仔鬼造物茶会 Act 20
「“マスター”が持ってるわたしたちきょうだいの魔力供給術式の内、硫のものだけ明らかに術式が動いてなかった」
もう硫は、この世界にいないのよ…と碧は顔を手で覆った。
それに対し琅は黙り込むが、すぐに…じゃあと返した。
「じゃあここにいるのは誰なんだよ」
琅は震えながら続ける。
「ここにいるのは、硫以外の誰ってことになるんだよ⁈」
突然声を上げた琅に、碧は驚いて顔を上げる。
「みんながなんて言おうが、おれにとっては硫は硫なんだ!」
例えおれたちのことを忘れていても、本質的にはアイツなんだ!と琅は叫ぶ。
「それに今は思い出せなくても、その内昔のことを思い出すかもしんねぇだろ!」
だから硫は硫なんだ!と琅はキヲンの腕を引いて歩き出す。
自分を押し除けるように歩き出していった琅に、碧はちょっと⁈と呼び止めようとする。
しかし琅はキヲンを引っ張ってそのまま倉庫街の奥に消えていった。