彼女と結婚したいなぁ」と呟く
「え?今なんて?」と彼女は訊き返すが、対向列車との離合の音でかき消されて聞こえなかった